お弁当に緑色の葉っぱ「バラン」を添える
お弁当を作るとき、メインのおかずをお肉にすると全体的に茶色っぽくなり、地味なお弁当になってしまいますよね。せっかくお弁当をつくるのなら、彩りを添えて、おいしそうに見えるように工夫したいものです。
お弁当に取り入れたい彩りは、「赤」「黄」「緑」の3色。「赤」はミニトマトやにんじんなど、「黄」は卵やかぼちゃなど、「緑」はアスパラガスやブロッコリーなどがあります。この3色をバランスよく取り入れるとよいのですが、配置も重要です。肉料理の隣に添えたとき、肉料理が最もおいしそうに見えるのは、何色でしょうか? 答えは「緑」です。
「茶色」と「赤」、「茶色」と「黄色」を隣り合わせすると、類似色相の組み合わせとなります。「茶色」よりも「赤」や「黄」の方が鮮やかなので、メインの肉料理を引き立てる色としては、やや不向きです。「茶色」と「緑」を隣り合わせにすると、お互いの色みがより鮮やかに見えます。肉料理の赤みが強調されるので、肉料理がおいしそうに見えます。
このような色の組み合わせを、「補色対比」「彩度対比」と呼びます。色相環で180°前後の関係となる色を組み合わせると、単色の時よりも彩度(鮮やかさ)が高く見えるからです。
お弁当の仕切り「バラン」のルーツは「葉蘭」
お弁当の盛り付けに、カップやバランなどの仕切りを用いるのが一般的です。ギザギザの山形にカットされた緑色のバランは、幕内弁当など和風のお弁当との相性がぴったりです。お刺身やお寿司などにも用いられているように、赤みのお魚をおいしく見せる効果もあります。バランは単色の緑ではなく、縦方向に濃い緑や黄色の線が入っています。ポリエチレン製のバランが普及する前は、葉蘭や笹の葉などを、料理の仕切りや飾りとして用いていた名残りのようです。葉蘭や笹の葉に似せるために、表面のツヤや筋を再現しようと試みたのでしょう。
葉蘭はユリ科の植物で、常緑で長さ50センチほどの大きな葉をつけます。ほのかな香りがあり、抗菌効果が認められています。笹の葉にはビタミンKやクロロフィルなどが含まれており、これらの物質には抗菌、防腐作用が認められています。葉蘭はその大きさを生かして、松型、海老型など、縁起のよい形に切って用いられてきました。身近な葉っぱを活用して、食事を目でも味わってきたのは、人間らしい営みのようにも思えますね。
四季折々の料理に彩りを添える「かいしき」
葉蘭や笹の葉以外には、木の芽、しそ、ひば、柿の葉、紅葉など、身近な葉っぱが料理の盛り付けに用いられてきました。これらを総称して「かいしき(掻敷、皆敷、苴)」と呼びます。
たとえば、お正月の鏡餅には、縁起のよいかいしきが見られます。葉の裏が白い「裏白」は、清廉潔白を意味し、新しい葉が出てから、古い葉が落葉する「ゆずり葉」は、家が絶えることなく続いていくことを願う気持ちが込められています。
おせち料理にも、さまざまなかいしきが用いられます。常緑樹の「松葉」は、不老長寿のシンボル。「南天」は、難を転じて福となすという願いが込められています。たくさんの実をつける「千両」は、商売繁盛や富の象徴として飾られます。市販のおせち料理が見栄えが良いのは、このようなかいしきが取り入れられているのも一因です。
この他にも、桜餅、柏餅、ちまき、柿の葉寿司など、四季折々の葉っぱを巻いた料理は、縁起もの、旬の味覚として親しまれています。
本物の葉っぱの代用品として考案されたバランは、日本人の食卓の変化に合わせて、創意工夫が見られます。大葉、パセリ、レタスなどにそっくりなもの、ピンクや黄色などカラフルなもの、キャラクターやおしゃれなデザインが施されているものなど、種類も豊富になってきています。皆さんもバランを活用して、食事の彩りを工夫してみませんか?
【関連記事】