浪人してつらい……少数派で気持ちが沈みやすくなる浪人生
浪人生の心は不安と孤独に陥りやすい。親の温かいかかわりが大切になる
自己推薦や総合型選抜も含めて入試スタイルが多様化するなか、浪人生の割合は減少傾向にあります。文部科学省の統計によると、2019年度の浪人生の割合は22.4%。8割が大学に現役で合格するなか、2割の浪人生は複雑な思いを抱えながら、来年度の合格を目指して頑張っていることになります。
とはいえ、成人した子に対して親がやたらと気を回し、あれこれ口を出すと煩わしく思われてしまうもの。場合によっては、子どものやる気をそいでしまい、勉強そのものを投げだしてしまうかもしれません。そうならないためにも、親は浪人生になったわが子の気持ちを理解し、やる気を上手に支えるかかわり方をしていく必要があります。
浪人中に抱えやすい不安と孤独感……高校生とは違う浪人生の現実
まず、浪人生の子どもたちは何を思い、どんなストレスを抱えているのかを理解しましょう。彼らの心の中心にあるのが「不安」と「孤独」です。同級生の多くが大学へと進むなか、一人だけ取り残されてしまったように思い、不安でたまらなくなるものです。多くの場合、春の模試では現役生より高い結果が出るため、余裕があるように見えますが、夏休みごろから現役生が猛烈に追い上げて模試の順位を上げてくると、浪人生の不安はさらに高まり、自信がぐらつきやすくなります。
そして、浪人生は一人きりで受験勉強に臨みます。現役時代には、語り合える友人が周りにいたため、「自分だけが辛いわけじゃない。みんなも一緒に頑張ってるんだ」という思いが湧き、それが受験へのモチベーションにつながっていたのかもしれません。
しかし、浪人生は塾や予備校に通っていても、周りは見知らぬ人ばかり。先生方とのかかわりも高校ほど密ではなく、部活や文化祭などのイベントもなく、ただひたすらに勉強を繰り返す日々。気がつけば外では誰とも会話をせずに、1日を終えている日も多いことでしょう。そうしたなか、浪人生の心には日増しに孤独感が募り、ストレスに押しつぶされそうになってしまうものです。
浪人中のネガティブな本音には「リフレーミング」で勇気づけを
とはいえ、そんなつらい胸の内を親に素直に話せている子は、ほとんどいないと思います。「お金の負担をかけている」「これ以上失望させたくない」……そんな思いから「親に頑張っている姿を見せなければ」と一人で抱え、気負ってしまうものです。それでも時々、本音をポロっとこぼすことがあるでしょう。「今年も落ちたらどうしよう」「苦手科目ばかりだから」……、こんな言葉がふと口をつくことがあるかもしれません。そんなときこそ親の出番です。「リフレーミング」という“言い替え”の手法で、ネガティブになりがちな子どもの言葉を希望の持てる言葉へと転換していきましょう。
・「今年も落ちたらどうしよう」→「不安になるのは頑張ってる証拠。努力は必ず実るよ」
・「苦手科目ばかりだから」→「向上しているからこそ、苦手がはっきり見えてくるもの。一つひとつ対策していけば大丈夫」。
子どものネガティブなつぶやきを、こんな風に希望の持てる言葉にリフレーミングしてあげると、子どもは再び自信を取り戻し、困難に挑戦していくことができるでしょう。リフレーミングについてさらに詳しく知りたい方は、「マイナスをプラスに変える「リフレーミング」の力!」もぜひあわせてご覧ください。
浪人中も明るい食卓と楽しい話題! 子どもの心を和ませる時間を
そして家のなかでは、家庭ならではの温かい雰囲気を楽しむことが何より大切です。なにしろ、受験生は“勉強一色”の毎日です。帰宅後にほっとひと息をつくと、食卓には温かいご飯が並び、家族が笑顔で待っている。たとえ口数が少なくても、子どもはそんな温かい家庭の雰囲気を感じると、「自分は一人じゃないんだ」「また明日も頑張ろう」という意欲が自然に湧いてくるものです。また、浪人時代だからこそ、受験や勉強以外の話題をたくさん交わすことがとても大切です。世間をにぎわせている面白いニュース、出先で見つけた珍しいお菓子、駅前にできた変わったお店。雑談する友人がいないなか、こうした何気ない、明るい話題を交わし合うと子どもの気持ちは和みます。浪人生は気持ちの逃げ場が極端に少ないからこそ、ちょっとした話題で気分をほっこりさせることが重要なのです。
浪人時代は苦しいものですが、乗り越えれば、子どもにとって大きな自信につながります。そして、つらい時期だからこそ、親がいつも明るい気持ちで支えてくれたということが分かれば、いずれは子どもの心に親への感謝の気持ちが湧いてくるでしょう。ぜひ、受験勉強に励むお子さんの心を温かく支え、希望の持てるかかわり方をしていただければと思います。