今回は、All About編集部で募集したスマホの乱用で生活リズムを崩してしまった2つの事例をご紹介しながら、どのように付き合っていったらいいのかを検討していきたいと思います。
事例1:夜遅くまで動画を見る長女、寝不足で学校を休みがちに
【相談内容】中学生の長女がスマホで動画を夜遅くまで見るようになり、次の朝、寝不足で体調が悪くなって学校を休んでしまうという日が増えてきました。そのためスマホにロックを掛けて、必要なとき以外は使用できなくしました。
小学生の長男については、スマホでYouTubeを見ながら勉強をすることがあるのですが、宿題がなかなか終わらず学校の成績も下がり気味。毎日、母親に怒られながら、寝る直前ギリギリに終わらせてから眠るという日が続いています。
(相談者:36歳男性)
「使用制限」などによる実践的なルールが大切
スマホやタブレットの用い方に関するお悩みは、筆者の育児相談室でも急増しています。親御さんからの一番の訴えは「使用時間の長さ」に関するもの。このご家庭のお子さんたち同様、夜更かしになったり、家庭学習に影響したり、さらには食事中に動画、トイレでもゲームなど、子どもたちの時間の多くをスマホが占めてしまい、生活に支障をきたすというものです。この事例でお姉さんの方は、朝起きれずに学校を休むようになってしまったということですが、このように寝不足で学校を休みがちになるのはよく聞く話です。大人だって、夜更かしした次の日にいつもと同じ時間に起きるのはしんどいので、考えてみれば自然な流れでしょう。
結局、スマホにロックをかけ、使用時間の制限を行ったようですが、自制できずに生活リズムが狂ってしまう場合は、このように実践的なルールが必要になってくるでしょう。
事例2:スマホを学習に活用していたが、睡眠不足で本末転倒……
【相談内容】中学生の長男の学校では、スマホ使用に関して「週末は親に預ける」などの「13の約束」を親子間でしようと提案があり、息子は「この約束を守るからスマホを買ってくれ」と主張しました。しかしどうせ守らないだろう息子と、守らせようとする私との間でバトルになることは目に見えていたため、そのような約束をしなくても上手に使えるようになるまでは買わない、と返したところ親子バトルになりました。私は時代遅れだと家族から批判されましたが、結果、時期を遅らせて導入しました。
導入後は受験勉強のための調べ物や単語の発音練習などの学習にもスマホを活用していましたが、次第に眠れない日が多くなりました。辞書機能や詳しい解説のYouTubeなど、授業や塾では得られないコンテンツが多く、学習に役立ち重宝していたようです。
ただ、それで睡眠障害にでもなってしまっては本末転倒のため、寝る前はスマホを見るのを止めるよう伝えました。しかし「それでは勉強ができない」と言って使用を中止できず、結果、病院に行き「寝る前は本を読もう」と言われて、やっと本人も納得。スマホと上手く付き合いながら、学習に活用するのは難しいと実感しました。
(相談者:45歳男性)
親子間のスマホルールが“その場限り”にならず脱線しないためには?
この事例にある「13の約束」とは、おそらく「スマホ18の約束」と同類のものでしょう。はじめて聞いた方のために補足しますと「スマホ18の約束」とは、数年前にアメリカのとあるご家庭で子どものためにつづられた、スマホの利用に関する18条の心得のこと。この自作の契約書をブログで公表したところ、世界的に知れ渡ったというわけですが、これはそれだけ多くの親が悩んでいる表れでしょう。インターネットで検索すると様々なサイトで紹介されているのでご覧になってください。この相談者の方は「約束を守らない息子と、守らせようとする私との間でバトルになるから、そのような約束をしなくても上手に使えるようになるまでは買わない」と主張し、購入時期を遅らせたということ。このことで親子バトルになったようですが、これもお子さんのことを把握しているからこその判断でしょう。友だちが持っていると欲しくなるのは当然ですが、家族からは批判されつつも、流されない判断は素晴らしいと思います。
しかし、このように時期を見極めて導入を遅らせても悩みはつきないようで、改めてスマホの付き合いの難しさを感じます。
先ほど触れた「18の約束」とまではいかなくとも、子どもにスマホを解禁するときには何らかの取り決めをしているご家庭がほとんどでしょう。それにもかかわらず、だんだんと脱線するのが常です。幼少期のテレビ、そしてその後のタブレットやスマホ、どれを見ても解禁時点はいい感じだったのに、気づいたらエンドレスに利用していたというケースが圧倒的ではないでしょうか。
これが何を意味しているかといえば、「約束をするだけなら簡単、それを実行するのが難しい」ということです。
たとえば「18の約束」リストの18番目、最後の約束は「私との約束を守れなかったときは、このスマホをあなたから没収します。そして一度、話し合い、やり直しましょう」という内容です。実際にこの没収が行われ続けていれば、大きな脱線はしないはずです。たとえ1年後でも2年後であっても、ルールを守らなかったときはこの仕切り直しを行い続けるのです。しかし多くの場合、何らかの理由でいつの間にかルールがうやむやになってしまいがちです。その理由は「没収すると子どもがキレるから」かもしれませんし、「自分で管理すべき。もう面倒を見きれない」かもしれません。
この事例のお子さんもそうですが、スマホは学習にも役立ったりといい側面もたくさんあります。大人の私たちもスマホなしの生活なんてもはや考えられないと思いますが、大事なのは節度です。子どもはまだまだ時計を見て行動したり、自制したりするのが苦手。自己管理してくれたら理想的ですが、残念ながらそれが自らできる子はそうはいません。相手は大人も夢中になるスマホなのですから。
生活リズムを崩したり、さらには学校に行けず、不登校にまで至ってしまっては行き過ぎです。これから子どもにスマホをと考えている方は、約束がその場限りになりやすいことを頭に留めつつ、どう付き合っていくかを決めていくのがポイントになるでしょう。必要なのは厳しいルールではなく、1カ月後、半年後、1年後でも取り組みやすいルールです。導入時に約束すればOKとせず、親子で守れるルールに落とし込んだ上で、それをコツコツ実践していくのです。
要因はいじめだけではない、小中学生の「不登校」が9年連続増加
最近、文部科学省より公表された「2021年度の問題行動・不登校に関する調査」によると、全国の小中学校で不登校だった児童は24万4940人だったそうです。不登校は9年連続で増加し、ここずっと問題となり続けています。昨年に関しては、小学生が前年度比28.6%増の8万1498人、中学生が23.1%増の16万3442人と前年度から2割以上も増えています。この急激な増加を文科省は「生活リズムが乱れやすく交友関係が築くことが難しくなり、登校意欲がわきにくい状況にあった」と分析しています。上の事例に話がつながりますが、コロナ禍で子どもたちがどっぷりスマホやタブレットにはまってしまったご家庭は多いでしょう。
生活リズムの乱れやスマホなどのやり過ぎは、確実に現代の不登校のきっかけとして入り込んできています。1日24時間の用途が偏れば、必ずやどこかにひずみが出てきてしまうため、ひどくならないうちに介入をすることが望まれます。
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【参考情報】
令和3年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果の概要
令和3年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果について
(文部科学省 令和4年10月)