亀山早苗の恋愛コラム

「まさか自宅で、夫は誰と…?」お盆のたびに苦しくなる、6年前に見てしまった不倫現場

夏の帰省シーズンは不倫が増えるような実感がある。そしてまた、「見つかる」ことも多い。

亀山 早苗

執筆者:亀山 早苗

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夏は開放的な気持ちになるからか、あるいは帰省してかつての友人や元恋人などに会う機会が多くなるせいか、不倫が増えるような実感がある。そしてまた、「見つかる」ことも多い。
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この時期になると過去の傷が疼く

6年前の夏休みに夫の不倫が発覚したというミズキさん(46歳)。

「今も思い出したくない過去です。当時、9歳と6歳の子を連れて、私の実家に帰省したんです。子どもたちが田舎で遊びたいというので、私も1週間ほど休みをとりました。夫は仕事が多忙だからすぐには来られないけど、3日遅れくらいで来るはずだった」

ところが子どもたちを連れて帰った翌日の朝、勤務先から電話があった。取引先とのトラブルが生じ、どうしても出社してほしいという上司からの頼みだった。

「その仕事は私と同僚がふたりで専任としてやっていたんです。同僚は急病で入院中だったので、上司は本当に困ったみたい。申し訳ないと電話口で頭を下げているのがわかるような感じでした。私も人任せにはできないから、今すぐ帰ると言うしかなかった」

幸い、子どもたちはミズキさんの両親といとこたちに囲まれて楽しそうだったので、「なるべく早く帰るからね」と言い聞かせた。

「新幹線の中でも仕事をしながら帰京して会社に直行。上司とともに取引先に出向いて、いろいろ説明したり今後の方針を打ち合わせたり。若干、トラブルはあったけど、かえって雨降って地固まるという感じになってホッとしました。朝から何も食べていなかったので、上司がごちそうしてくれて。ほろ酔いになったところで、そうだ、今日は自宅に帰ろうと夫に電話したけどでなかった」

そのまま自宅に直行した。そしてミズキさんは夫の不倫現場を目の当たりにしてしまったのだ。
 

まさか自宅で……

マンションの玄関にキーを差し込み、ドアを開けると見慣れないサンダルがあった。

「誰か来てる。夫の妹かなと思ったんです。その瞬間まで、夫が不倫しているなんて思ったこともなかった」

リビングへ入るとテーブルの上にワイングラスやピザの残骸があった。そのあたりでミズキさんを嫌な予感が襲う。リビングに続く寝室のドアを開けるのが怖かった。近づいて、中から怪しい声が聞こえたとき、嫌な予感が怒りに変わった。

「思い切りドアを開けました。すると夫婦のベッドで何かがうごめいていた。頭に来たので、寝室入り口に置いてある懐中電灯で思い切り照らしてやりました。ドアを開けても気づかないのが許せなかった」

LEDライトに照らされて、さすがにふたりは気づいて身を起こした。女の顔が見えた。夫の部下だ。その年の正月、何人かで家に遊びに来たうちのひとりだった。

「やけに夫にベタベタしている30歳くらいの女がいたんですよね。そのときは夫を『モテるじゃない』とからかったんですが、こんなことになるなら、もっと牽制しておけばよかったととっさに思いました」

夫は彼女の身体に自分のシャツをかけた。そのシャツをミズキさんは取り上げた。そのへんに放ってあった彼女の服をさらに遠くへ放り投げ、「さっさと着て帰りなさいよ」と言った。彼女は全裸のまま身をかがめて、ミズキさんの前を通った。そこを通せんぼした。

「ねえ、どういうつもりでこういうことをするわけ?と全裸の彼女を前に私はめいっぱい嫌味な感じで声をかけました。どうしたら相手の致命傷になるだろう、心を傷つけることができるだろうと考えていた。嫌な女ですよね、私」

相手はすみませんと小声で言った。夫が「彼女が悪いんじゃない、誘ったのはオレだよ」とつぶやいた。

「既婚者に誘われて、妻の顔も知っているのに、その自宅にのこのこやってきたわけね。どんな気持ちで来たのと、さらに彼女に迫りました。彼女が泣き出したので、『泣けばすむってものじゃないけどね。損害賠償、用意しておいてね』と言い、彼女が服を着るのをじっと見ていました」

彼女が帰ると、今度は夫を責め立てた。なぜ家に入れたのか、彼女とはいつからつきあっているのか、離婚するなら子どもには会わせないからそのつもりで。汚れたベッドは粗大ゴミに出します。以上、と言って彼女は家を出た。

「家を出ると涙が止まらなかった。その日は駅前のビジネスホテルに泊まりました。夫からは電話やメッセージが来ましたが、私は連絡をとらなかった。翌日、再び実家に向かいました」

両親に言うわけにもいかない。子どもたちの前では笑顔を絶やさなかったが、ひとりになると心が乱れた。夫と相手の女性への怒りもあったが、自分がひどい態度をとってしまったことへのショックもあった。

翌々日、夫がやってきた。来ないと思っていたので意外だったとミズキさんは言う。

「うちの両親がまた、夫のことが好きなんですよ。下にも置かないもてなしをして、夫も調子に乗って、自分の失敗話などを延々として。両親も親戚も大笑い。午後からは親戚の子も含めて子どもたちを連れて、虫取りをしたり川で遊んだり。夫と積極的に話そうとしなかったのが母にバレていて、『なんかあった? あの人は根はいい人だと思うよ』って。それまで確かに共働きでも、私が思いきり仕事をできたのは夫の支援があったからこそ。夫はときに自分を犠牲にしても私が働きやすいようにしてくれましたから」

だからといって不倫を許すわけにはいかない。ぶすっとしているミズキさんに、その夜、夫は「軽いノリで誘ってしまった。申し訳ない」と頭を下げた。そんな簡単に謝るくらいなら不倫なんてするなとミズキさんは夫に殴りかかった。夫は黙って殴られていたという。


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