MRIとは……レントゲンやCTとは違う、より安全な測定方法
CT検査とよく似ていますが、MRIの測定原理は全く異なります。CTではっきりわからない脳梗塞も発見可能です
MRIは、Magnetic Resonance Imaging(磁気共鳴画像法)の略ですが、CTと同じく、大きな筒状の装置の中に寝た状態で入るだけで、自動的に体の内部の撮影データを収集してくれます。そのためCTと区別がつかない人が多いと思いますが、その測定原理はまったく違うものです。
MRIの基礎となったのは、原子の「核磁気共鳴(Nuclear Magnetic Resonance、NMR) 」という現象の発見でした。ごく簡単に言ってしまうと、「磁場を与えられた状態の原子を構成する原子核に外部から電磁波を照射したときに、その原子核が固有の周波数の電磁波と相互作用(共鳴)する現象」のことです。と説明してもほとんどの方がすべてを理解することは不可能と思われますので、「電磁波をあてたときの反応によって、分子を構成している原子の種類や置かれている化学的環境の違いを知ることができる」と思っておけばいいでしょう。
1936年にオランダの物理学者 C・J・ホルテルがNMR信号の検出を試みたのが最初で、実際に成功したのは1938年アメリカの物理学者I・I・ラービが最初と言われています。この功績を称えられたラービは、1944年ノーベル物理学賞を受賞しました。また、スイスの物理学者フェリックス・ブロッホとアメリカの物理学者エドワード・ミルズ・パーセルがNMRスペクトルの測定方法に関する貢献を認められ、1952年ノーベル物理学賞を受賞しました。
NMRは化学分析に欠かせない技術になっていますが、これを人体の診断に応用したのがMRIです。組織中の水を構成している水素原子は、通常バラバラな動きをしていますが、磁力と微弱な電流を与えることで強制的に向きをそろえることができ、それが元のバラバラな状態に戻る時間(緩和時間)が組織中の原子の状態(たとえば体液内にあるか臓器内にあるか)によって異なるので、その緩和時間の分布を画像化すると、体内の臓器の形を描出できるというわけです。
全く体を傷つけることなく内部を見ることができる画期的な方法として、MRIは広く普及し、その技術の確立に貢献したアメリカのポール・ラウターバーとイギリスのピーター・マンスフィールドは、2003年のノーベル生理学・医学賞を受賞しました。
なお、MRIで得られたデータに対して様々な画像処理の仕方があり、目的に応じて使い分けられます。例えば、水素原子の縦方向への戻り時間(縦緩和=T1)と横方向の戻り時間(横緩和=T2)のうち、横方向の戻り時間を強調した画像(T2強調画像)では、水っぽい組織(腫瘍や梗塞)によって細胞が白く描出されますので、がんや梗塞によって細胞が腫脹した場所を見つけるのに適しています。
MRI検査のメリット・CTとの違い……脳梗塞や頭蓋骨近辺の病変も発見可能
MRIのメリットは、まず放射線を浴びなくてよいことでしょう。磁力と微弱電流を使うだけなので、健康被害の心配はないと考えられています。また、CTと同じですが、収集されたデータをコンピューターで再構成するため、思い通りの方向で切った断面をCGにして表示できます。また、CTのように骨は写らないので、頭蓋骨近辺の病変も撮影して検査することができます。
CTよりも、組織の細かいところまで描出されるので、CTではっきりわからない脳梗塞もMRIでは簡単に見つけることができます。また、造影剤を使わずに血管を写すことができるので、脳動脈瘤の経過観察などにも使えます。