仕事・給与

年収1000万円の人の手取り額はいくら? 社会保険料や税金を引くと約758万円

令和5年の民間給与実態調査によると、年収1000万円を超えている方は全体の5.5%となっています。年収1000万円と聞高収入に思えますが、実際の手取りはいくらなのでしょうか。今回は、夫婦と子供2人の年収1000万円世帯の手取り額を計算してみます。

川手 康義

執筆者:川手 康義

ファイナンシャルプランナー / サラリーマン家庭を守るお金術ガイド

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<目次>
令和3年の民間給与実態調査によると、年収1000万円を超えている方は全体の4.9%となっています。年収1000万円と聞くと高収入に思えますが、実際の手取りはいくらなのでしょうか。

年収から手取り額を計算するには?

給与明細を見てみると、額面の収入(年収)と実際の手取り額は異なります。年収からは社会保険料(厚生年金保険料、健康保険料、雇用保険料)や所得税、住民税が引かれているからです。

そのため、年収から手取り額を計算するには、社会保険料や所得税、住民税がいくらなのかを計算する必要があります。
年収1000万円,手取り

年収1000万円の方の手取りはいくらなのでしょうか?

それでは実際に年収1000万円のモデル世帯(夫婦と子供2人)の社会保険料、所得税、住民税を計算してみます。細かい条件は以下といたします。

夫:年収1000万円(給与60万円×12カ月+ボーナス140万円×2回)
「協会けんぽ」加入の福岡県の一般事業会社に勤めている40歳以上の会社員
妻:専業主婦(収入なし)
子:2名、いずれも18歳以下

なお、年収や家族構成は前年と変わらないものとします。

厚生年金保険料

月の厚生年金保険料は、4~6月の給与額面の平均額を「厚生年金保険料額表」に当てはめ、該当する額(標準報酬月額)に保険料率をかけて計算します。保険料率は18.3%ですが会社と折半のため本人負担は9.15%となります。

この方の4~6月の給与額面の平均額は60万円ですので、「厚生年金保険料額表」より本人負担額は5万3985円になります。
厚生年金保険料,標準報酬月額,日本年金機構,令和6年度

厚生年金保険料は標準報酬月額により決まります。日本年金機構/令和6年度厚生年金保険料額表より抜粋


なお、ボーナスからの本人負担額は、標準賞与額(税引き前のボーナス額から千円未満の端数を切り捨てた額)に9.15%をかけて計算します。この方の場合は140万円×9.15%の12万8100円になります。

年間の厚生年金保険料:5万3985円×12カ月+12万8100円×2回=90万4020円

健康保険料(40歳以上は介護保険料も)

健康保険料は「協会けんぽ」に加入しているのか「健康保険組合」に加入しているのかによって異なります。また「協会けんぽ」は都道府県ごとに保険料率が異なります。

毎月の保険料は、厚生年金の際にも使用した標準報酬月額(4~6月の給与額面の平均値該当額)に都道府県ごとの保険料率をかけて計算しますが、健康保険料も会社と折半です。また40歳以上の方は介護保険料も加わります。

この方は「協会けんぽ」加入の福岡県の企業にお勤めで40歳以上ですので、介護保険料を含めた3万5252円が本人負担額となります。
協会けんぽ,福岡県,保険料率,40歳以上,令和6年度

協会けんぽの健康保険料率は都道府県によって異なります。協会けんぽ/令和6年度健康保険料率(福岡県)より抜粋


なお、ボーナスからの本人負担額は、標準賞与額(税引き前のボーナス額から千円未満の端数を切り捨てた額)に料率をかけて計算します。この方の場合は140万円に福岡県の40歳以上の方の保険料率11.95%をかけた額の折半、つまり8万3650円になります。

年間の健康保険料:3万5252円×12カ月+8万3650円×2回=59万324円

雇用保険料

雇用保険料は、お勤めの会社の業態に応じて本人負担率が異なり、一般の事業であれば0.6%、農林水産・清酒製造・建設業であれば0.7%となります。

なお、計算の際は給与および賞与の額面に料率をかけて計算します。この方の場合は一般の事業会社にお勤めですので負担率は0.6%となります。

年間の雇用保険料:1000万円×0.6%=6万円

所得税

所得税は、年収から各種の控除および社会保険料を引いた額(課税所得金額)に税率をかけて計算します。

この方の場合は、年収1000万円から給与所得控除(195万円)、所得金額調整控除(15万円※注1)、基礎控除(48万円)、配偶者控除(38万円)、扶養控除(38万円×2名)および前項で計算した厚生年金保険料(90万4020円)、健康保険料(59万324円)、雇用保険料(6万円)を引いた472万5000円(千円未満切り捨て)が課税所得となり、速算表に当てはめると所得税は51万7500円となります。

472万5000円(課税所得)×20%-42万7500円=51万7500円

※注1:給与収入850万円超の子育て世帯の税負担を軽減する目的で導入された控除であり、控除額は≪給与収入(1000万円超の場合は1000万円)-850万円≫×10%
 
課税所得,所得税

課税所得によって所得税は変わります


なお、令和19年までは所得税額の2.1%、つまり51万7500円×2.1%の1万867円が復興特別所得税として課税されますので、本来ならば最終的な所得税は以下となります。

所得税(復興特別所得税含む):51万7500円+1万867円=52万8300円(100円未満切り捨て)
 

定額減税後の所得税(令和6年のみ)

令和6年は所得税について定額減税が実施されており、本人は3万円、同一生計配偶者および扶養親族は1名につき3万円が所得税から控除されます。
この方の場合であれば12万円(本人3万円、配偶者3万円、お子様3万円×2名)の定額減税が受けられますので、定額減税後の所得税は以下となります。

定額減税後の所得税:52万8300円ー12万円=40万8300円
 

住民税

住民税は、前年の所得に対してかかる税金であり所得割と均等割に分けられます。所得割の計算手順は所得税と同じですが、人的控除の額が所得税と異なることおよび標準税率は10%となっています。また均等割については、標準税率4000円(市町村民税3000円、道府県民税1000円)(※注2)が徴収されます。
なお令和6年度から導入された森林環境税(国税)1000円が合わせて徴収されます(※注3)


この方の場合、人的控除の基礎控除(43万円)、配偶者控除(33万円)、扶養控除(33万円×2名)が所得税の人的控除よりそれぞれ5万円少ないため、住民税における課税所得は492万5000円(1000円未満切り捨て)となり標準税率10%として計算すると49万2500円ですが、調整控除(※注4)2500円を差し引くため49万円が所得割額となります。均等割は標準税率、森林環境税(国税)が合わせて徴収されますので、本来ならば最終的な住民税は以下になります。

住民税:49万円(所得割)+4000円(均等割)=49万5000円

※注2:東日本大震災復興基本法に基づいた、500円づつの加算は令和5年で終了しています
※注3:国税ですが住民税均等割りと合わせて徴収されます
※注4:所得税と住民税の人的控除の差による、個人住民税の負担増を調整するため所得割額から引くことのできる控除

定額減税後の住民税(令和6年のみ)

令和6年は住民税についても定額減税が実施されており、本人は1万円、同一生計配偶者および扶養親族は1名につき1万円が住民税から控除されます。
この方の場合であれば4万円(本人1万円、配偶者1万円、お子様1万円×2名)の定額減税が受けられますので、定額減税後の所得税は以下となります。

定額減税後の住民税:49万5000円ー4万円=45万5000円
 

年収1000万円の方の手取り額は約758万(令和6年)

それでは、年収1000万円の方の手取り額はいくらになるのでしょうか。社会保険料、所得税、住民税を年収から引くと以下になります。

1000万円(年収)-90万4020円(厚生年金保険料)-59万324円(健康保険料)-6万円(雇用保険料)-40万8300円(所得税)-45万5000円(住民税)=758万2356円

まとめ

いかがでしたでしょうか。年収1000万円と聞けばかなり高収入のように思えますが、計算してみると、社会保険料や税金で約242万円引かれ、手取り額は約758万円とかなり少なくなることが分かりました。

日本の税制は累進課税と呼ばれ、所得が多くなれば税率も上がります。つまり稼いでいる人には税金を多く負担してもらおうというわけです。

なお、所得税よりも厚生年金保険料が多いことに驚かれたのではないでしょうか。しかしながら厚生年金保険料は、将来の生活を支える老齢厚生年金、病気やけがで障害が残った場合の障害年金、万一亡くなった場合、遺族に支払われる遺族年金など、ご自身や家族の生活保障の意味合いがある公的保険料と考えれば納得もいくかと思います。

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