預金・貯金

家計の金融資産額は2005兆円に。年度末では過去最高を更新

日本銀行が2022年6月27日発表した2022年3月末時点の家計が保有する金融資産額は、2005兆円になりました。ボーナス支給期の2021年12月末と比較すると10兆円の減少でしたが、年度末の残高としては過去最高を更新しています。2期連続して2000兆円を超えていることから、家計の金融資産額は新たなステージに入ったと考えてよさそうです。

深野 康彦

執筆者:深野 康彦

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家計が保有する金融資産額は2期連続の2000兆円突破

日本銀行が四半期ごとに公表している「資金循環統計」は、家計が保有する金融資産額をマクロの視点から観察していくには優れた統計データといえるでしょう。政府が政策を進める際に参考にするデータの1つだからです。岸田首相は資金循環統計から、現金・預金のウエートが多いため、NISAやつみたてNISAの拡充(制度変更)を行い、株式市場に資金を移行させて経済を活性化させようとしているのです。

少々話がそれますが、NISAやつみたてNISAを拡充しても、岸田首相が考える経済活性化にはあまりつながらないと思われます。なぜなら家計(個人)は、上昇しない日本株には辟易しており、資産形成(資産運用)を行うなら米国株という認識が浸透。投資信託の人気は米国株指数に連動するインデックスファンドに集中しているからです。NISAやつみたてNISAを拡充するなら日本株を買うために規制を行わないと経済活性化は絵に描いた餅になりそうです。

話を戻すと、2022年6月27日に日本銀行が公表した家計の金融資産額は、2期連続して2000兆円超えの2005兆円となりました。2021年12月末の残高が2015兆円だったことから10兆円の減少ですが、年度末の残高では過去最高額を更新しています。残高が減少した要因は、12月がボーナス期であること、株式市場が軟調に推移していることなどがあげられます。

家計の金融資産額の内訳を詳しく見ていくことにしましょう。
 

株式は減少、投資信託は増加と真逆の動き

何かと話題になる家計が保有する現金・預金は、1年前と比較して2.9ポイント増加の1088兆円になりました。2021年12月末と比較すると4兆円の減額ですが、家計の金融資産額全体に対する割合は0.3ポイント増加の54.3%になっています。ただ、1年前と比較して増加率が3.0%を下回るのは、2020年3月末以来、2年ぶりのことです。増加率の鈍化は一過性なのか定かではありませんが、コロナ禍が落ち着いてきたことに伴うリベンジ消費、あるいは貯蓄から資産形成(投資)へ資金移動が起こっているのか否か注視していきたいところです。

株式は、日経平均株価が2021年12月末から2022年3月までに約3.4%下落したことから、1年前と比較して0.6ポイント減少の204兆円になっています。半面、投資信託は1年前と比較して10.4ポイント増加の91兆円となりました。投資信託は4四半期連続の2桁ポイントの増加となっています。世界的株式市場は、軟調に推移したものの、円安が急速に進行したことから為替差益がプラスに働いたことがその要因と考えられます。

ただ、株式、投資信託を合わせてもその残高295兆円と、なかなか300兆円を超えません。家計の金融資産全体に占める割合も14.7%しかありません。NISAやつみたてNISAの拡充で、株式・投資信託への投資が増えることが期待されていますが、多額の金融資産を保有する高齢者が大きく動くとは思えないのですが……。

保険は1年前と比較すると0.8ポイント増加の381兆円となっています。保険に年金、定型保証を加えるとその残高は540兆円まで増加し、家計の金融資産全体に占める割合は26.9%になります。円安を背景として外貨建て保険の売れ行きが伸びているとも見聞きするため、2022年6月末の資金循環統計では保険・年金・定型保証が増えているかもしれません。

一方、減少しているのは債務証券、いわゆる国債や社債などです。個人向け国債の変動10の金利は上昇したものの、社債の発行は2022年1月~3月は4年ぶりの低水準となっています。その残高は1年前から4.2ポイント減少の26兆円となっています。

企業が保有する金融資産額にも触れておくと、1年前と比較して4.0ポイント増加の1253兆円と家計と同じく年度末では過去最高を更新しています。現金・預金も1年前と比較して1.5ポイント増加の323兆円とやはり年度末で過去最高を更新しています。余計なお世話かもしれませんが、経済活性化のためには家計の金融資産を動かすことも一理あるものの、企業が保有する金融資産をまずは動かすような政策を行うのが、政府の役目だと思います。

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