亀山早苗の恋愛コラム

外面だけは「いい人」キャラの夫が本音を暴露した日。見栄っ張りな人が抱え込むストレス

誰からも「いい人」と言われる人が、表も裏もなく「いい人」とは限らない。単にいい人に“見られたい”だけの見栄っ張り夫が、ついに本音をこぼすときがやってきて……。

亀山 早苗

執筆者:亀山 早苗

恋愛ガイド

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外面がよくて「いい人」と思われがちな夫ほど、家庭内ではやたらと不機嫌だったり無口で自分の意志を的確に伝えられなかったりするものだ。見栄っ張りで「いい人に見られたい」夫がついに本音を口にするときとは。
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突然「母親と同居する」と宣言

4年前、夫の父親が急逝すると、突然、夫が「おふくろと同居する」と宣言したのだと話してくれたのはミサトさん(44歳)。当時、結婚して11年、9歳と7歳の子がいた。

「自宅から義母宅までは電車を乗り継いで1時間程度。義母は70歳手前でしたし元気でしたから、同居はまだいいんじゃないかと私は思ったんです。でも夫は『オレはひとりっ子なんだ。おふくろを見る義務がある』と言い出して。とはいえ、結局、やることが増えるのは私だということは目に見えている。うちは共働きで、それまで長い時間をかけて生活のリズムや家事分担などを構築してきたわけです。それがお義母さんが入ることでいったん崩れるのもわかっていた。結局、イライラするのは夫なのではないかなと予想していました」

義母は定年過ぎてもきっちり働いてきた人。当時、ようやく仕事を辞めたばかりだった。ミサトさんの気持ちをわかって、むしろ息子に意見をするタイプの人だったから、同居したら母と息子のバトルが繰り広げられるのではないかとミサトさんは思ったのだ。ところが夫は、「パートナーに先立たれた母はかわいそう」という思いに凝り固まっていた。

「お義母さんも少しはひとりで気ままに暮らしたいかもしれない。本音を探ってみたほうがいいと言ったのですが、いや、同居するのが息子の義務と言い張る。義母宅は一軒家ですし、私は勤務先が近くなるので、それもいいかと考えました。子どもたちは予定していた小学校と違うところになりますが、途中で転校するよりいいかもしれないし」

当初、義母は同居を拒んでいたが、やはり寂しさもあったのかもしれない。息子からの執拗なオファーに応える形で同居を承諾。少し家をリフォームして同居が始まった。
 

楽になった私、夫は見栄を張って

「正直、私は楽になりました。義母が保育園の送り迎えもしてくれたし、夕飯の支度もしてくれることが多かった。私がバタバタと帰ってくると、『まずはお茶でも飲んで』と座らせてくれる。それまで帰宅したらすぐに夕飯の支度で着替える暇もないような生活だったのが、帰ったらお茶を出してもらえるんですよ。それに義母はまったくうるさいことを言わない。子どもたちに関しても、『あなたたちの方針があるでしょ。私はかわいがるだけ』って。子どもたちも私も、義母と同居することで気持ちにゆとりがでました」

そうはいかなかったのが夫。親孝行をするんだ、それが息子の務めだと声を大にして言っていたのに、母親が何か言うと「わかったよ、いちいちうるさいよ」と言う始末。

「そこは適当に流しておけばいいのに、いちいち口答えしてる。反抗期の子どもみたいなんですよ。実際、夫と義母はもともとそれほど仲がいいわけではない。夫はひとりっ子の上に、母親がずっと仕事をしていたから、心の隅に寂しい思いをさせられた恨みみたいなものを抱えていたんだと思います。実家から離れたくてわざわざ関西の大学に行ったくらいだから、大人になったからといって、いきなり理想の母子関係を演じようとしてもむずかしいですよね」

しかも母親はまだ弱っているわけではない。夫は「老いた母親をいたわる息子」を演じようとしていたらしいが、手を貸そうにも母親は元気だから、その手を払いのけられてしまうのだ。

「そのうち夫と義母が口論になることが増えていきました。夫は休日に義母も交えて出かけようと勝手に計画を立てるんですが、義母は『その日は私、友だちと観劇の約束があるの』って。勝手に決めないでよと言われて、夫は怒っていましたね」

同居して2年ほどたったとき、夫がぽつりと言った。「オレ、限界だわ」と。

「母親を意識しすぎだと思う、お義母さんにはこれまで培った人間関係もご近所関係もあるのだから、好きなようにさせればいい。あなたはいい息子になろうとしすぎていると私は言いました。夫は『勝手に関西の大学に行っちゃったし、その後も実家にはほとんど寄りつかなかったし、親孝行できないままオヤジは死んじゃったし。だからせめておふくろには孝行しようと思ったんだよ』と。夫はそれを言えないまま、親孝行の押し売りをしていたんですよね。だからその言葉をお義母さんに伝えました。するとお義母さん、ほろりとしながらも『よけいなお世話よね。それぞれ勝手に生きればいいだけよ』って。私が彼女を好きなのはこういうところなんですが、夫から見ると、自分の愛情ストーリーを受け止めてくれない母親に思えるのかもしれない」

ミサトさんは、さりげなくふたりの気持ちのすれ違いを調整するよう心がけた。最近、ようやく夫は母への愛情押し売りをやめた。母のほうも、誕生日など特別な日の一家揃っての外出だけは快く受けてくれるようになり、関係はいい方向へ進んでいる。

「実の親子だからってうまくいくとは限らない。男の子の母への思い入れには複雑なものがあるなと感じました。まあ、ぎすぎすした関係が解消できたのはよかったです」

家族だから、親子だからすべてうまくいく、愛情を示せばわかりあえるというものではない。自分の思いだけが先走ると、関係がうまくいかないのは他人でも親子でも同じことなのかもしれない。
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