Q:老齢年金を繰上げ受給した後、亡くなった場合、遺族年金額にどんな影響がある?
「老齢年金(老齢基礎年金、老齢厚生年金)を繰上げ受給して、60歳からの受け取りを開始した場合についてです。もし、繰上げした本人が63歳で死亡した場合、配偶者に支給される遺族年金の金額の基準とは、繰上げした年金額と65歳から本来支給されるはずだった金額のどちらですか? 家族が受給する遺族年金額にも影響があるのでしょうか?」(マルさん)老齢年金を繰上げ受給したら遺族年金額に影響はある?
A:死亡者が老齢年金を繰上げ受給していても、配偶者の遺族年金額に影響はありません
遺族年金額の計算についてですが、「繰上げ受給した老齢年金額」「本来支給されるはずだった老齢年金額」のどちらも影響しません。遺族年金には遺族基礎年金と遺族厚生年金の2つがありますが、それぞれの計算方法とは以下の通りになります。遺族基礎年金額については、死亡者が保険料納付要件を満たしていれば、配偶者に対して、子ども(18歳の年度末までの子、または20歳未満の障害1、2級の子)の人数に応じて定額で支払われます。子どものいない配偶者には支払われません。したがって、老齢年金の繰上げ受給は、遺族基礎年金額の計算には影響しません。
遺族厚生年金額については、本人の死亡時までの年金記録から「平均標準報酬月額」(平成15年3月以前)、「平均標準報酬額」(平成15年4月以降)に基づいて計算された老齢厚生年金(報酬比例部分)額の4分の3の金額となります。したがって、繰上げ受給した老齢年金額は、遺族厚生年金額を計算する際に考慮されません。
ちなみに、繰上げしないで、65歳から支給されるはずだった老齢年金額については、死亡者が65歳まで生きた場合でなければ計算できません。平均標準報酬額を算出する再評価率(過去の標準報酬を現在の賃金手取り水準に読み替える乗率)や、マクロ経済スライドによるスライド調整率は毎年見直しされるからです。
それから、老齢年金を繰上げ受給したことによって影響があるのは、寡婦年金の受け取りについてです。寡婦年金とは亡くなった夫が国民年金に10年以上加入している等の条件を満たすと妻がもらえる年金です。夫が繰上げして死亡した場合は、妻は寡婦年金を受け取れません。妻が年金を繰上げして夫が死亡した場合も妻は寡婦年金を受け取れません。老齢年金の繰上げ受給をする場合、寡婦年金には注意が必要でしょう。
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