「見た目批判」にうんざり
「ママ友のなかにもいるんですよね、他人の見た目のことばかり言う人」ヨシノさん(37歳)はため息をつきながらそう言う。結婚7年、共働きで5歳の双子を育てているから、ママ友とは最低限のつきあいしかないのだが、それでもLINEグループなどで噂話は回ってくる。
「○○ちゃんのママ、最近、肌荒れしてる」
「○○ちゃんのママの髪色、本人は自慢みたいだけど似合ってないよね」
などなど、読んでいるだけでうんざりしてくるとヨシノさんは言う。
たまたま保育園のイベントなどでママ友と会ったときも、「あの人、この前と同じ服だよね」と言われてびっくりしたことがあるそうだ。
「いちいち他人の服装なんて覚えてませんが、その人は覚えているんですね。ある意味、すごい記憶力だとびっくりしました。そうしたら彼女、写真を取りだして見せてくれたんです。なんと過去の服装までチェックしていた。彼女も共働きで忙しいのに、そこに興味がいくのかと不思議な気がしました」
さらに「ほら、○○さんは明らかに半年前より全体的にたるんでるというか太ってるわよ」とまた写真をつきつけてくる。
「見せて見せてと寄ってくる人もいて、息がつまりそうでした。私はさりげなくその場を離れたけど、そういうことはやめたほうがいいと言えなかった自分を恥じています」
他人の見た目なんてどうでもいいじゃない、と一言発すればよかった、次からはそうしたいとヨシノさんはきっぱりと言った。
いいかげんにしたら?と言ったら
姑や小姑がそのタイプだというのは、マユさん(40歳)。「夫の実家は歩いて10分ほどの距離。子どもが10歳と6歳なので、いろいろ世話になることもあって縁は切れない。だけど姑と、一家で同居している夫の姉は、テレビを観ていてさえタレントの外見評価をしているんです。この女性タレント、すっごく劣化してるよねーというように。タレントが老けたということは自分たちだって劣化しているわけですよ。他人に対しての言葉はそのまま自分に返ってくるのになといつも思っていました」
ただ、テレビに出てくるタレントなら日常生活に実害があるわけではないし、否定的な言葉遣いが気にはなったが文句を言ったらそのあとも大変なので、とりあえずは放っておいた。
ところが最近、10歳の娘が「○○ちゃんが最近、太ったの。だからダイエットしたほうがいいよって言った」と話したのでマユさんはびっくり。
「どういうことなのか詳しく聞いたら、10歳にしてすでに太るのは悪、かわいくない、みんなに嫌われるという図式で考えているんですね。さらに聞くと、義母や義姉からの受け売りなんですよ。それを同級生に言っている。これはまずいと思いました」
対処が遅かったと反省しつつ、夫にも報告。ところが夫は「女の子は気にし始める年代だろ」と流すだけ。
「万が一、その同級生が摂食障害にでもなったらどうするのと言ったけど、夫には実感がないんでしょうね。私は栄養関係の仕事をしているので、これは本当に怖いことだと思ってると力説したんです。娘にも人の見た目のことを言ってはいけないと伝え、学校にも話してその同級生をケアしてもらうよう頼みました」
だって見た目が大事だっておばあちゃんが言ったもん、という娘に外見だけで人をジャッジしてはいけない、容姿批判はしてはいけないとこんこんと教えたものの、娘がそれを理解するには少し幼すぎるかもしれない。
「だから義母と義姉に言ったんです。うちの子たちに他人の容姿のことをあれこれ吹き込まないでほしい、と。女の子はかわいくなくてはいけない、太ってはいけないと娘が思い込んだら危険だから、と。まあ、わかってはいないでしょうけど」
今後、娘本人がかわいくなりたいと思って努力しているなら、それを否定はしたくない。だが、他人をかわいくないと批判したり太っていると揶揄したりするのは違うとマユさんは思っている。
「女性芸人の容姿をいじって笑うような芸は、もうすたれているでしょう。義母や義姉にはそういうことも話したけど、『え、でもあの人はそれが売りでしょ』と言われて萎えました。むずかしいですね、こういう価値観をわかってもらうのは」
今のところ、娘がダイエットを推奨した同級生は、あまり気にしていない様子。マユさんはその子の親にも謝罪したという。
「子どもは多少太ったり痩せたり、急に背が伸びたりするものだから。うちは上の子たちもそうだったから大丈夫、本人も気にしていませんよと言われてホッとしました。娘には他人を傷つけることの怖さをわかってほしい。周りの大人が気をつけなければいけないことですけどね」
娘が自分できちんと判断できるまで、義母と義姉と夫にどうやってわかってもらったらいいのか、マユさんは今日も胸を痛めている。