「空の巣症候群」とは……子育て後の虚無感・憂うつ感
「空の巣症候群」に気づいたら、ゆっくり休んでから「3つのプレイス」について考えてみましょう
子どもが小さかったころのように口を出すと、「うるさいなぁ」「自分でやるから放っておいてよ」と言われてしまう始末。子育ての負担から解放されて楽になる半面、自分の存在意義を失ってしまったような寂しさを感じ、「空の巣症候群」を自覚することは珍しくありません。
「空の巣症候群」について詳しく知りたい方は、「子どもが巣立ったら襲われる虚無感・「空の巣症候群」からの脱出方法」もぜひご覧ください。
「空の巣症候群」の乗り越え方……疲れと傷は、ゆっくり休んで癒す
子離れの寂しさ、つらさと空の巣症候群は、親、特に母親にとっては避けられないものです。覚悟はしていても、実際に愛するわが子から距離を置かれ、「メシ、カネ」以外はそっけない返事のみ。このような態度を取られると、「なんのために頑張って育ててきたのかしら……」という虚無感でいっぱいになってしまうのも無理もありません。でも、この切なさやかなしみも、親子それぞれの人生には必要なプロセス。親子の別れ際には「冷たい」「むなしい」というほどの気持ちが湧かないと、いつまでもずるずるべったり、依存的な親子関係が続きやすくなってしまいます。
空の巣症候群に陥るとしばらくは喪失感が続き、何もしたくなくなると思います。これまでの子育ての疲れが噴出し、傷ついた自分を労わる必要があるのだと認め、まずは心身の求めに従って休みましょう。「時間がもったいない」「こんなにダラダラしていていいのかしら」と思うほどのんびり、ゆったり過ごすとよいと思います。
「何かを始めよう」と思ったら、「3つのプレイス」を意識!
そうして心ゆくまでのんびり過ごしていると、心の中から「何かやってみようかな」という気持ちがムクムクと湧き出してきます。その段階になったら、下記の「3つのプレイス」という“人生の居場所”について考えてみましょう。「3つのプレイス」とは?
1)ファーストプレイス:家庭
2)セカンドプレイス:職場
3)サードプレイス:趣味、交流の場
上記の3つのそれぞれに自分の居場所を見出していると、人生がバラエティに富み、充実していると感じられるものです。「サードプレイス」について詳しく知りたい方は、「つまらない人生を変える「サードプレイス」の探し方」もぜひご覧ください。
たとえば、これまで「子育て一筋」で頑張ってこられた方は、セカンドプレイス(職場)とサードプレイス(趣味、交流の場)がなく、家庭の中で手持無沙汰な時間を過ごしているのではないでしょうか? また、育児と仕事の両立に頑張ってこられた人も、サードプレイスを築く間もなく、ふと「私、自分の人生を生きていないかも?」と感じてしまうことがあるかもしれません。
上のような気づきが生じたときには、現状の「3つのプレイス」のバランスがどのようになっているのか、じっくり振り返ってみましょう。足りないものを見出し、実際にそれをやってみることで、子離れ後の第二の人生を充実させられるのではないかと思います。
「3つのプレイス」は人それぞれ。自分にとって“ちょうどいいバランス”を
「3つのプレイス」のバランスのとり方に、テッパンはありません。人の個性、家庭の事情や仕事の特性によっても、各人に“ちょうどいいバランス”は異なるからです。たとえば専業主婦の場合、子どもが成人に近づき、自分自身で朝食などの簡単な食事の準備ができるようになったら、セカンドプレイスとサードプレイスの両方をしっかり生活に組み入れていくのがお勧めです。週2~3日、3~4時間程度のパートから仕事をはじめてみる(セカンドプレイス)、仕事のない曜日にはスポーツジムで汗を流す(サードプレイス)。このように「3つのプレイス」をバランスよく組み入れて1週間を過ごすと、意識が家庭、仕事、趣味という3方向に分散するため、生活の充実感が増していくのです。
既に仕事をされている方は、可能であれば仕事の負担を軽減しつつ、その分、サードプレイスをつくっていくと、「3つのプレイス」のバランスが整い、生活の充実が得られるでしょう。ただし、サードプレイスはあくまでも“生活の彩り”です。趣味にお金をつぎ込みすぎたり、スポーツにはまりすぎて体を壊したりしないよう、「3つのプレイス」を円滑に循環させる要素の一つとして取り組むことを忘れないようにしましょう。
子離れの寂しさから「空の巣症候群」を感じたときには、ぜひ自分をじっくり休ませた後で、「3つのプレイス」のバランスを考えてみましょう。きっと、子育て後の第二の人生がとても楽しく、いきいきと感じられてくると思います。