子どもの頃、自分はそうやってしつけられて育ってきたという方もいらっしゃるのではないでしょうか。園児を倉庫やロッカールームに閉じ込めるなどの不適切な保育も大きなニュースとなりました。
今回は、家庭において子どもに怖い思いをさせて言うことを聞かせようとする行為がなぜ不適切なのか、ではどう関わったらよいのかをお伝えしていきます。
「痛い思いや怖い思いをすれば……」は子どもの“学びに乏しい”
2020年4月に家庭での「体罰禁止」が法定化されています。「痛い思いや怖い思いをすれば改心するだろう」という思いからくるしつけは“学びに乏しい”ためです。「閉じ込める」という対応についても、親は怒鳴り子どもは暗闇で泣き叫ぶという負の感情の最中では、「ならば何をしたらよいのか」ということが学べないため、子どもはまた同じことを繰り返すことになるのです。
厚生労働省は児童虐待を、
- 身体的虐待
- 性的虐待
- ネグレクト
- 心理的虐待
親が子どもを閉じ込めたりするのは、その場に向き合いたくないという心理が働いています。対応しきれない現状に一枚壁を作ることで、それを実現しようとしているのです。でも、もしわが子が友だちを仲間外れにしていたら、親としてどう対応しますか。「仲間外れはしてはいけないことだよ」と教えるのではないでしょうか。
子どもを閉じ込めたり外に出すという行為は、「自分がイヤなものは外に排除していい」ということをメッセージとして教えてしまっているようなものです。今後、子どもがそれをマネしないためにも、そこから脱却を図る必要があります。
例えば、自分がキッチンに行く、洗面所に行くなどして気持ちを落ち着ける方が、子どもを閉じ込める方法よりずっと健全ではないでしょうか。
繰り返し言うことを聞かないなら、根っこの悪循環を改善するべき
子どもを閉じ込めるなどの行為は「言うことを聞かない」という場面で起こるものです。これは筆者の育児相談室でも一番よく聞くお悩みのひとつですが、その要因は、言うことを聞けるような根本的な仕組みができあがっていないことがほとんどです。なかでもよく見受けられるのは、親がその場その場で対応していて、昨日と今日のルールが違うなどしつけが一貫性に欠けていることや、わが子の思いをくみとり過ぎてしまい、いつのまにか子どもが家庭内で一番力を持つようになってしまっているというような要因です。
閉じ込めて言うことを聞かせようとするのはその場しのぎのため、この“根っこの悪循環”の改善に働きかけることはできません。子どもは「怖いから」言うことを聞いただけであって、家のルールを学んだわけではないため、次回も繰り返すことになるからです。
この悪循環が家庭のなかに浸透していると即改善ということは難しいのですが、年齢的にも順応しやすいうちに立て直しに努めることを強くおすすめします。
立て直しはそれぞれの家庭の悪循環の要因に沿っておこなうものですが、どの家庭においても共通していえるのは、子どもが言うことを聞くためには、基盤になる指針のようなものが必要ということです。生活リズムや遊び、教育などについて、わが家はこういう場面ではこうしようという方向性が決まっていれば、それは、親の一貫性を保つための拠り所となってくれますし、子どもにとっては何がOKで何がダメかを学ぶ線になります。
そもそも家庭内にこのようなお互いが把握している決まりごとがない場合は、そこを設定することから始める必要があります。また、一応決まりはあるけれど守られていないという場合は、「パパ・ママが雷を落とすまではゲームをやっていい」というような独自解釈を子どもがしていることが大半です。閉じ込めるという行為もその1つですが、親からのドカンという力が、子どもの「ここまでだ」という線になってしまっているわけです。このようなパターンが長年鎮座してしまい、お互いの心を疲弊させてしまうのです。
では、どうしたらいいのか。子どもが家庭のルールを浸透できない要因のひとつに、親が、伝えたいことを“言いっぱなし”に留めているということがよくあります。遠くから「ゲーム終わりだよ~」と伝えてスイッチを切れる子はいいですが、多くの場合、ここで子ども任せにし過ぎてしまい脱線が起きてしまっているのです。子どもは「ゲームを切りなさい」と言われ、実際に切ることになって、はじめてルールとして学びます。親が言いっぱなしにしないということは、ルールを浸透させる際の重要なポイントになりますのでぜひ見直してみてください。