即答しない夫に「イラッ」とする!
「私がかなりせっかちだというのは大前提なんですが」と話してくれたのは、ミユさん(37歳)だ。友人だった彼とひょんなことから関係を持ち、「デキ婚」となった。結婚して10年たつ。
「いい人だというのはわかっていたし、彼も私に前から好意以上の気持ちを持っていたと言ってくれて、すんなり結婚。だけどこれほどおっとりした人だとは知らなかった」
ミユさんは、ドアを開閉するとき、自分がきちんと入りきっていないのに閉めてしまうほどのせっかち。引き出しをあけてものを探し、まだ引き出しの中に手があるのに、もう片方の手で閉めたこともある。
「人に対してはせっかちにならないように気をつけています。特に子どもを急かすとよくないから。でも自分のことには今もせっかちですね(笑)」
一方の夫は、急かしてもなかなか動かないほどののんびり屋。外出時、よく夫が妻を待って玄関でイライラするような話があるが、ミユさんはいつも夫にイラつくという。
「10歳と7歳の娘たちと私、もう全部準備もすんで玄関にいるのに、夫はなかなか来ない。やいやい言うと、『大変。携帯のバッテリーが見当たらない』とか『ご飯、タイマーでしかけてきたよ』とか。いや、今日の食事は外でするっていったじゃない、とまた騒ぎになって」
夫が即答しないのも、ミユさんには理解できないのだという。
「食後、私は必ずコーヒーを自分でいれて飲むんです。夫は飲んだり飲まなかったり。だから『飲む?』と聞いているのに即答しない。『うーん』といっているから、いらないのねと豆をひとり分挽こうとすると『飲む』って。どうして即答できないのと言ったら、『考えてたんだよ』って。自分で言いながら笑っちゃいますけど、その場ではけっこうイラッとくるんですよ」
のんびり屋の上に「答えに時間がかかる」。これはせっかちな人には我慢できないかもしれない。
「イエス」か「ノー」を先延ばしにする夫
たとえば友だちから「○日に飲み会があるんだけど来られる?」と言われたとき、行きたければすぐに予定をチェックするはず。だがミユさんの夫の答えは「行けたら行く」なのだ。
「予定があいているなら行っておいでよと私は言うんですよ。私も友だちに誘われたら行くから、お互いさまでしょって。でも夫は『その日の気分とか、それまでに何か起こるかもとか考えると、単純に行くって言えないんだよね』って。まあ、突発的に何か起こったら連絡すればいいわけだし、そこまで考えなくてもいいんじゃないのと私は思うタイプ。行けたら行くは、行かないってことだよと夫に言ったんですが、結局、夫は出かけて行きました。変わってますよね。夫に言わせると『オレは普通だよ』と」
ミユさんが言うように、いろいろなことを考えたら人は「約束」などいっさいできなくなってしまう。「おそらく大丈夫」という想定のもとに、人は約束をし、現実に多くの場合は何ごともなく約束を消化していくのだ。そう考えると、ミユさんの夫はのんびりしているように見えるが、事細かにシミュレーションをするタイプなのだろう。
「シミュレーションしている間に時間がたって、結局、決意表明や行動が遅れてしまうのかも(笑)。本末転倒ですよね」
だがそんな夫だからか、ミユさんに威張ったり子どもたちに大声を上げたりすることはいっさいない。
「子どもが何かできなくてイライラしているときも、夫は『そのうちできるようになるから、焦らないほうがいいよ』となだめている。せっかちで『早く!』と叫んでいる私より子どもにとってはいいのかもしれないと思うこともあります。でも夫と一緒にいる限り、このイライラからは抜けられないんでしょうね。夫がもう少しいろいろなことを早くしてくれて、私がもうちょっと待てれば歩み寄れるんでしょうけど」
苦笑するミユさん。自分を変えるのはむずかしい。お互いに不満をためないようにさえすれば、ときにイラつきながらも、ミユさんと夫、真逆の性格のふたりは、これでうまくいっているのではないだろうか。