青色、紫色の目薬は? 主成分は「アズレンスルホン酸」
花粉症などの目のかゆみや充血に効く目薬は?
「ビタミンB12の目薬は赤色!実は色で分かる点眼薬の成分・効能」で、目薬についた赤・黄・青のきれいな色は、含まれている薬効成分そのものの色であることを解説しました。つまり、色の元になっている成分に関する知識があれば、目薬の色から自分が求める目薬を選ぶこともできるというわけです。今回は、青紫色の目薬をとりあげます。
薬局で買える市販薬の目薬(一般用医薬品)のうち、青~紫色の目薬は、
- ロート製薬の『ロートアルガードクールEX』
- ゼリア新薬の『エーゼットアルファ』
- 佐藤製薬の『ノアールAZ』(※現在は取り扱い中止)
抗炎症作用、組織粘膜修復促進作用があるアズレンスルホン酸
アズレンスルホン酸には、抗炎症作用、組織粘膜修復促進作用があり、これを含む目薬は、花粉症などの目のかゆみや充血に用いられます。なお、アズレンスルホン酸が使われているのは目薬だけではありません。目薬に配合されるようになる前に、胃薬やうがい薬として応用されていました。たとえば、風邪や胃痛で病院を受診した時など、胃薬として「マーズレン」という名前の青紫色の錠剤もしくは顆粒剤がよく処方されます。風邪薬の中に胃を荒らす成分が入っているときに、胃炎が起こるのを防ぐ目的で併用されることが多いです。このマーズレンの薬効成分は、まさにアズレンスルホン酸です。
薬局の店頭で売っている一般用医薬品のうち
- 大正製薬の『パブロンうがい薬AZ』
- 白金製薬の『パープルショットうがい薬F』
- 『浅田飴AZうがい薬』
カモミール(カミツレ)の研究から生まれたアズレンスルホン酸
白と黄色のかわいらしい花でおなじみのカモミール(カミツレ)。青色の目薬との関連は意外に思われるかもしれません
アズレンスルホン酸は、別名「水溶性アズレン」とも呼ばれ、実は、ハーブの一種であるカモミールの研究から作られた薬です。
カモミールは、和名で「カミツレ」(漢字では「加密列」と書く)とも呼ばれ、春先に白と黄色のかわいい花を咲かせるキク科の一年草で、みなさんもきっと春の野原で見たことがあるはずです。有名なハーブの一つとして、ヨーロッパ南部や東部では古くから各種炎症性疾患に対する民間薬として用いられてきました。1863年にイギリスのジョージ・ウイリアム・セプティマス・ピエスは、カモミールを加熱蒸留して得られる精油の分析を行い、分離された青色の油をアズレンと命名しました。その名はスペイン語で「青い」を意味するazul(アズールと発音)に由来します。
ちなみに、アズレンは生のカモミールには含まれていません。植物に含まれる「テルペン」という物質が熱によって化学変化を起こし、青いアズレンができるのです。
また、フランス語のazurは「紺、青」を意味し、南フランスの風光明媚な保養地として知られる海岸一帯のコート・ダジュール(フランス語:Côte d'Azur、日本語では紺碧海岸とも訳される)の名前にも含まれています。
アズレン(精油)の詳しい分析によって同定されたカモミールの有効成分は、カムアズレン(カモミールのアズレンという意味)と名付けられました。1950年代には、カムアズレンの合成誘導体が検討された結果、その一つ「グアイアズレン」に優れた抗炎症作用が見出されました。さらに、グアイアズレンの水溶性誘導体として合成されたアズレンスルホン酸が、消炎を目的として広く臨床応用されるようになりました。日本では1960年に発売され、現在までに、胃潰瘍・胃炎治療用の配合剤や、口腔内炎症治療用のうがい薬、そして花粉症などに伴う炎症を鎮める目薬などが市販されるようになったというわけです。
購入時にちょっと注意! 目薬に多い青い容器
薬局に行ったときに青紫色の目薬を見つけたら、白と黄色のかわいいカモミールの花を思い出してみてください。また、目薬によっては、中の液体は透明なのに、外の容器が青色のものもあります。目薬は薬効成分の効き目以外だけでなく、いわゆる「さしごこち」を重視する消費者も多いため、清涼感のある青色が好まれるのかもしれません。当然ですが、中に入っている液体に色がついていなければアズレンスルホン酸は含まれていませんので、ご注意ください。