人間関係

またも失言「女性はもっと男性に寛大に」。少子化は「女性が産まないせい」と言わんばかり

またも失言。街頭演説で、少子化問題に触れた流れで「女性も男の人に寛大になってもらえたら」と述べた桜田義孝元五輪相。あたかも「女性が結婚を拒否しているから産まない」のがいけないと言わんばかりだ。

亀山 早苗

執筆者:亀山 早苗

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自民党の桜田義孝元五輪相(72歳)が、またも失言。街頭演説で、「男の人は結婚したがっているが、女の人は無理して結婚しなくてもいいという人が増えている」と述べ、「女性も男の人に寛大になってもらえたら」と言ったのだ。
 

まるで「少子化は女性のせい」と言ってるみたい

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その前に「日本の少子化は大問題」とも言っており、あたかも「女性が結婚を拒否しているから産まない」のがいけないと言わんばかり。しかも、「言いづらいことですが」「問題発言かな」という言葉も織り込んでいることから、ただの失言よりタチが悪いという声もあがっている。

このお方、以前にも「子どもは最低3人くらい産んでもらいたい」と述べたことがある。水泳の池江璃花子選手が白血病を公表した際には、「金メダル候補だから、がっかりしている」とも言った。とにかく、人の気持ちを想像する能力に欠けていること、公共の場での発言が居酒屋の飲んだくれと同じ状態になっていることが、信じられない。近所のおっさんだったら、悪い人ではないのかもしれないが、立場を考えないのだ。

確かに「無理して結婚しなくてもいい」と考える20代・30代は増えているが、それは女性に限った話ではない。男性も同じこと。そうであれば、通常は「制度に問題があるのか」「結婚したいと思えない原因は何か」と考えるものだ。特に女性が結婚したがらないのであれば、結婚後の生活において女性に負担がかかりすぎるのがわかっているからではないか、と想像が及ぶのが筋である。

単発的に出産時の費用援助を増やすとか、子どもの医療費を無料にするとかいうことも大事かもしれない。だがそれよりもっと重要なのは、「普通に働けば普通に生活できる社会」を作ることではないだろうか。1人で生きていくことができれば、誰かと一緒に生きていく余裕が生まれるのだから。大昔のように「一人扶持は食えないが二人扶持は食える」という時代ではない。2人なら共倒れする時代なのだ。
 

結婚のメリットがわからない

「私も、無理して結婚する必要はないと考えているひとりです。3人姉妹の末っ子なんですが、姉は2人とも離婚しています。長姉はエリート夫のDVで、次姉は夫が失業したのにワンオペが続いて子どもを連れて逃げました」

そう言って苦笑するのはアキコさん(35歳)だ。長姉がエリート夫と結婚したときは、周囲も驚きをもって祝福したそうだが、結婚後、夫はすぐに本性を見せた。妊娠した姉に手をあげ、出産後も「おまえは誰のおかげで生活できているんだ」と暴言を吐いた。かと思うと泣いてすがって「捨てないでくれ」とも言った。最後はアキコさんの両親も介入、無理矢理引き剥がすようにして離婚させたという。

次姉の場合は、2人とも非正規で働いていた。2人で働けば何とかなると思ったが、夫が失業、落ち込んだ彼は働く意欲をなくした。

「私自身も非正規でしか働く場がない。だからわかるんです。非正規雇用だと未来への希望が描けないということが。義兄はそれでメンタルをやられた。子どももいたので、次姉はそんな夫を支えきれなかった」

長姉は実家に戻り、次姉は実家近くにアパートを借りて生活している。長姉はアルバイト、次姉は派遣社員として働いているが、経済的には親を頼りにしている面もある。そんな姉2人を見ているアキコさんは、「1人でひっそり暮らしています」とつぶやく。

「結婚してもいいことなんてない、女性に負担がかかるのが目に見えているし、非正規だろうと正規だろうと、もはや男性とうまく暮らしていくこと自体に無理があるのではないかと思います。周りの友人たちを見ても、なかなか対等な関係を築いていくのはむずかしそうですね。男性の意識が変わってくれないと。女性たちはほぼ諦めに近い状態なのではないでしょうか」

無意識の領域で、女性は「男性のメンツをつぶしてはいけない」「夫を立てなければいけない」と考えがちだ。幼い頃から刷り込まれたものがあるのだろう。

「男とか女とか、そういうことはどうでもいい。対等な関係を作らなくちゃ」と言っていた女友だちが、「女の不倫だけはダメよ。夫の顔を潰すから」と言い放ち、いつもの主張と違うと周囲を驚かせたことがある。それなら夫の不倫は妻の顔を潰すことになるはずだが、彼女はそうは考えていないらしい。

結婚も出産も、国が介入することではなく、個人の選択である。個人が結婚したがらないのが現状である以上、国としてはどうにもならないだろう。

ただ、その裏に「男女間の亀裂と分断」があるとしたら、本当の意味での対等な関係とは何なのか、もう一度考えていく必要があるのではないだろうか。
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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