人間関係

今すぐ頼み上手になれる魔法の4ステップ「みかんていいな法」

【公認心理師が解説】家族や職場の人に手伝ってほしくても、頼むのが苦手で一人で抱え込んでしまう……。そんな人には「アサーション」というコミュニケーション技法のひとつ「みかんていいな法」を試してみましょう。シンプルな4ステップに沿って伝えるだけで、人間関係に角を立てずに、誰でも頼み上手になれます。具体例をあわせてご紹介しましょう。

大美賀 直子

執筆者:大美賀 直子

公認心理師・産業カウンセラー /ストレス ガイド

人に頼むのが苦手……角を立てずに協力してもらうコツはあるの?

キッチンダイニングで会話するカップル

「本当は手伝ってほしい」……そんなときには「みかんていいな法」でスマートに相手の協力を引き出してみましょう

家族でも職場でも相手に遠慮してしまって、自分ひとりで頑張りすぎていませんか? 「本当は手伝ってほしいけど、頼みにくいから自分でやろう」……そんな思いで仕事を抱え込んでいる人は少なくないかもしれません。でも、いつも自分だけで抱え込んでしまうと、負担は増え続け、いつかストレスに押しつぶされてしまいます。
 
人間関係的に遠慮してしまう人は、角を立てずに相手の協力を引き出す話法を覚えておくと便利です。今回はおすすめの方法として「みかんていいな法」をご紹介しましょう。これは「アサーション」というコミュニケーション技法のひとつ。アサーションとは、互いの希望をフェアに語り合うコミュニケーションの基本です。アサーションについては、「あなたはアサーティブな会話できてますか?」でも詳しくご紹介していますので、あわせてご覧ください。
 

シンプルなのに効果大! 「みかんていいな法」の4つのステップ

「みかんていいな法」は、自分の気持ちと希望を素直に伝え、相手の協力を引き出すシンプルな話法です。具体的には次の4つのステップで伝えます。
 
1. み → 見たこと
2. かん → 感じたこと
3. てい → 提案
4. いな → 否定されたときの代案
 

例を挙げて考えてみましょう。ワンオペ家事・育児に追われる妻と、夕食後に一人でくつろぐ夫。妻の立場では、夫に対して「疲れてるのはわかるけど、何か少しくらい手伝ってくれたら……」と思ってしまいますよね。そんな素直な気持ちを相手に伝え、快く協力してもらうにはどうしたらいいでしょう?
 

やりがちな2つの失敗例…「一方的に責める」「自分だけで抱え込む」

まずは、非常によくあるノン・アサーティブ(そしてNG)なコミュニケーションのパターンを2つご紹介しましょう。
 
よくある失敗例:一方的に相手を責める
例)「なんで自分だけくつろいでるの?」「忙しいんだけど! 何か手伝ってよ!」
 
このように感情的に伝えれば、その場はしぶしぶ手伝ってくれるかもしれません。ですが、相手の心には「そんな言い方しなくてもいいのに」「手伝うの、面倒だなぁ」といったネガティブな思いだけが残り、家事・育児へのモチベーションは湧かなくなってしまいます。
 
よくある失敗例: 自分だけで抱え込む
例)(何を言ってもムダだから)(嫌々手伝われても迷惑だし…)
 
「どうせわかってくれない」といったあきらめの気持ちから、黙って一人で抱え込んでしまうと、相手には気持ちが伝わらず、いずれは自分が疲弊してしまいます。
 
どちらのコミュニケーションも、「一人では大変なので手伝ってほしい」という素直な気持ちがまず相手に伝わっていません。このようなコミュニケーションを続けていると、いずれは相手か自分のどちらかに信頼の気持ちが薄れ、2人の関係にヒビが入ってしまいます。 
 

「みかんていいな法」の4ステップで頼み上手になれる!

そこでおすすめしたいのが「みかんていいな法」です。この方法を活用すれば、自分の気持ちが相手にうまく伝わり、快く協力してもらいやすくなります。先の夫婦の会話にあてはめてみましょう。
 
1. み→見たこと
「パパ、今少し時間があるみたいね」
 
2. かん→感じたこと
「私、やることがたくさんあって大変なの。だからちょっと手伝ってくれると助かるわ」
 
3. てい→提案
「たとえば、子どもをお風呂に入れてくれるかしら?」
 
4. いな→否定されたときの代案
(相手が不快な反応をしたら)「負担かしら? じゃあ、私がお風呂に入れるから、子どもが出たらパジャマを着せてくれる?」
 

「みかんていいな法」の応用例……相手に提案・代案を考えてもらう

「3」と「4」は上のように具体的に伝えてもよいのですが、相手自身に提案してもらう方がより主体的な協力を引き出すことができます。たとえば、「3」と「4」を次のように言い替えてみましょう。
 
3. 「何か一つ手伝ってほしいんだけど、どんなことならやってもらえるかしら?」
 
欲張らずに、何か一つ無理なく手伝えることを提案してもらうと、相手も取り組みやすいでしょう。もし「嫌だよ、俺は疲れてるんだよ」などと否定されたら、次のステップに進みます。
 
4. 「わかった。じゃあ、一段落したらお願いできる? どんなことなら、手伝ってもらえるかしら?」
 
こうして、相手自身に代案を考えてもらいます。どうしても代案が出なければ、負担の少ないものを2つほど提案して、相手に選んでもらうとよいでしょう。たとえば、明日の朝に出すごみをまとめる、自分のシャツにだけアイロンをかける、などいかがでしょう? 簡単にできることから選んでもらうと、取り組みやすいと思います。
 

協力してくれたら忘れずに感謝を! 素直な喜びを伝えるのがベスト

「みかんていいな法」で相手の協力を引き出すことができたら、忘れてはいけないのが感謝の言葉です。「夫婦(チーム)なんだから当たり前」「普段は私が一人でやっている」といった気持ちは一旦脇に置いて、「ありがとう!」「助かった!」「うれしい!」といった素直な気持ちを伝えることが、いちばん相手の心に響き、関係性の維持にも役立ちます。

イライラしていると、相手が頼みごとに応じても「それくらいしかできないの?」「よその人はもっとやってくれるのに」といった気持ちがわいてしまうかもしれませんが、よい関係の第一歩として、思ったことをそのまま口にしないことも大切です。
 
快く協力してもらう関係を作るためには、まずはどんな小さなことでも相手がやってくれたことに対して素直に喜び、感謝することです。「みかんていいな法」と感謝の習慣をコツコツ続けていけば、相手はいずれ何も言われなくても、すすんで手伝ってくれるようになるでしょう。
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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