Q:夫が今月、60歳で退職します。個人年金保険の満期保険金を一括で受け取ってしまったほうがいい?
今回は編集部が設定した以下のケースに、専門家が回答します。「妻が今月、60歳で退職予定の夫の個人年金保険(終身)の受け取り方法について悩んでいる。一括で受け取るのと、分割で受け取るのではどちらが家計への負担が少ないかについて。
・夫の個人年金保険料515万円は一括で支払い。
・65歳時から個人年金保険の満期保険金を分割で受け取ることにすると、年額84万円。ただし65歳以降に、毎年、個人年金保険の満期保険金を分割でもらうと、2人分の国民健康保険料が増えそうで心配。
・満期保険金を一括で受け取ると1265万円ぐらい。ただし今年は退職前の夫の給与所得もあり、満期保険金と合わせるとかなりの税金を差し引かれそう。
・公的年金の受給額は、夫が約180万円、妻は70万円」
満期保険金の受け取り方で迷っています
A:個人年金保険が終身受け取りであれば、65歳以降に、分割で受け取ったほうが有利かと思います
このケースでは、個人年金保険の満期保険金の受け取り方で迷っているようです。結論からいうと、終身の個人年金保険とのことなので、長生きした場合の受け取り額を考えると、65歳以降に分割で受け取ったほうが有利ではないでしょうか?分割で受け取る場合は、年間84万円受け取れるとのこと。男性の平均寿命である約81歳を超えた場合は、65歳から分割で受け取ったほうが、一括で受け取るよりも多く受け取ることができます。
年間の受け取り額84万円×16年(65~81歳)=1344万円
65歳以降に、分割で受け取った場合、年間で受け取った額から支払った保険料分は必要経費として控除することができ、それ以外の部分は「雑所得」に分類されて、課税の対象になります。公的年金も受給開始するので、所得税や住民税が上がることを心配されているようですが、65歳以降の公的年金等控除額もありますので、課税対象となる所得自体は少額になるでしょう。
公的年金も雑所得になるため、個人年金保険の受け取りによって雑所得が多くなる分、税金や社会保険料の負担は上がる可能性は高いですが、満期保険金が65歳以降、終身で年間84万円ずつ受け取れるなら、長生きすればするほど、受け取り総額で有利かと思います。
個人年金保険の満期保険金を分割で受け取る場合の注意点としては、早く亡くなってしまった場合は不利となります。分割で受け取った場合の、保証期間があるかどうかを保険会社に確認してみましょう。
一方で、個人年金保険の満期保険金を一括で受け取る場合は、「一時所得」として分類されて、税額が計算されます。このケースでは、一時所得は350万円(※)となります。
※一時所得の計算式は(1265万円【一括で受け取る満期保険金】-515万円【払った保険料】-50万円【一時所得の特別控除額】)÷2=350万円
今、個人年金保険の満期保険金を一括で受け取ってしまうと、350万円の一時所得に、今年1年間、夫が働いた給与所得も加算されて課税されます。つまり満期金を一時金でもらうと、今年の所得税額は多くなる可能性が高いでしょう。翌年度の住民税と、国民健康保険料も、前年の所得を基準にしますので、負担が大きくなってしまう可能性があります。
住民税や社会保険料は自治体によって違います。市区町村役場の窓口に問い合わせてみることをオススメいたします。
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