「一生結婚するつもりはない」男女は過去最高に
「一生結婚するつもりはない」と思っているのは“今だけ”かもしれない
個人的には「出生動向基本調査」をはじめとする、結婚に関するアンケート調査に関して、決して否定をするつもりはありませんが、その結果の“見方”に気を付けなくてはいけないと感じています。例えば、「一生結婚するつもりはない」という回答をした人がいたとしても、それはあくまでも、「“今”は『一生結婚するつもりはない』と思っている」に過ぎないということです。そんな人でも、ある日突然恋に落ちてしまい、その人から「結婚したい」と言われたら、すんなり結婚してしまうことだってあり得るのです。なぜなら、“本当の愛”というのは、それだけ自分を変えてしまうほどのパワーがあるからです。
また、調査で「一生結婚するつもりはない」と回答したからといって、「パートナーも作るつもりはない」と考えている人ばかりではないでしょう。つまり、「現在の結婚制度に対して、自分が合わないと思っているだけ」という可能性もあるのです。例えば苗字を変えたくなかったり、籍を入れないほうが程よい距離感を保つことができ、関係がうまくいったりすることもありますしね。
さらに、「経済的に難しい」といった、社会的な背景によって、「結婚するつもりはない」と考えている場合もあります。だから、日本の経済が良くなり、誰もが豊かに暮らせるようになったら、「結婚したい」と思うようになることだって、あり得るわけです。
つまり、「一生結婚するつもりはない」という回答は、現在の社会の在り方や結婚のシステム、そして自身の価値観や状況において、「“今”は『一生結婚するつもりはない』と考えている人」の数に過ぎないというわけです。それらが変われば、回答が変わる可能性は高いでしょう。
調査結果に惑わされず、自分にとっての「結婚の意義」に向き合おう
人数が多いと「自分は間違っていないんだ」と安心してしまう人が多い日本人だからこそ、こういったアンケート結果に誘導されるようにならないことも大切です。例えば、「独身者が増えてきたから、自分も独身のままでもいいや」と考えるのは、ちょっと違います。それが「自分にとって合うかどうか」は分かりません。
昔、ビートたけしさんが「赤信号、みんなで渡れば怖くない」というギャグをおっしゃっていましたが、みんなで渡ったって、車が通ればひかれてしまうのです。つまり、人数が多いからって大丈夫なことばかりではありません。
もちろん、だからといって、「結婚したほうがいい」とすすめているわけでもありません。それぞれが自分の人生において、結婚の意義について考える必要があります。なぜなら、結婚するのにも、独身でいるにも、「向き、不向き」があるからです。たとえ「一生結婚するつもりはない」と回答した未婚者が99%になったとしても、「自分は結婚したい」と思うのであれば、そのときはしたほうがいいのです。
結婚の「向き、不向き」について誤解されがちなこと
ただし、結婚(独身)の「向き、不向き」についても、誤解されていることがあります。世の中には、「誰かと一緒にいたい人(1人だと寂しくて仕方ない人)」もいれば、「1人でいるのが好きな人」もいます。一般的に「前者の人は結婚に向いていて、後者の人は向いていない」などと判断しがちですが、そんな単純ではありません。後者の場合は、精神的に自立しているから、誰かを必要としない分、1人でも平気だと感じる場面も多いでしょう。だからといって、後者の人が「独身向き」とは限りません。なぜなら、恋愛にしても、夫婦にしても、お互いに精神的に自立した上で一緒にいたほうが、むしろ関係がうまくいきやすいからです。
前者の場合は、結婚を求めやすい傾向がありますが、パートナーとの関係がうまくいくとは限りません。依存体質の場合、“自分の幸せ”のために相手を利用してしまうこともあります。その結果、家庭が壊れることも可能性としてゼロではありません。こういう人は、早くに結婚してしまう前に、精神的な自立を学んだほうがいいでしょう。つまり、少し独身の期間を持って、1人で立てるようになったほうがいいのです。
とはいえ、精神的に自立している人が「結婚したら幸せになれるのか?」というと「結婚する相手による」としか言いようがありません。お互いに精神的に自立している者同士で結婚したら、うまくいく可能性は高まりますが、もし相手が依存体質の場合は、足をひっぱられてしまい、苦労することも多いでしょう。だったら、しないほうが幸せでいられる可能性だってあるのです。
社会や制度、人間の成熟度によって「結婚の意義」は変わる
残念ながら、「結婚を希望する人が増えた、減った」なんて話は、未婚者増加や少子化に対して何の解決にもなりません。なぜなら、現代は、結婚したって幸せになれるとは限らない状況だからです。それよりも、まずは結婚制度を見直し“結婚がうまくいきやすい社会”を目指す方が先です。さらに、私たち自身が「結婚しても自立し続けられる人」にならないと、離婚が増えたり、離婚できなくて不幸になってしまったりする人が出てきてしまうわけです。これらの問題をクリアした上で、結婚したいのかどうかを問うほうが、「結婚そのものの意義」につながる結果になるでしょう。
社会や制度の進化はもちろんのこと、“考え方・価値観の多様化”によっても、「結婚の意義」は変わります。例えば、「特定の人だけを愛する」よりも、「より多くの人を自分と同じように愛せるようになる」ことのほうが高度です。最近は、そういう価値観を持つ人もちらほらと出てきています。そういう人は、家族ではなく「仲間たちと仲良く生きていきたい」と考える傾向があるようです。
「結婚も幸せだけど、結婚しなくても別の幸せがある」と、誰もが思えるような社会、制度、精神の段階になって、ようやくシンプルに「結婚そのものの意義」を考えられるようになるといっても過言ではありません。まずは、多くの人が「これなら結婚してもいいな」と思えるような社会と制度にしていくことが先決でしょうね。