転職のノウハウ

「転職」を決断するための処方箋―「若手世代」と「ベテラン世代」が転職で得るもの、失うもの

自分は転職を決断できるのか、そこに自信を持てない人は意外に多い。転職で得るもの、失うもの、維持できるもの、その実態をどのように整理するか、転職を決断する人の思考法について人材コンサルタントの小松俊明が解説する。

小松 俊明

執筆者:小松 俊明

転職のノウハウ・外資転職ガイド

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「転職」の決断のために必要な考え方や各世代の「転職リスク」とは?

状況の変化次第で突然転職を意識することは誰にでも起きうることだ。それにもかかわらず、自分は転職を決断できるのか、そこに自信を持てない人は意外に多いのではないだろうか。転職で得るもの、失うものをどのように整理するか、転職を決断する人の思考法について人材コンサルタントが解説する。
 

経験者の間では前向きに捉えられる「転職」、実態は全体の5%ほど?

例年、春先になると、転職サービスを提供する各社が転職意識調査の結果を発表する。しかしその多くは、転職経験がある人を対象にした調査であるがゆえ、どうしても調査対象者の転職意識の高さが強調された結果が並ぶ。

マイナビが実施した転職動向調査2021年度版(※1)によれば、正社員として働く20代から50代の男女で、2020年に転職した1500人のうち約7割が「転職は前向きな行動である」と回答している。同調査では、コロナ禍の影響で「転職に積極的になった」と回答した人も4割弱おり、「転職に慎重になった」人の2倍に上る。転職の内容であるが、異業種へ転職した人は5割弱。特にフードサービス業界の場合は8割を超え、コロナ禍の影響が特定の業界において特に深刻であることがわかる。

一方、国勢調査の結果における正規雇用者全体の構成比に合わせたスクリーニング全回収者のうち、2020年に転職した人の割合は5%弱。これは2016年から2019年までの増加傾向(2016年の4%弱から上昇を続け、2019年は7%)に反して、コロナ禍の影響で転職志向にブレーキがかかったことを示す結果である。
 

転職経験者と未経験者、転職意識の違いは

上で紹介したような調査結果を見るに、転職経験者と未経験者の転職意識には、大きな違いがあるのだろう。

転職を繰り返すことでキャリアアップを実現したいと最初から考えている人もいる一方、転職を経験した人の中には、本当は転職に消極的だったが、環境変化に伴ってやむを得ず転職したという人も一定の割合でいる。転職経験の背景はさまざまで、人によってキャリアに対する考え方に違いがあるのだ。また、転職意識は年齢を重ねるとともに変化していくこともある。

これまで多くの転職活動中の方と接した経験から気づいたことは、転職しなくてもいいのであれば、できれば転職はしたくない、この転職を最後にしたいという声が多いことだ。転職未経験者の場合は特に顕著である。

未知なる転職というものへの不安もあるに違いない。転職のリスクをプレッシャーに感じる人もいる。転職そのものに挫折感を覚える人もいる。このような考え方は、転職を繰り返すことでキャリアアップを実現したいと考える人とは全く異なるキャリアの考え方である。

つまり、自分が現状の職場で失ったもの――たとえばやりたい仕事、待遇や評価を取り戻すために転職をするのだが、できれば今後は“失いたくない”と強く願うからこそ、転職に対して消極的になるのである。

実際、「転職を繰り返すことでキャリアアップを実現したい」と考える人も、自分が納得できる働く環境が長続きしないと思うだけで、もし納得できる状態が運よく続くなら転職をする必要を感じないことだろう。

つまり、納得できる状態は長続きするのかどうか、そこに対する見通しに、人によって大きな違いがあるのではないだろうか。もちろん、将来の不安はできるだけ考えないようにして、目先の安定にしがみついているだけの人もいるかもしれない。その場合、遅かれ早かれ悩みと向き合うことになる。
 

20代や30代の「若い世代」が転職で得るもの

年代によっても、転職に対する意識は異なる。20代や30代であれば、まだ学べていないことや経験しきれていないことが多い。若ければ若いほど、時間の価値は大きいという考え方がある。たとえば同じ1年間でも20代の1年間ならば大きな成長が見込まれるが、50代の場合は、それほどの変化がないかもしれないということだ。

20代・30代ならば、周りの同世代にも転職経験者が多いはずだ。特に職場に中途採用者が多ければ、転職は身近な選択肢として実感できるだろう。また世の中に求人数が多く、転職支援サービスも若い世代を対象にしたものが多いため、自ずと転職先の選択肢の多さにも気づき、自分の可能性を探りたくもなる。つまり、40代・50代と比べれば、20代・30代は圧倒的に転職がしやすい状況がある。

若い世代にとって転職で失うものは、それほど多くない。むしろ得るものの方がはるかに多い可能性が高い。20代・30代の若い世代が転職で得るものは何だろうか。

若い世代にとって一番重要なのは、やりがいのある仕事の経験をできるだけ早くたくさん積むことではないだろうか。「転職を繰り返すことでキャリアアップを実現したい」と考える人が、若い世代に多い理由がここにある。転職に成功してやりがいのある仕事体験を積めれば、その成功体験が次の転職への自信につながるのだ。

つまり、転職でやりがいのある仕事に挑戦して自分の能力を高め、たとえばリーダーなどの新たな役割を任されることになれば、それは将来に対する大きな投資となり、大きなリターンが期待できる。加えて待遇や評価も改善されれば、転職で得られるものはさらに大きくなる。仮にもし転職に失敗したとしても、まだやり直しができる時間も機会もある。これは若い世代の転職ならではの特権である。

>次ページ:40代や50代の「ベテラン世代」の転職リスクとは
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