自然が持つ力で、社会の課題を解決するための実験

万博の開催に先立って、2050年の脱炭素社会の実現をはじめ、さまざまな課題を解消する実証実験の公募がありました。39案の応募の中から特に評価の高かった9案が採択され、そのひとつが住友林業の「グリーンインフラの高度化に関する実証実験」です。

住友林業
実証実験の会場となる舞洲は、大阪港に浮かぶ人工島


インフラと言えば、ガスや電気・水道・道路・線路などを思い浮かべますが、グリーンインフラとは、自然の力を地球温暖化や災害などの対策に活用していこうとする取り組みのこと。
 
「私たちは以前から、グリーンインフラに積極的に取り組んでいます。万博で実証実験の公募があると聞き、これまでの技術開発が活かせるチャンス! と手を挙げました。多数の応募から選んでいただき、2021年10月から舞洲という人工島で実験を開始しています」と話すのは、住友林業 森林・緑化研究センターのセンター長である中村さん(以下コメントはすべて中村さん)。
 
具体的には、どんな実証実験を提案され、採択になったのでしょうか。
 
「ひとつは『塩害や強風などの災害に耐性のある植物の選定』、もうひとつは『雨水や潅水などの余剰水を効果的に利用して、植物を育てる方法』を検証するものです。
 
日本はその2/3が森林という、先進国でも屈指の樹木豊かな国。森と密接に生きる民族として、また森との関係が深い企業として、緑の持つ大きな力をどう発信するかが非常に重要だと思っています」

 

大阪・関西万博の「静けさの森」での利活用を目指して

この実証実験が成功すれば、万博で計画されている「静けさの森」でも活用される可能性があります。

「この万博において、静けさの森は豊かな緑の象徴となるエリアですが、あくまで仮設の会場です。万博が終わったら更地に戻さなければなりません。そこで活かせるのが、ビルなどの屋上緑化のために私たちが開発した『貯水槽付植栽トレイ』です。
 
このトレイに木を植えて、それごと土の中に埋める形で育てます。屋上緑化はある程度木が育ったら入れ替えることがあり、仮設という意味では万博と同じ。固定も移設もできる植栽技術が役に立つのでは?と考えました」

 

薄いトレイでしっかりと木を育て、強風への対策も

住友林業
木が育っても移設が簡単な、屋上緑化の技術を応用
 
●薄いトレイで軽量化
「トレイは2層になっていて、上が土壌層、下が貯水槽です。それぞれの厚さはわずか7.5cm、トレイ全体でも15cmしかありません。屋上ではできるだけ重量を減らさないと、屋根を壊してしまうので軽量化されており、移設もしやすくなっています。
 
ここまで土の層が薄いと、木がちゃんと育つのかと疑問に思う方もいるでしょう。土中を50cmほど掘ってトレイを埋めておけば、3m程度の高さの木に育てることができます。また、根はトレイの中だけで伸びて周りの土には広がらないので、トレイを抜けば木を傷めずに撤去できるのもメリットです」
 
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大きな木が育つ?と不思議に思うほどのトレイの薄さ
 
●適度な水分量をキープ
「下の貯水槽には、雨が降らなかったとき根に水を供給するための水が溜まっています。逆に、大雨が降って水が増えすぎたときは配管で余剰水を逃がすので、土には常に適度な水分が保たれます」
 
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どんな気象条件でも、木に優しい水分量になる仕組み

●ワイヤーで木を固定
「木はトレイの下に敷設したステンレス板にワイヤーでつなぎ、しっかりと固定します。一見ワイヤーは頼りなさそうですが、トレイに入っている土や水の重さも利用して、面で支えるので非常に頑丈です」
 
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細いワイヤーで両側からしっかりと木を支える
 
「実証実験の現場となっている舞洲は、風がとても強い場所。木をワイヤーで固定したもの以外に、土に杭を打った支柱で固定した場合、支柱無しとした場合との比較実験も行っています。ワイヤーは大丈夫ですが、支柱無しはすでにいくつか倒れてしまったものもありました」
 
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ワイヤーは面で支えているので、強風でも安定


 
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<関連リンク>
住友林業のグリーンインフラの考え方と実例
住友林業の様々な研究(住友林業 筑波研究所)