由緒ある寺の名木にも新しい命を吹き込む
名木をはじめとする樹木の培養実績は非常に豊富で、誰もが知っている数々の名木が住友林業の技術で受け継がれ、新しい命を育んでいることに驚かされます。「豊臣秀吉が『醍醐の花見』をした地としても知られている京都・醍醐寺のシダレザクラ。太閤が眺めたであろう桜の子孫も枯れてしまう危険性がありましたが、組織培養の技術によって救うことができました。今では親木と並んで、毎年たくさんの花を咲かせて人々を楽しませています」
苗木の増殖で、太閤が愛したシダレザクラを後世へ
「北野天満宮の飛梅や醍醐寺のシダレザクラ以外にも、仁和寺の『御室桜』、樹齢400年を誇る盆梅の『不老』など、これまでにも日本各地の希少な樹木の増殖を数多く手がけています。
それぞれの木の特徴を把握して、採取した芽を育てる培養液のレシピはすべてオーダーメイドで作ります。培養液を定期的に変えれば、芽の状態で半永久的に、病虫害の心配なく保存しておくことも可能です」
樹齢360年超で枯死が心配された仁和寺の「御室桜」を再生
「もともと住友林業では、インドネシアやボルネオで安定して木材を生産する目的で、植林用の苗を育てる組織培養の研究開発を進めてきました。その成功事例を発表したところ、枯死が心配される名木を持つ神社仏閣などから多数お声がけいただくことに。私たちの技術を役立てることができ、とてもうれしく思っています」
「令和の飛梅伝説」で日本中に梅の花を届ける
組織培養の技術を使って、未来のためにどんなことをしたいと考えているのでしょう。
「住友林業が大切にしているのは『木への恩返し』ということ。木の健康を守り、育て、使っていく。ご神木や名木を蘇らせるのは、単に木の保護・保存をするだけでなく、伝統ある日本の風景を後世に残すことでもあります。木を通じて、歴史や文化の継承にも大きく寄与できるのではないでしょうか」
飛梅を増殖するプロジェクトは、これから『令和の飛梅伝説』へと発展していくとのこと。
「飛梅の苗木を増やすことで、受け継がれてきた先人たちの想いや歴史、文化を未来へつなぎ、まさにかつての飛梅伝説のように、やがては全国各地に薄紅の花を咲かせてもらえることを目指していきます。
梅の組織培養は当初はとても難しく、成功率も低かったのですが、今は培養条件の解明が進んで実用化に向けためども立ちました。苗の生産を実現するために、今後も調査研究を進めていきます」
全国で梅のつぼみがふくらみ、可憐な花を咲かせる姿が目に浮かぶよう。何とも夢のあるプロジェクトです。
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