預金・貯金

貯蓄のある2人以上世帯の平均貯蓄額は2024万円に?貯蓄なし世帯も含めた平均貯蓄額は1563万円

金融広報中央委員会(知るぽると)が毎年公表する『家計の金融行動に関する世論調査』[二人以上世帯調査]によれば、家計が保有する貯蓄額は初の2000万円台乗せとなりました。株式や債券価格の上昇が金融資産の増加に大きく寄与したことが背景にあり、貯金を持つ者と持たざる者の差が一段と顕著になったようです。一方、貯金が減少した家計も多いことから、調査内容を詳しく見ていくことにしましょう。

深野 康彦

執筆者:深野 康彦

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持つ者が貯蓄を増やし、持たざる者は貯蓄額を増やせなかったことが浮き彫りに

金融広報中央委員会(知るぽると)が毎年公表する『家計の金融行動に関する世論調査』[二人以上世帯調査]は、例年、調査年の11月中~下旬頃に公表されますが、2021年版は新型コロナの影響により年をまたぎ2022年2月14日の公表となりました。
貯蓄を増やせた世帯と増やせなかった世帯の格差が拡大した?

貯蓄を増やせた世帯と増やせなかった世帯の格差が拡大した?

2人以上世帯の調査では、調査の依頼・回収方法を「訪問と郵送の複合・選択方式」から、既に単身世帯調査で採用している「インターネットモニター調査法」へ移行されました。このため2人以上世帯の調査では過去のデータとの連続性が劣ることには注意が必要になります。

2021年の調査によれば、2人以上世帯が保有する家計の金融資産(つまり貯蓄)の平均額は2024万円、中央値が800万円となっています。2020年調査では平均額が1721万円、中央値が900万円ですから、平均額は303万円増加した半面、中央値は100万円の減少となりました。まさに持つ者がより貯蓄を増やし、持たざる者は増やせなかったことが浮き彫りになっています。

ただ、平均額の2024万円、中央値の800万円は金融資産を保有している世帯だけの金額になります。2021年調査では貯蓄を保有していない世帯が22%(2020年より5.9ポイント増加)います。この保有していない世帯を含めた2021年の貯蓄額は1563万円、中央値は450万円となっています。平均額は127万円増加しましたが、中央値は200万円の大幅な減少となっています。
 

大幅に保有額を増やした要因は投資

それでは家計が保有する主な金融商品の内訳を見ていきますが、以下は金融資産を保有する世帯だけの調査データから抜粋することにします。

現金・預金の保有額を示す「預貯金(運用または将来への備え)」という項目を見ると、867万円と1年前より54万円増やしていますが、そのうち「定期預貯金」は442万円と1年前より79万円の減少となっています。また、生命保険も1年前と比べて86万円減少の250万円、財形貯蓄が12万円減少の38万円となっています。

一方、大幅に保有額を増やしたのが、債券、株式、投資信託です。債券は1年前の47万円から91万円に、株式は182万円から384万円に、投資信託は115万円から181万円となり、株式は2倍超、債券は約2倍、投資信託は約1.6倍の保有額に増えました。保有資産額全体に占める割合も3割以上となり1年前の19.9%から大幅に増えています。

まさに持つ者と持たざる者の差を広げたのは投資を行っていたのか否かになりますが、それを裏付けるのはNISAやiDeCo(個人型確定拠出年金)の保有額にも表れています。NISAの保有額は1年前の161万円から242万円、つみたてNISAは52万円から74万円、iDeCoは164万円から369万円に増やしているからです。
 

家計の投資行動に変化の胎動が?

家計が保有する平均額は大幅に増えたものの、1年前と比べて金融資産残高を増やした世帯は9.6ポイント増えて37.5%、変わらない世帯は0.7ポイント減少して41.1%、減った世帯は4.6ポイント減少して21.3%になりました。2021年も実生活には新型コロナの影響が多々ありましたが、家計の金融資産に関して言えば実生活ほど影響はなかったようです。

金融資産残高を増やした理由は「株式、債券価格の上昇により、これらの評価額が増加したから」が1年前から22.7ポイント増えて34.1%に、「配当や金利収入があったから」が18.4ポイント増えて26.7%となっています。1年前からは減少しているものの「定期的な収入が増加したから」が14.3ポイント減の25.6%、「定期的な収入から貯蓄する割合を引き上げたから」が6.8ポイント減の23.1%になっています。収入が増えたことよりも投資によって金融資産の残高が増えたことが残高増につながったことがわかります。

一方、金融資産の残高を減らした理由は「定期的な収入が減ったので金融資産を取り崩したから」が1年前から11.2ポイント増えて51.8%と半数を超えています。その他の理由は1年前より減少しているのですが、「耐久消費財(自動車、家具、家電等)購入費用の支出があったから」は10.3ポイント減らして20.2%、「株式、債券価格の低下により、これらの評価額が減少したから」が同じく10.3ポイント減らして16.2%となっています。

2021年は投資資産が増えて貯蓄額も増加したことから、投資スタンスにも大きな変化が見られました。金融商品を選択する際に重視することという質問への回答では「収益性」が1年前より12.9ポイント増えて34.9%に、「安全性」は8ポイント減少して29.2%、「流動性」も3.5ポイント減少して21%になりました。

また、元本割れを起こす可能性があるが、収益性の高いと見込まれる金融商品の保有に対する質問への回答では「そうした商品についても、積極的に保有しようと思っている」が1年前より10.1ポイント増えて14.5%に、「そうした商品についても、一部は保有しようと思っている」が8.7ポイント増えて35.1%と共に過去10年で最高の割合になりました。「そうした商品を保有しようとは全く思わない」は17.3ポイント減少して50.3%になりました。2018年までは保有しようと全く思わないが80%を超えていたことを考えると隔世の感があります。2020年、2021年と投資に抵抗がなくなっていることが見えることから、この流れが2022年以降も継続するのか注目したいところです。
 

日常の生活資金の借入(借金)は増加

最後に簡単に借金についても、ふれておきましょう。

借入金がある世帯は2020年の42.9%から2021年は22%と半減に近い減少となりました。家計の財務体質が強化されたことは喜ばしいのですが、気になるのは借金の目的です。

最も多いのは「住宅(土地を含む)の取得または増改築などの資金」で、1年前から18.3ポイント減少の48.3%ですが、大幅に増加しているのが「日常の生活資金」で8.3ポイント増加の21.3%になっています。

新型コロナの影響によって、生活がまわらなくなり赤字を補てんするということが、一時的であればいいのですが、借金をする人が増え続けると格差拡大が助長されかねない気がしてなりません。

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【参考】家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査]令和3年調査結果
https://www.shiruporuto.jp/public/document/container/yoron/futari2021-/2021/pdf/yoronf21.pdf
https://www.shiruporuto.jp/public/document/container/yoron/futari2021-/2021/pdf/histn22101.xlsx
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