人間関係

優しくていい母の「いい子だから」教育の毒。常に“交換条件”で育てられた私が失ったもの

【毒親の毒は消えない #11】「優しくていい母」だと思っていた。だけど本当は、毒ではなさそうに見える毒にじわじわとむしばまれていたことに大人になって気づく。30代女性が、そんな経験を語ってくれた。

亀山 早苗

執筆者:亀山 早苗

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大人になってから、自分の育てられ方が“偏っていた”と感じることがあるかもしれない。それが自覚できて笑い話ですめばいいが、偏りに気づかず、自分の感情を見失っていることさえ認識できない場合もあり得る。毒ではなさそうに見える毒こそがじわじわと娘をむしばんでいくのかもしれない。
 

「優しくていい母」と評判だった

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「うちの母は優しくていいお母さんと、友だちにも言われるくらいの人でした。だから母が私を侵蝕しているなんて思ったこともなかった」

そう言うのはシオリさん(34歳)だ。小さいころから母には「あなたはいい子だから」と言われて育ってきた。

「よくご褒美もくれました。算数のテストが90点を超えたらケーキ、国語だったら私の好きな店でオムライス、というように。だから頑張って勉強して、父は反対したけど中学受験をして難関私立女子校に入って。母に言われた通りの道を歩いていたんです」

ふとおかしいなと思ったのは、エスカレーター式で高校に上がったころだった。その学校は高校までしかないので、大学受験をしなければならない。そのため、高校生になったころから母の「いい子だから」教育はさらに激しくなった。

「あからさまになってきたんです。試験でいい成績をとったらお金をもらえる。だけどふと思ったんですよね。これって父が稼いできたお金だと。母はそれを私の釣り餌にしている。頑張っていい成績をとったらお金が入ってくるってヘンでしょ、と」

そこで思い出されたのが小さい頃の教育だ。やはり成績がよければご褒美がもらえる。母の教育は常に交換条件だった。いい子だから、いい成績をとったからのご褒美。存在するだけで愛されているわけではないと漠然と不安を覚えた。

「じゃあ、私の成績が落ちたらどうなるのか。そう考えたら、勉強するのがバカバカしくなりました。反抗期もあって一時期、学校をサボってばかりいたんです」

学校から母に連絡があり、母はいきなりシオリさんにすがりついた。どうしたの、何があったの、いじめられたのと矢継ぎ早に聞かれたが、彼女は答えなかった。

「サボらないで学校に行けば、あなたの欲しがっていたバッグを買ってあげるからって。『いつでも交換条件なんだね、こうしたらこうしてあげる、いい子でいたら何か買ってあげるって』と言ったら、母は『えっ』と絶句して。餌付けされた動物園の動物みたいな気分だと追い打ちをかけると、そんなつもりはないと泣き出しました」

母に確固たる教育方針などなかったのだとよくわかった。それなら無条件で愛されたかったとも思ったという。

>帰宅した私に、母がくれた高価なモノ
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