一部の人のマナー違反により、「子連れお断り」の飲食店が増えてしまうのは残念なもの。今回は回転寿司でのマナー違反の事例に加え、飲食業に従事されている方の子連れのお客に対するコメントを交え、外食する際のしつけについて考えていきたいと思います。
事例1:回転寿司のレーン側で遊ぶ子を、他の子どもが注意
●相談者プロフィール相談者:41歳女性(千葉県)
家族構成:夫(46歳)、長女(12歳)、次女(10歳)
●エピソード
家族で回転寿司に行ったときのことです。レーンを挟んで座っていた家族連れの子どもが、食べもしない商品を取っては戻すということを繰り返して遊んでいました。ファミリー向けの回転寿司チェーン店ですが、親も「ダメだよ」と軽くいうだけで、本気で行動を制御しようとしていません。何でも触りたくなるのは小さい子によくあるものですが、たいていの親は、そうしないように子どもを制御したり、座席を工夫するものではないでしょうか。
店員さんは、レーンで起きているマナー違反は視界に入っていなかったようですが、気付いた別のご家庭の子が「たべないのにさわったりしちゃだめなんだよ! ね、おかあさん!」と大きな声で注意したのです。同じ年ごろの子に言われたのが恥ずかしかったようで、ようやくやめました。
ちなみに私たち家族は、飲食店には基本的にファミリー向けのところにしか行きません。「子連れお断り」というお店もありますが、そういった飲食店側のコンセプトも理解できますし、子どもがいつまでも小さいままではないので、成長したときに一緒に楽しめたらと思っています。
責任をもって引き取るのがマナー、レーン側には親が座るなど配慮を
回転寿司のレーンを挟んで2つの家族がそれぞれ子連れで飲食していたときのエピソードですが、片やマナー良し、片やマナー悪しと対照的だったようですね。回転寿司は子連れウェルカムな印象がありますが、だからといってマナーが必要ないわけではありません。多くの方が不快に感じるのは、この事例にあった「お皿を取っては戻す」という行為。回転寿司は流れてくるお皿を手で取っていただくものなので、家族が食べる分を子どもたちが取るというのなら問題にはなりません。しかし食べもしないお皿にまで触れてしまうのは、いうまでもなく不快でしょう。取る行為が楽しくて次から次へと取ってしまった場合、親が食べたいと思わないものでも、責任もって引き取るのがマナーといえます。
とくにここ数年、コロナ禍で人々の衛生観念はこれまで以上に敏感になっていますから、その光景を見たらイラッとする人も多いはずです。「せっかくの外食なのだから、子どもに楽しんでもらいたい」「子どもがレーン側に座りたがったときに、ダメと言うのはかわいそう」このような親心もわかりますが、それで周囲の方を不快にさせてしまっては問題です。
この事例では、子どもが子どもに「それはだめだよ」と伝えた形になりましたが、それは本来、親がすべきことです。この事例のように回転寿司のレーン側に子どもを座らせて、何かあったらその都度注意するというような、外でのふるまいに関するマナーを現場で学ばせる形は意外と上手くいかないことが多いものです。なぜなら外出先では、子どもの興奮はエスカレートする一方で、親の方はだんだんとうやむやになってしまうことがよくあるからです。
基本的に家庭内でできていないことを外でさせるのは難しいものなので、家庭での様子を見て、まだ無理だろうと判断したら、大人がレーン側に座るなどしっかり配慮をした上で利用するべきでしょう。
事例2:店内を走り回る子を注意しない、マナー違反の家族を退店
●相談者プロフィール相談者:38歳男性(東京都・飲食関係者)
●エピソード
お子様連れの方で一番困るのは、子どもではなく、マナーのない親御さんです。日々の子育てに苦労する中、リフレッシュの場として外食をすることはとても素晴らしいことだと思います。しかし飲食店というのは、あくまで不特定多数の方が食事をする場所でもあります。
以前そこを履き違えた、とても困ったお客様がいらっしゃいました。子どもが店内を走り回っているのに、親御さんは特に何もしない。当然、周囲のお客様は怪訝な顔をされており、多数の方が苛立ちを覚えているのがうかがえました。そしてついには他のお客様にぶつかり、危うく怪我をさせそうになったのです。「大変危険で他のお客様にご迷惑ですので、お子さまにご指導お願いします」 と注意すると、 「お金を払っているのだから、それくらい多めに見ろ」 などと言われ、あまりにもひどい態度。食事の途中でしたが、お代も頂かずご退店いただきました。
他のお客様へ謝罪を申し上げに行くと、 「大変でしたね」 という労いや、「あんな連中、さっさと追い出せよ」 とお叱りの言葉をいただきました。こうした品位かける行動をされる方がいたという話は、同業他社の方々からも少なからずお話をうかがいます。
「子連れお断り」にするのはお店にとって損害ではあるのですが、それ以上に問題なのは、そうした方々が増えれば増えるほど、その対策として、やむなく子連れお断りにしなければならないお店が少しずつ増えてしまうという点です。子どもですから、泣いたりしてしまうのは仕方ないこと。それくらいは特に問題ないのですが、先のような品位かける人のせいで、マナーを守ってお食事される方々までお断りしなければならない=リフレッシュの場が一つ削られることになる、という悲しい現実になってしまう。そういうお店がこれ以上増えないためにも、最低限のマナーを守って、利用していただきたく思います。
一部のマナー違反により「子連れお断り」のお店が増えてしまう
マナーのない飲食は、たまたまそこに居合わせたお客様を不快にさせるだけでなく、そこで働いている従業員の方々をも苦しめているのがわかります。公園のような公共の場でのモラルに欠ける行為では、基本的に自分と相手という二者ですが、お店の中で起こるとそれが三者になり、迷惑をかける側とかけられる側、その間に入り板挟みになるお店側とさらに広がります。そしてこの方が指摘していらっしゃるように、マナーの悪い人が増えれば増えるほど、その対策として「子連れお断り」のお店が増えてしまいます。きちんとモラルに則した食事ができるお子さんたちもたくさんいるのに、そういうご家庭も含めて、出入りできなくなってしまうのです。
以前「電車・バスの子連れはお断り?「赤ちゃんは泣くもの」だけど…「注意しない親」への許容ではない」でも触れたように、世間が厳しいのは対子どもたちというより、対大人です。この方もおっしゃっているように、子どもが泣いたりすることは仕方ない、でもお金を払っているのだから我が子が好き勝手やってもかまわないだろう、という考えは許してはいけないということですね。
子連れでの外食マナーは家庭での取り組みがカギに
外食は子連れファミリーにとって、日々のストレス解消のひとときのはず。しかし一部のマナーの悪い方たちにより、リフレッシュの場所が狭められてしまっているのです。お店側も、マナーを基準にお客様を選ぶことはできないため、「子連れ禁止」のようにひとくくりに扱うことしかできないからです。家庭の中で座って食事をすることがまだできない場合、外でそれを実現しようとするのは正直難しいもの。外ならではの刺激により、気持ちが高揚するからです。
まずは、お家の毎日の食事の中で立ち上がらない、歩き回らないことを練習していくことが重要です。ポイントは子どもが立ち上がってから注意する方法ではなく、座って食事をしている段階から、ほめて軌道を作っていくやり方。ほとんどの方が、お子さんが立ってから反応をしますが、それでは注意することしかできません。
どんな子でも、ちゃんと座って食べている一瞬はあるはずですので、そこを「座って食べてて嬉しいな」と肯定し、少しずつちゃんと食べられている時間を成長させていけると望ましいでしょう。