究極の豊かさ、「お金の先の世界」を考えていきましょう
今の時代にもっと大切なものは何?
病気の蔓延や災害がいつ起きてもおかしくない時代を私たちは生きています。その中で、自分を守るのはお金しかないと、必死にお金にしがみつく人もいます。でも、どんなにお金を貯めたとしても、疫病にかかってしまったり、戦争に巻き込まれてしまったら、元も子もありません。お金は、生活し幸せに生きるために必要なものであることは変わりがありません。ですが、究極の時代になると、私たちはお金の先、もっと大事なものは何かという、本質が問われることになります。
それは「本当の豊かさ」とは何か?「本当の幸せ」とは何か?ということでしょう。
1円というお金には人の生活やストーリーが張り付いている?
『稼ぐ人はなぜ、1円玉を大事にするのか?』(サンマーク出版)で、私はお金持ちの人ほど1円玉を大切にするということを書きました。1万円も1円もお金であることには変わりません。お金を大切に扱う人は1円もないがしろにはしない。ですが、あの本で言いたかったことは、1円それ自体が大事なのではなく、1円の先に広がっている世界が大事だということでした。
例えば1円を稼ぐのに、仕事を頑張って残業したとか、お金を貯めるのにお釣りの小銭を少しずつ貯金したとか。1円というお金には人の生活やストーリーが張り付いているのです。1円そのものではなく、その生活やストーリーを私たちは大切にする。それを大切にできる人だからこそ、結果としてお金を大事にできるし、お金から愛されている。
お金から自由になれる人こそ、お金に愛される
言葉を変えるなら、逆説的ですが「お金が寄ってくる人は、お金から自由になれる人」だということです。本当の豊かさとは、年収ゼロになっても生活していけることだと思います。例えば私が年収ゼロになったとしても、私が税理士としてのスキルとキャリアを磨き、ある人の仕事を手伝ったとき、その人が「じゃあ食事をご馳走します」と言って食事代を出してくれる。そんな人が周りに増えたらお金がなくても生活できますよね。これは私の妄想の世界です。実際にそんなことが現実になるとは思いません。ですが、本当の豊かさとは、お金がなくても生きていけるような「自己価値」があり、それに対しての「自己確信」があることだと思います。
そういう人は、今の厳しい時代のような世の中になっても、慌てたり焦ったりはしません。危機の時こそ、自分を磨き上げるチャンスとして捉えているからです。
経営状態が悪化すると追い込まれ人格が変わる経営者もいます。そういうときに自分だけが生き残ろうとするのか? むしろ多くの人と痛みを分かち合い一緒に頑張ろうとするか? 税理士として多くの経営者の方々を見ていると、後者の人達のほうが、結果的に危機を乗り越えている人が多いのです。
今のような不安と危機の時代こそ、仕事や生活に希望と面白さを見出し、さまざまな知恵を出し、他者と痛みを分かち合い、得たものを共有できる人は輝いて見えます。そういう人にはさらに人が集まり、知恵が集まり、さまざまな力が集まります。お金とはそれが形になった一つにすぎません。
お金は大事なものであることに変わりはありませんが、お金の先の世界を見ることができるかどうかが、もっとも大事なことなのです。
【亀田さんのインタビューはコチラ】
亀田潤一郎さんが語るお金持ちと貧乏な人の財布の違い
教えてくれたのは……
亀田潤一郎さん
亀田潤一郎税理士事務所。税理士。学生時代、中小企業の経営者だった父親の会社が倒産。その悲劇を目のあたりにする。一時はホームレス状態でうつ病になるが「中小企業の経営者をお金の苦労から守りたい」という使命感から、苦節10年を経て税理士になる。数字に苦手な経営者に向けて預金通帳を活用した資金繰りをよくするためのコントロール術などを指導する。ほとんどの顧問先から高評価を得る。数々の経営者と付き合う中で、持続的に成長している企業の経営者の財布の使い方に共通点があることを発見。それを実践したところ年収が飛躍的に伸びた。その経験をまとめた『稼ぐ人はなぜ、長財布を使うのか?』(サンマーク出版)がベストセラーに。そのほか『通帳は4つに分けなさい』(経済界)、などがある。
取材・文/本間大樹