ふたりでゆっくり歩き出すと、目の前に現れたのは娘だった。
「娘が僕の顔を見るなり、『あら、こんにちは。お久しぶりです』って。思わず、何言ってんだと言ってしまった。娘はアキコに向かって『娘です。父がお世話になっているようで』と言うと、じゃあねと行ってしまった。娘も男連れだったんですよ、あとから考えれば。でも僕は娘に見られたことで動揺して……」
アキコさんが「大丈夫?帰ったら?」と言ったが、そうなると意地になるのが男の常。いや、いいんだとアキコさんの自宅に行き、ずるずると夜まで居続けた。
「ああいうときは帰りづらいですね。妻にバレているのではないかと内心、ビビっているんですが、それをアキコには知られたくない。だから身動きがとれなくなるんです」
結局、追い出されるようにアキコさんの家を出た。重い足をひきずって自宅に戻ると、娘はまだ帰っていなかった。
「遅かったわねと妻には怒られましたが、ちょっとパチンコ屋に寄っちゃってと苦し紛れの言い訳をして。娘はどうしたと言うと、『女友だちの家に泊まるみたい』と。これはこれで心配になりましたね。一緒にいた男がどういう感じだったのかまったく覚えていなかった。自分のことで精一杯だったんでしょうね。父親として非常にまずいと焦りました」
2日の昼頃帰ってきた娘に、こっそりと「男と一緒だったんだろう」と言うと、『お互いさまじゃないの?』と言われて二の句が継げなかったという。
「娘も19歳ですから、もう親がとやかく言う年齢ではないけど。娘が僕をまったく責めようとしないのもなんだか気持ちが悪いんですよ。娘の男もワケありなのかもしれない。今、どういう対応をしたらいいのかわからなくて困っているところです」
娘を責めればバラされるかもしれない。だが娘がどんな男性と付き合っているのかは知りたい。彼の葛藤と動揺は今も続いている。
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