「紅白歌合戦」は「男女歌合戦」なのか?
大みそかの名物『紅白歌合戦』のルーツは『紅白音楽試合』
「紅白(こうはく)」とは、紅(赤)色と白色の2色の組み合わせのことで、『NHK紅白歌合戦』では、第1回放送から女性アーティストを紅組(あかぐみ)、男性アーティストを白組(しろぐみ)として、歌や演奏を披露し、勝敗を決してきました。
男女混成グループの場合は、DREAMS COME TRUE、いきものがかりなど、女性ボーカルであれば紅組、サザンオールスターズ、SEKAI NO OWARIなど男性ボーカルであれば白組となるのが慣例でしたが、2022年の第73回では、男性ボーカルのSEKAI NO OWARIが紅組で出演することになりました。
また2018年の第69回からは、紅組、白組の枠を越えた特別企画を実施。2022年の第73回は、歌手活動の一時休養を発表している氷川きよしさんが出演することが発表されるなど、性別を基にした男女対抗戦方式から変わろうとしています。
「紅」は女性を表す言葉ではなかった
紅白歌合戦で長く女性を表す意味で使われてきた「紅」。しかし「紅」が女性を表す言葉になったのは、明治時代以降だといわれています。「紅一点」は、今では「多数の男性の中にいる、ただ1人の女性」という意味で使われていますが、語源をたどると「たくさんある同じものの中で1つだけ違うもの」「ひときわ目立つ存在のこと」を指し、必ずしも女性を意味するものではなかったのです。
「紅一点」の対義語として、「黒一点」「白一点」「青一点」「蒼一点」「緑一点」などのような表現も見られますが、これらは俗語にすぎません。黒や白の無彩色、青、蒼、緑の寒色系に偏っているとはいえ、日本における男性のイメージカラーは、女性とは違い、一色に収まりきらないのは興味深いですね。
「紅白歌合戦」命名のルーツは、剣道の紅白試合
「紅白」には主に2つの用途があります。1つは、紅白戦、紅白試合、玉入れ競技の紅白帽など、対抗する2組の組み分け。もう1つは、紅白幕、紅白まんじゅう、水引の紅白結びなど、縁起のいい色として祝い事に関するものです。ラジオ番組『紅白音楽試合』は、剣道の紅白試合がモデルにされたといわれています。剣道やサッカーなど、さまざまな競技で見られる紅白試合の原点は、平安時代末期から鎌倉時代初頭にかけての源平合戦。平氏が赤い旗、源氏が白い旗を掲げて敵味方の区別をしたことが由来とされています。
「赤白」ではなく、「紅白」になったのはなぜ?
『NHK紅白歌合戦』は、なぜ「赤白」ではなく「紅白」なのか
「赤白」と書いて、「しゃくびゃく」と読む例は中国の方言にありますが、一般的に使われる言葉ではありません。「白赤」「白紅」という言葉も、辞書には見当たりません。
漢字は中国で生まれて、日本に伝わってきました。中国語の発音に似せた読み方が「音読み」、日本語の読み方をあてたものが「訓読み」です。「赤」の音読みは「せき」で、「ありのまま」や「表面に何も帯びていない」という意味。訓読みの赤(あか)とは異なります。
一方、紅(こう)は、「あざやかな赤色」を指す言葉で、紅涙(こうるい)という言葉には、血の涙という意味があります。このように漢字の意味合いから、赤と白の配色を指す言葉として、「紅白」が定着したのではないかと考えられています(諸説あります)。
『紅白歌合戦』が日本を代表する長寿番組のひとつとなったのは、「紅白」という言葉が持つさまざまの意味の掛け合わせが絶妙だったからでしょう。その一方で、現在の音楽シーンは、従来の「紅白」の枠組みでは、窮屈に感じられる面もあるのではないでしょうか。『紅白歌合戦』の歴史とともに、「紅白」という言葉の意味も変化していくのかもしれません。
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