一説には、プロカメラマンである夫は日常的に安達さんの写真を撮影、彼女自身も撮られることでいい関係を築いてきたのだが、その関係を思春期の長女に疑問視されたことが根底にあるといわれている。 「何か」を介在させることでつながる夫婦の関係が悪いわけでもおかしいわけでもないが、10代の少女から見ると「何かヘン」と感じてしまったのかもしれない。一般的にもそういうことはありえそうだ。
友人同席でないと「保てない」夫婦関係
「学生時代からの親友マリが再婚すると言ったのは6年前。彼にも会わせてもらったんですが、お互いに40歳を目前にして、落ち着いたいい雰囲気でした」そう言うのはユキエさん(45歳)だ。ところがふたりはなかなか結婚しない。それから2年たって、ようやく婚姻届を出したと報告を受けた。
「でもそれからの関係もなんだかおかしかったんですよね。ふたりはしょっちゅう友人を呼び出して一緒に食事をする。私もよく呼ばれました。そして私の前で大げんかを始めるんです。かと思うと、急にイチャイチャしたりして。こっちだって一緒に食事をしていて愉快ではありません」
いったいどういうことなのかとマリさんに尋ねてみたが、明確な答えは返ってこなかった。周りの友人たちの間では「自分が一緒のときはやたらいちゃついていた」とか、「私が一緒のときはマリが途中で怒って帰ってしまった」とか、さまざまな話があり、どれが真実なのかもわからなかった。
「私も何度も一緒にいましたが、しばらくたって、このふたり、ふたりきりではいられないのではないかと思ったんです。ふたりだと間が持たないというか、ふたりだけだと話が弾まないというか……」
マリさんに確認すると、「そんなことは意識していない」と言われたが、ふたりは明らかに人の目を気にしながら愛をささやき、人の目を気にしながらケンカしているとしか思えなかった。ユキエさんは、不思議な思いを抱きながら、そういうこともあり得るのかもしれないと無理矢理納得していたという。
「学生時代からの友だちだから、あるがままの彼女を受け入れたかったんです」
突然の離婚、そして明かした本当のこと
1年前、そんなマリさん夫婦が突然、離婚した。そしてマリさんはようやくユキエさんに“真実”を話してくれたという。「ふたりとも再婚で、それぞれに結婚へのトラウマみたいなものがあったようですね。マリは前夫に浮気されていたし、マリの夫は前妻に『あなたの存在自体がうっとうしい』と言われたことで傷ついていた。でもふたりは惹かれ合った。惹かれ合ったのに、心のうちをさらけ出せない。そこに他人が同席していると、何らかのコントロールが働いたり、逆に素が出せたりする。だからやたらと友だちを呼んでいたそうです」
ただ、あるとき、「友だちを介在させないと関係が保てないのはおかしい」とマリさんが気づいた。そこで「ふたりで向き合おうよ」と提案、夫もそれに同意したものの、ふたりきりだとどこかぎこちないのだそう。
「そのうち、ふたりとも疲れてしまって、それぞれの友人たちと会うようになったり、ひとりの時間を楽しんだりするようになったそうです。そしてマリは、ひとりで過ごす時間が長くなればなるほど『居心地がいいのよ。私はやっぱりひとりでいるのが向いているんだと思う』と結論を出した」
そして離婚。だが離婚届を出して別居したとたん、ふたりは急に気が楽になったのか、ときどきデートするようになったのだという。
「いったい、あのふたりはどうなっているんだと周りは半分、呆れています。でも、距離の取り方が定まらないふたりっているのかもしれないなと私は少しわかるような気がしました。私自身も、バツイチで、次の恋をしたいと思いながらもなかなか深入りできないから……」
離婚しているから怯えているわけではない。人の気持ちを慮ることができるからこそ、距離の取り方がわからなくなる。そんなこともあるのではないだろうか。