「資産所得倍増プラン」とは? 打ち出しの意図を解説
これは、日本の個人金融資産約2000兆円について、貯蓄から投資への動きを促すものと推測されます。なぜこのような考えを示すに至ったのでしょうか。また、以前打ち出された「所得倍増計画」はどうなっているのでしょうか。資産所得倍増プランの意図と、実現可能性などについて解説します。
資産所得倍増プランとは?
「資産所得倍増プラン」と聞くとなにか全く新しい計画を打ち出し始めたように思うかもしれませんが、この考えは実は今に始まった話ではありません。以前から「貯蓄から投資へ」というフレーズは使われており、聞いたことのある方も多いのではないでしょうか。これは、日本の家計金融資産において、預貯金が占める割合が半分(2021年12月末時点で全体の54.0% (※1))と偏っていることから、その構成比を見直そうという考えに基づいたものです。
「米国では家計金融資産がこの10年で3倍、イギリスでは2.3倍になったのに、日本では1.4倍にしかなっていない」
岸田首相のこの指摘は、日本の家計金融資産の大半が預貯金のために増えていかないという視点から来たものです。投資の面を拡充し、家計金融資産を増やすことで、豊かな社会構築へ。おそらくこのような側面から、岸田首相は「資産所得倍増プラン」を掲げたのではないかと思われます。
以前打ち出された「所得倍増計画」とは。達成されたのか
資産所得倍増プラン。何やら似たような言葉を以前にも聞いたことがあるな、そのように思われた方も多いことでしょう。皆さんは「所得倍増計画」を思い出したと思います。1960年に池田勇人内閣が決定した経済対策の基本計画です。当時は人口増加、高度経済成長期の真っ只中。今とは異なり成長の土台がしっかりとあり、夢がありました。皆一生懸命頑張る甲斐があったわけです。そして、「10年で実質国民所得倍増」の計画が前倒しで達成されたのです。
実はこれにならい、岸田首相は以前も令和版の「所得倍増計画」を掲げていましたが、このことを覚えている方はどれくらいいらっしゃるでしょうか。実は既にこの計画は封印されています。つまり、実際に言ったものの、公約から外されてしまったのです。
現実問題、難しかったのは誰もがお分かりのことでしょう。ここからまた倍にするにはいったいどれくらいかかるのか? 心配なのは、同じわだちを踏むのではないかということ。やるならやるとはっきり明言し、実行に移していただきたいものですが、果たしてできるのでしょうか。
結局、自分の資産は自分で守るしかない
結局のところ、政府に後押しされる側面から投資を行うよりは、自分の資産は自分で構築、守っていく時代であることは間違いありません。政府の気持ちも分かるものの、だからといって積極的に投資に向かおうとする人はそこまで多くないのではないかと思います。将来への不安からまずは「貯蓄」と考える人も多いことでしょう。
投資減税の拡充やNISA制度の恒久化などが行われるならば、投資への後押しとなる可能性はあります。そのような制度構築も整備しつつ、投資へと促すことをしていただきたいものです。言うのは誰でもできますが、実行するのはなかなか難しい。是非思い切った措置を期待したいですね。
投資から日本の経済成長が期待できる側面が構築できると、新しい循環が生まれ、日本が活性化する可能性が見えてくるでしょう。
【参考】
※1:2021年第4四半期の資金循環(日本銀行調査統計局)