樹木を厳選し、データ化することで効果的な災害対策に
実証実験の現場となる舞洲は海に浮かぶ人工島で、強風だけでなく塩害もある厳しい環境。この実証実験では、自然の力による災害対策も期待されています。
「これまで塩害に対する植栽計画は、職人のカンや経験に頼ることが多くありました。この実験できちんと数値をとり、データ化するため、塩害に強いと言われるサルスベリなど14種類の樹木を選んで植栽し、葉の様子などを機械で測定しています。
数百種類もの樹木を候補として耐潮性をチェックし、14種類に絞りこむまではとても苦労しました。逆に、ヒマラヤスギなど塩害に弱い木も混ぜて対比の実験も行っています」
塩害のある環境を活かし、耐潮性が期待できる14種を植栽
近年増加している大型台風は、強風や洪水だけでなく、潮水を巻き込みながらやってきます。そのため、海岸部でなくても塩害への注意が必要なのだそう。
「例えば、2019年に甚大な被害をもたらした台風19号では、丸の内や大手町でも街路樹の葉が茶色く変色し、多くが落葉してしまいました。塩害については、海沿いの公園などを中心に植栽計画が考えられていましたが、今後は内陸にもエリアを広げていくべき。この実験結果で、ぜひ塩害対策に役立てたいですね」
緑を守ることで、安心・安全に暮らしを楽しむ
この「グリーンインフラの高度化に関する実証実験」を通じて、未来のために目標とすることは何ですか?
「安心・安全に都市部の緑を築いていく……というのが、私たちに課せられた使命だと思っています。この実証実験によってグリーンインフラを充実させ、塩害や耐風の対策が進めば、緑の力で暮らしやすい街づくりができるでしょう。
また、木や土には水分の蒸散・蒸発作用があるので、空気を冷やすクールスポットとなり、地球温暖化対策にも効果的です。街路樹は街の景観をつくり、心癒されるものでもあります。しかし、台風や強風で街路樹が折れて危険だということで、管理しきれずに伐採する自治体が増えているという現状も。ぜひこの技術を利用して、街路樹を守ってほしいと思います」
塩害や耐風・地球温暖化対策だけでなく、このトレイを使って、四季の楽しみを暮らしに取り入れることもできるのだそう。
街にも庭にも緑を増やして、楽しみながら環境共生を
「ご家庭のガーデニングにも役立てることができます。これまでは、庭木は植えたままにしておくものでした。しかし『貯水槽付植栽トレイ』なら、花が咲く木や緑が美しい木など、四季折々にトレイごと樹木を入れ替えて楽しんでいただくことも可能です。バルコニーにも固定できるので、あちこちに緑のスポットを作ることもできるでしょう」
世界中で環境共生が叫ばれている今、日本で20年ぶりに万博が開催されます。2025年の大阪・関西万博では、住友林業のグリーンインフラ実証実験の成果にぜひご注目を! そして、自分の身近にある緑の力についても、しっかりと考えていきましょう。