亀山早苗の恋愛コラム

私にとっては天職だけど…専業主婦は時代遅れ?「暇でいいわね」と貶められる存在なのか?

専業主婦が天職だと思っている。けれど、共働き家庭が増える今の時代、専業主婦は羨望の的なのか、はたまた「暇でいいわね」と貶められる存在なのか。

亀山 早苗

執筆者:亀山 早苗

恋愛ガイド

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人には向き不向きがある。だが、自分が向いていると思って続けていることが他者から見ると時代遅れになっているのかと不安に感じる人もいるようだ。今の時代、専業主婦は羨望の的なのか、はたまた「暇でいいわね」と貶められる存在なのか……。
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周りから悪意を感じることもある

「私は昔から家庭内のこまごました仕事が大好きなんです」

ルミさん(39歳)はそう言う。共働きの家庭で育ったため、小学校中学年から4歳離れた妹と両親のために夕飯を準備していた。高校時代は「家事を研究、実践するクラブ」を教師と一緒に立ち上げたほど。

「家事の中でも特に料理と裁縫、掃除が好きですね」

大学の家政学部に進学、管理栄養士の資格をとったが、就職には気乗りがしなかった。

「人間関係に自信がなくて。外に出て働くことも向かないと思っていました。でも就職しないわけにもいかないから、資格を生かして、ある施設で仕事をするようになったんですが、やはり体調を崩してしまい3年で離職。家で家族のために家事万端を担うことにしました」

両親から預かった生活費をもとに、いかにおいしいものを作れるか工夫した。家族の洋服の手直しやリフォームも手がけた。毎日、家にいて今日はどんな料理を作ろうか、家族のために何かできることはないかと考えるのが大好きだった。

「うちはみんな淡々としていて、それほど仲良し家族でもなかったんですが、それでも身近な人たちに喜んでもらえばうれしい。特に妹はアレルギーがあったので、職場にお弁当を持たせていました。そのうち、父も母も作ってほしいと言い出して。やりがいがありました」

両親と妹からは月々、少しだが報酬をもらっていた。報酬の有無より、好きなように家事ができるのが喜びだったという。

「でも20代後半になると、両親は世間体を気にし始めた。『あなたは家事が得意なんだから、早く結婚したほうがいい』と言われるようになったんです。仕事をしていない20代を近所の人たちがどう見ているのか、母は妙に敏感になっていました」

そこで親戚から見合い話が持ち込まれた。結婚したいとは思わないが、実家にいるよりもっと自由に家庭内をマネジメントできるかもしれないとは感じたという。
 

子育てと家事万端が天職

見合いをしたのは、ルミさんが28歳のとき。相手は8歳年上、有名企業で働く男性だった。

「ニーズが合ったんですよね。彼は仕事以外、何もしたくない。家庭のことはすべて妻に任せたい。私は家庭のことはすべてやりたい。ただその一点で、1度会っただけで彼から結婚しましょうと言われました。私も異論はなかった」

結婚と同時に中古マンションを購入した。手続き等は夫がしてくれたが、インテリアはすべてルミさんの好みに統一。夫は何一つ相談に乗ってくれなかった。ルミさんにとってはそれがありがたかったという。

結婚してすぐ妊娠、29歳のときに長女を出産、2年後に長男、その3年後に次女を産んだ。現在、10歳、8歳、5歳に成長した。

「5年前は悲惨でしたよ。5歳、3歳、0歳の子を抱えて家事すべてやっていたんですから。たまに義母が手伝ってくれました。大変だけど、だから嫌になるということはありませんでしたね。子どもたちのめんどうをみながら、夫の好物を作ったり、誰かの誕生日にはケーキを焼いたり。もちろん思い通りにいかないこともたくさんあったけど、それほどストレスを抱えたという記憶はないんです」

結婚して10年たったとき、夫が初めて「会社で後輩から、いかにワンオペが大変かを聞かされたことがあるんだけど、あなたは一度も文句を言わなかったね。ありがとう」と頭を下げたという。

「私こそ、好きなことができる毎日はありがたいと思ってると返しました。夫は『今どき、僕たちは時代を逆行するような生き方をしているのかも』と言っていましたが、私は自分に向いているのは今の状態だと思っています。学生時代の友人には最近、『そろそろ仕事をしたら?』と言われるんですが、正直言って、外で働きたくない。無理ですから」

笑いながらそう言うルミさんだが、近所には仕事をしながら子育てをしている女性も多い。中には「いいわね、専業主婦で」「時間がありすぎて困らない?」と嫌味交じりに言ってくる人もいる。だがルミさんは気にしないことにしているという。

「一時期は、私は外で働くことができないダメな人間だと思っていたこともあります。でも今はもう、人の評価はどうでもいい。私は私にできること、向いていることをしていくしかありませんから」

いつか子どもたちが自立していったとしても、「家事はなくならない」と彼女は笑う。

「そのときもし孫がいれば、孫の洋服でも作りたいですね。男女問わず、いろいろな人がいていいと思うんです。外でバリバリ働いて一生独身だっていいし、専業主夫がいてもいいし。それぞれできること、向いていることをやれるのがいちばん幸せなんだと思う」

今日はこれからクッキーを焼くんですと、彼女はいそいそと帰宅していった。
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