コロナ禍で会話激減……会話が重要な10~20代もコミュ力低下か
コロナ禍でもオンラインで不安や悩みをじっくり語りあってみましょう
そもそも10~20代は、他愛ない会話を楽しむ中で多様な価値観に触れ、信頼関係を築き、コミュニケーション力を伸ばしていく年代です。しかし、新型コロナが流行してからというもの、ソーシャルディスタンス、マスク生活、給食やお弁当の黙食、部活の制限、行事の自粛が続き、仲間同士が胸襟を開いてかかわる時間が減りました。これによって、本来なら無理なく身につけられるはずのコミュニケーション力が育ちにくくなっているようです。
カウンセリングでも増加した、不安を抱えこみすぎる学生
私は日頃若い世代のカウンセリングを行っていますが、コロナ流行後は、悩みを自分一人で抱え込み、深刻に考えすぎてしまうケースが、以前よりぐんと増えたと感じます。普段から学生同士で顔を合わせる機会があれば、何気ない会話を交わす中でちょっとした不安を語りあい、解決のヒントを見出せるものです。しかし、コロナ禍では直接かかわる機会が極端に減っているため、雑談のついでに気軽に相談するようなきっかけを持ちにくいのでしょう。相手の迷惑を過剰に気にし、連絡を取ることもためらってしまう人も珍しくありません。
小さな悩みを相談できず、一人きりで悩みと向き合う状況が続くと、思考はネガティブな方向に流れがちです。結果として、「これ以上は無理だ」と悪い結論にたどり着いてしまいます。
では、コロナ禍であってもコミュニケーションをあきらめず、信頼関係を築いていくには、どうすればよいのでしょう? 次の2つのポイントをおさえて、じっくり話し合う機会をもつことをお勧めします。オンラインでも十分にできますので、ぜひ試してみてください。
コロナ禍の人間関係づくり1. 思いを話しあえる時間を意識的に作る
悩みを抱えた頭の中は、整理されていないクローゼットと同じ。様々な思考や感情がごちゃ混ぜになり、手を付けられない状態になっています。解決するには、詰まっている物をいったん取り出し、必要なものと不要なものを振り分ける必要があります。このときに借りたいのが、仲間の力。事務的な連絡のようにはいきませんから、思いついたことをとうとうと語り、じっくり聞いてもらう機会をとにかくもつことです。集まりにくい状況なら、オンラインでも電話でも構いません。「整理してから話そう」などと考えすぎる必要はありません。話を聞いてくれる相手にも、同じように解決できない何かしらの悩みや話したいことがあるはずです。
自分ひとりで整理しようとせず、まずは湧き出した言葉を思いのままに口にして、煮詰まった思いを解放することが必要です。時間をとって会話をすることで抱える悩みのもとを見出せば、何が自分を苦しめているのか、客観的に見つめることができます。
コロナ禍の人間関係づくり2. 決めつけせずに、お互いの中核課題をじっくり聞く
相手の話を聞く際には、「こうしたらいいよ」と決めつけたり、押し付けたりしないこと。相手の話をまるごと聞きとり、本人が抱えている思いをすべて受け止めることが重要です。なかでも、繰り返し語る言葉や言いよどむ言葉は、本人の「中核課題」である可能性が高いです。ぜひ、そうした言葉を見つけたときには、その思いに焦点を当て、深く語りあってみましょう。語りあううちに、自分を苦しめてきた悩みの本質を深く理解することができますし、現実的な折衷案や解決方法を見い出していけるでしょう。
コロナ禍であっても、オンラインでじっくり語りあう機会をもつことで、互いが抱える悩みを解決していくことは可能です。コミュニケーション力とは、明るくふるまうことや会話のテクニックにこだわることではなく、心に抱えている思いをじっくり分かち合い、人間としての互いを深く理解し、信頼関係を築くことなのです。
ぜひ、友だちに声をかけ、じっくり語りあう時間を持ってみてください。「自分のくだらない悩みのためにわざわざ時間をとってもらうなんて……」と遠慮していては、人間関係はいつまでも築けません。簡単に会うことができない状況だからこそ、コミュニケーションの持つ癒しの力を実感してみてください。