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日本はいま「スタグフレーション」状態か? 円安・物価高騰、どう抜け出す?

円安・物価高騰が続く現在の日本は、スタグフレーションの状態なのでしょうか? スタグフレーションとは何か? また、過去のスタグフレーションはどのような状態だったか、今求められる対応などを解説します。

伊藤 亮太

執筆者:伊藤 亮太

株式・ファイナンシャルプランナーガイド

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日本はいま「スタグフレーション」か。円安・物価高騰への対策とは

スタグフレーションのリスクが日本でも高まってきている。このような論調が見受けられるようになってきました。このスタグフレーションとは一体何か? また、過去のスタグフレーションはどのような状態だったか、今求められる対応などを解説します。
 

スタグフレーションとは?

景気が後退していく中で、物価上昇が進むことを「スタグフレーション」といいます。スタグフレーションは、景気停滞を意味する「スタグネーション」と、物価上昇を意味する「インフレーション」の2つの用語を組み合わせた造語です。

過去20~30年の日本を振り返ると、景気停滞により消費・投資といった需要が落ち込み、その結果物価が下がるデフレーションが進みました。しかしながら、景気が悪い中でも物価が上昇することもあり、そのようになるとスタグフレーションが発生することもあるのです。
 

日本は今「スタグフレーション」状態か?

実はいま、日本でもスタグフレーションが始まっているのではないか、という論調が見受けられるようになってきました。実感のある方も多いと思われますが、足もとでは物価が上昇しています。主な理由として、パンデミック、円安、ウクライナ情勢を挙げることができます。

パンデミックにより供給混乱が生じ、そもそも物価上昇が生じていた中で、アメリカの利上げに伴う円安ドル高、ロシアのウクライナ侵攻による原油価格の上昇も重なりました。今後もこれらの理由から日本国内で物価が上昇する可能性は高まっています。

新型コロナウイルスの感染拡大状況によるところも大きいものの、景気が足踏みし、物価上昇に伴う消費縮小等も生じる可能性もあることから、場合によってはスタグフレーションに陥ることもあり得ます。

現状はまだ、はっきりスタグフレーションとはいえないと考えます。コロナ禍で溜まっていた消費エネルギーが今後も拡大すれば、景気縮小に至らない可能性もありますし、過去最高の利益を叩き出している企業も多く見受けられることから、実際の状況は慎重に判断していく必要があります。
 

日本はオイルショック期にスタグフレーションを経験している

日本でも過去、スタグフレーションが発生した時期があります。それは、1970年代のオイルショックの時です。当時はオイルショックによる原油価格高騰により、1974年には消費者物価上昇率が25%に迫るほどの上昇となりました(※1)。

これはコスト上昇に伴うインフレで、「コストプッシュ・インフレーション」と呼ばれます。本来の好景気で生じるインフレは、「ディマンド・プル・インフレーション(需要拡大によるインフレ)」。オイルショック期および現在のケースは悪いインフレで、景気を冷やす可能性が十分にあります。
 

一度スタグフレーションになったらどう抜け出すのか

スタグフレーションの状態になったらどう抜け出すのでしょうか。まず、インフレ対策を行う必要があります。既に原油価格上昇に対しては、政府による価格抑制が行われ、補助金の支給、石油国家備蓄の放出も行われています。

またインフレ対策では、一般的に金融引締め政策が有効となります。アメリカは既に利上げで対応しています。とはいえ、為替や株価などに影響を与える点も考慮しなければなりません。

そして、財政政策による需要押し上げといった方法も考えられます。コロナ禍で行われたGoToキャンペーンなどもこれのひとつといえます。ただし、これらはあくまでも一般的にいわれる方法であり、その時々の状況により何を行うべきかは変えていく必要があるでしょう。

私たち個人が対応するには、資産運用が考えられます。いまは短期的には、景気後退対策よりインフレ対策を重視すべき時期かと思います。

株価変動も大きくなっていることから、株式、債券、外貨、金など幅広く分散し、インフレ対策を行うと同時に、株価などが大きく下がったときに投資拡大ができるように現預金での備えもしておくべきでしょう。


【参考】
※1:消費者物価指数半世紀の推移とその課題(参議院)
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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