改修工事を終えた現在の台北郵局
台湾には日本統治時代の建造物がよく残されており、戦前の郵便局舎もみられます。ここでは、初めての台湾でも行きやすく、切手収集家でなくとも楽しめる場所に絞って戦前の郵便関連の史跡を5つご紹介したいと思います。
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1. 臺北郵局・郵政博物館北門分館
中華郵政の臺北郵局は、昭和5(1930)年6月に完成した日本統治時代の台北郵便局・台北電信局の建物を引き継いだものとなっています。設計を担当したのは台湾総督府技師の栗山俊一です。現在、東京駅丸の内側にあるKITTE及びJPタワー(旧東京中央郵便局)をモデルにした再開発が進められ、注目を集めています。
台北郵局横の通り
日本時代の台北郵便局の開局日は明治28(1895)年7月9日とされます。初代の木造2階建ての局舎は明治31(1898)年に完成しましたが、大正2(1913)年2月に焼失します。その後、10数年間にわたって木造の臨時局舎住まいを余儀なくされますが、昭和5(1930)年6月に正式な局舎が完成しました。当初は3階建てでしたが、第二次世界大戦後に4階部分が増築されています。
台北郵便局と台北電信局の絵葉書。3階建ての時期のもの
外壁のスクラッチタイルは、台北近郊の北投で製造されたもので、2000年代の修復工事でも同系色で踏襲されています。内部に設置されているカウンターは竣工当初からの台湾産大理石製です。民国104(2015)年には修復工事を終え、局舎内には郵政博物館の北門分館も設置されました。さらに敷地後方には商業施設やオフィス、ホテルなどが入るツインタワーを建設する計画もあります。台北MRTの北門駅が最寄りですが、台北駅からも徒歩圏内です。
所在地:台北市中正区忠孝西路1段114號
2. 馬公老郵局(旧澎湖郵便局)
澎湖(ほうこ)諸島は中国と台湾のあいだに位置し、リゾート地として親しまれています。囲い(石滬・せきひ)をつくって魚を捕らえる漁法が伝統的に行われており、海の浅瀬に2つのハートマークが浮かんでいるように見えることから、「雙心石滬」として親しまれています。
ハートマークに見える石滬(せきひ)で親しまれている澎湖諸島の雙心石滬
海の玄関口である馬公港の一角には、日本時代の澎湖郵便局が残されており、「馬公老郵局」として親しまれています。日本時代の澎湖局自体は明治28(1895)年からですが、現存局舎は大正13(1924)年のものです。戦後も中華郵政の郵便局や電話施設として使用されました。民国107(2018)年には改修工事を終え、海洋博物館(澎湖県立文化局海洋資源館)となっています。近くには日本時代の水上警察官吏派出所を利用した警察博物館(澎湖警察文物館)もあります。
日本時代の澎湖郵便局舎を利用した海洋資源館
なお、澎湖諸島には空の玄関口・馬公空港を利用するのが一般的です。週末は混雑するため、往復のチケット(片道1万円弱)を予約しておくといいでしょう。旅慣れた方であれば、馬公港発着のフェリーもおすすめです。
所在地:澎湖縣馬公市中山路75-1號
3. 大正時代の局舎を利用した迪化街郵局
迪化街は台北最大の問屋街であり、カラスミや漢方薬などが安く入手でき、観光客にも人気のあるスポットです。空襲被害もなかったことから、古い町並みが残されており、永楽市場の向かいにある迪化街郵局は日本統治時代の台北南街郵便局舎を使用しています。
左から2番目が迪化街郵局
台北南街郵便局は台北中街郵便局が大正4(1915)年1月に移転・改称した局で、さらに大正11(1922)年4月には台北永楽町郵便局と改称しています。戦後は迪化街郵局となり、現在の姿は民国99(2010)年の修繕工事後のものです。実際に訪れる機会があれば、市場の雰囲気を味わいながら、気取らない店で軽食をとるのも一興。MRT雙連駅が最寄り駅です。
所在地:台北市大同區迪化街一段38號
4. 南荘文化会館(南庄老郵局・旧南庄郵便局)
南庄は苗栗県の山間部にある町で、かつては石炭と樟脳の産地として栄えました。今は桂花やハチミツの産地として、また南庄老街を中心とする観光地として知られています。同地に初めて郵便局ができたのは明治33(1900)年ですが、初代局舎は昭和10(1935)年4月の新竹・台中地震で倒壊しました。その後再建された局舎が南庄老郵局(旧南庄郵便局舎)というわけです。
南庄老郵局(旧南庄郵便局舎)
旧南庄郵便局は現在、展示施設兼お土産物店として利用されています。目の前にある坂は乃木崎(崎は客家語で坂を意味する)と呼ばれ、台湾総督時代の乃木希典の働きかけで整備された坂道です。
右手の下り坂が乃木崎
南庄には急行停車駅の竹南駅まで向かい、南庄行きの路線バスに乗るのがいいでしょう。竹南駅からはバス1時間強の所要時間です。
所在地:苗栗縣南庄鄕東村160號
5. 台湾最南端にある鵝鑾鼻(ガランピ)灯台
最後は番外編、墾丁国家公園にある鵝鑾鼻灯台です。オーロワンピ灯台とも呼ばれるこの灯台は1882年頃にイギリスの技師によって建造されました。当初は原住民からの攻撃にも備えた「武装灯台」であり、第二次世界大戦中に爆撃に遭いましたが、戦後再建されています。
観光客でにぎわう鵝鑾鼻(ガランピ)灯台
鵝鑾鼻灯台は、日本人にとっては「大日本帝国最南端」の象徴であり、かつては東南アジア方面へと向かう中継地でもありました。切手収集家には第1次昭和切手6銭(1939年発行)と第2次昭和切手40銭(1942年発行)の図案として親しまれています。
オーロワンピ灯台40銭と発行初日の消印
鵝鑾鼻には、新左営駅(高雄市内の台湾新幹線駅)ないし高雄駅からバスで行くのが安心です。灯台から徒歩圏内の場所(公園外)には台湾最南端地点もあります。
台湾最南端のプレート
所在地:屏東県恒春鎮鵝鑾里灯塔路90号(鵝鑾鼻公園内)
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