知ると面白い「薬の名前の意味」…数字が入った名前もある
薬の名前には「数字」が含まれたものも
薬の名前はカタカナだらけで、無意味な記号のようだと思っていませんか? 実際には、私たちひとりひとりに名付け親がいて、それぞれの名前に意味や思いを込められているのと同じです。薬の名前も自然発生的についたわけではなく、誰かから何らかの理由をもってつけられています。名前の由来を知ると、明確なイメージが湧いてより身近に感じられるようになるかもしれません。
薬は化合物ですから、多くの名前は、化学構造に基づいてつけられています。しかし、一部の薬の名前の中には、神話に関係したものや、薬の色を反映したもの、人名や地名などを含んだものがあり、知るとなかなか面白いです。
薬名の中には、数字が組み込まれたものもあります。今回は、それらを紹介しましょう。
揮発性の吸入麻酔薬「セボフルラン」に隠された数字
セボフルラン(sevoflurane)は、揮発性の吸入麻酔薬で、1968年にアメリカのトラベノール社(現在のバクスター社)によって合成されました。液体ですが、気化しやすいので、専用の気化器を用いて気体となったものを吸い込む形で使います。化学的に安定していて、引火性はなく、加熱したガスに点火しても燃えないので取り扱いやすいというメリットもあります。速やかな麻酔導入と覚醒を得ることができ、調節性にも優れることから、現在の吸入麻酔薬の主流となっているので、全身麻酔で外科手術を受けたことがある方は、与えられたことがあるかもしれません。さて、セボフルランという名前には、ある数字が入っているのですが、分かるでしょうか。そう、「7(seven)」が正解です。
セボフルランは、1分子中に7つ(seven)のフッ素原子(fluoro)が導入されたハロゲン化エーテル系化合物なので、sevoflurane と名付けられました。名前の中に、化学構造上の特徴がきちんと説明されているというわけです。
血栓塞栓症の治療薬「エドキサバン」に隠された数字
エドキサバンという薬については、「薬の「出身地」がわかることも…地名が隠れた薬名」でも取り上げましたので、ぜひ読んでみてください。要約すると、エドキサバンは、血液凝固反応を抑える薬で、血栓塞栓症の治療や再発抑制に用いられますが、東京都江戸川区にある第一三共株式会社の研究で見出されたことから、”エド”キサバンと名付けられています。さて、今回もエドキサバンを取り上げるということは、この名前の中に数字が入っているからです。しかも、地名を反映した「エド」を除くと、残りは「キサバン」なので、このどこかに何らかの数字が反映されているのですが、分かりにくいですね。
種明かしをすると、エドキサバンが血液凝固反応を抑えることができるのは、私たちの体内で働く血液凝固系に含まれる第Xa因子を阻害するからです。この場合の「X」は、ローマ数字で本来「10」を表していますので、「Xa」を英語で正しく発音するなら「テン・エー」なのですが、「Xa」を言葉としてとらえると「キサ」とも読めますね。つまり、エドキサバンは、第Xa血液凝固因子(”Xa” ”b”lood coagulation factor)を阻害する薬(”an”tagonist)という意味で、語尾に「-xaban」(キサバンと読む)が付けられたのです。
エドキサバンという名前には、作られた地名だけでなく、数字を含んだ作用メカニズムも反映されているのです。「エドキサバンはいい名前をつけてもらったな」と私は思います。皆さんはどう感じますか。
数字を含んだ薬名は他にもあります。興味のある方は、ぜひご自分でも探してみてください。