今回は、クラスのグループチャットで起きたトラブルに関して、実際の事例を見ながら子どものスマホの管理について考えていきたいと思います。
事例1:中1息子のクラスLINEで“特定の子が強制退出”に……
■相談者プロフィール相談者:38歳女性(大阪府)
家族構成:長男13歳、次男10歳
【相談内容】
クラスのほぼ全員が招待されているLINEグループ。一度動き出すと、スタンプ連打や意味のない投稿が送られてきたりして、通知音が鳴り止みません。こちらもイライラするほどだったため、子どもにはそういった迷惑になるようなLINEを送らないようにと、グループが動きだしたら「通知オフ」にするよう伝えていました。
また、子どもの同意の上でスマホをときどき見せてもらっているのですが、特定の子だけ勝手に強制退出させていたり、そのLINEグループに入っていないクラスメートの写真が流出しているのを見つけたことがありました。いじめでもないし、本人たちは全く悪気はない雰囲気でしたが、「これを自分が知らないところでされていたら?」ということを考えさせ、その場にいない人の話題はしないように伝えました。
しかしその後も、どうしてもそのグループの悪い流れに巻き込まれてしまうため、我が子をグループから「退会」させたいなと思っています。
“子ども合意”のもとでスマホを確認して、管理不足を防ぐのも手
子どもに限らず、大人数でのメッセージのやりとりは、何かとトラブルが多い印象があります。大人だとそのトラブルは、「早く返事しなくちゃ」「みんなはどうするんだろう」「迷惑じゃないかな」というような“相手に気を遣うのが疲れる系”が多いかもしれません。子どもの場合は、相手を傷つけたり、逆に傷つけられたり、煩わしいほどに連投したりというような、直接的な行為が問題になることが多いように思います。
そしてこの事例のように、我が子にはマナーとして教えているのに、他の子に巻き込まれてしまうというお悩みも結構あるのではないでしょうか。仲間の誰か1人がマナー違反をしてしまったことで、そのグループ全体の空気がよくない方向へ変わってしまうというものです。
LINEグループのような仲間は、所属している限りそこから距離を置くことが意外と難しいものです。目に見えないながらも子どもたちを縛っていて、そこに流れるメッセージや画像をイヤだと思ってもつい見てしまう、そういう子も結構いるはずです。グループ自体が1つの活動体のようになっているため、なにかよくない動作が取られれば、その中の人はみんな巻き込まれてしまうのです。オンライン上の見えないつながりでありながら、強力な拘束力をもっているのです。
そしてそんな強さがありながらも、だれかを外すという行為は、面と向かってよりもオンライン上の方が軽い気持ちでできてしまうのではないでしょうか。実際の教室内だったらしないことでも、バーチャルの世界だとやりやすいと感じるのかもしれません。よって、このご家庭のように、スマホを用いる際のマナーに意識を向けることはとても大切なことです。
理想的には、子どもたちが自己管理できるのがよいのですが、実際にはそのような“現場で学ばせるスタイル”が結果的に管理不足につながってしまうことはよくあります。ましてやスマホは、私たちが子ども時代にはなかった物品ですから、子育てにおける取り扱いは未知の部分も少なくありません。
よって、我が子が違反する側にならないための教示は当然のことですが、簡単に巻き込まれやすいことも意識していく必要があるでしょう。この方のように、合意のもとでスマホを見るというのも、子どものスマホ使用状況を確認する1つの方法だと思います。
事例2:親のうっかりで、担任のプライバシーが飛び交い……
■相談者プロフィール相談者:37歳女性(東京都)
家族構成:夫44歳、長男12歳、長女6歳
【相談内容】
子どもの学年のLINEグループは、朝起きると通知が100件を超えることがよくあったため、今は「サイレント設定」にしています。また夜中までやり取りに付き合うことがあり、朝起きられない日があったため、夜間の使用制限を設けました。子どもは嫌がっていましたが、結果規則正しい生活になり、今では納得しています。
また、普段は翌日の持ち物の確認など平和な内容が多いのですが、あるとき先生の結婚、妊娠などのうわさ話がLINEグループ内で飛び交っていたことがありました。もちろん公表されている内容ではなく、投稿を流した子のお母さんがそう言っていた、というものでした。当のお母さんもこんなことになっているとは思っていないでしょう。
そのときは、子どもに話の輪の中に入らないようとだけ言ったのですが、こういった他人のプライバシーをどう教えればいいものか悩みます。
親自身が“他人のプライバシーの尊重”について律することから
子育てをしていると、子どもがうっかり家庭の秘密を話してしまうことは結構あるものです。幼稚園時代の頃に「○○ちゃんのママ(パパ)は~~なんだって」というような話を子どもから聞いたという方も多いのではないでしょうか。もしくは逆に、自分の子どもがペラペラと家の内情を公園で話してしまって赤面したという方もいるでしょう。どこまで何をしゃべってOKかというのは、厳密なルールがない分、難しいものです。実際、大人でもうわさ話が大好きという人はいますよね。ここに出てくるお母さんも、先生の結婚、妊娠をその子に話しているわけですから、それを子どもにはしちゃダメというのは矛盾があるように思います。口止めしたとしても、その子が必ずしも守れるかどうかはわかりません。
子どもにプライバシーに関するマナーを教えるのは、とても難しいことだと感じています。というのも、言葉でそれを伝えるだけなら簡単ですが、それを実行してもらうためには、自らも律する必要があるからです。親があれこれうわさ話をしているのに、子どもにはダメと教えるのは一貫性に欠けてしまう分、学びになりにくいのです。
「こういうことは言っちゃダメだよ」と教えていくこと自体は大事なことですが、自らも他者のプライバシーを尊重しているかを振り返ることは大事なことのように思います。
子どもがスマホの所有権をもつと危険!? 親からの“レンタル品”程度に
思春期というのは、親以上に仲間の存在が大きくなってくる時期です。親や教師などの大人には反感をもちつつも、友だちとはわいわいと盛り上がる。家では話さないけれど、友だちとは話に夢中、そういう時期です。この過程で、友だちと自分を比べたり、自分らしさを試行錯誤したりしながら自我を発達させていくのは、思春期に見られるごく普通の成長の姿です。よって、この時期にその仲間意識から、LINEグループが盛り上がるのもとてもよくわかります。ただ、そこにマナー違反があると、まったく影響を受けないままでいることも難しいでしょう。そのため、そのグループから出るというのも選択肢の1つといえるでしょう。
子どものスマホを見るかどうかは賛否両論あると思いますし、日頃の親子関係のあり方も各ご家庭ごとに違うので、一概にどうすべきとはいえませんが、いざというときに見ることができないほど、子どもがスマホの所有権をもっていると、問題に気付くことすらできなくなるのは確かです。よって、「スマホはあくまで親からのレンタル品」というような位置づけにするなど、ルールを作っておくのは大切なことです。
とくに、「うちの子はちゃんとしておいた方がいいタイプかも」という判断は、親だからこそ見極めができる部分です。そういう場合は、たとえば、月に1回スマホを一緒に確認するなどのリズムを、早い段階で作っておくことも有効だと思います。思春期になっていきなり「見せなさい」だと抵抗されるのがオチなので、問題が起こる前に何かしらのルールを設けておくことをおすすめします。