亀山早苗の恋愛コラム

常に「夫を立てるいい妻」が息苦しい。新しい牛乳や菓子を“開封しない”理由を尋ねたら…

「夫婦は対等」というのは今やごく当たり前の認識だが、女性たちの中には知らず知らずのうちに「遠慮」してしまうケースがあるようだ。「夫を立てるいい妻」のありようが居心地悪くてたまらないという男性もいる。

亀山 早苗

執筆者:亀山 早苗

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「夫婦は対等」というのは今やごく当たり前の認識だが、女性たちの中には知らず知らずのうちに「遠慮」してしまうケースがあるようだ。「夫を立てるいい妻」のありようが居心地悪くてたまらないという男性もいる。
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新しいものを開けない

婚活で同い年の女性と知り合い、1年弱の交際で結婚したシゲルさん(38歳)。

「35歳のとき両親が相次いで亡くなったんです。ひとりっ子だし親戚づきあいもあまりない。友だちはほとんど結婚しているし……。そもそも独身主義でもないから結婚したかったんですが、なかなか縁がなかった。でも両親がいなくなったのを機に、本格的に婚活を始めました」

友人の紹介で出会ったのがミチコさんだった。管理栄養士として仕事をしており、おっとりした穏やかな女性で、会ってすぐシゲルさんは乗り気になった。

「僕は金融関係で仕事をしていて、仕事は毎日刺激的。だからこそ家では穏やかに暮らしたかった。彼女とならそんな生活を送っていけると思いました」

1年ほど前に結婚、確かに「平穏な生活」が待っていた。ところが半年ほどたつうちに、シゲルさんは「なんだかおかしい」と思うようになっていく。

「たとえば新しい牛乳、新しいシャンプー、買ってきた袋菓子。とにかく何でも新しいものを彼女は開けようとしないんです。彼女のほうが出勤が早いんですが、取ってきた新聞はテーブルに置いたまま。フレックス制で仕事をしているので、たまに午後から出社ということもあるんですが、テーブルには読んだ形跡のない新聞が置かれています」

休日でも早起きするし、シゲルさんの帰りが遅いと食事をせずに待っている。先に食べてほしい、先に寝てほしいと言っても「大丈夫」と待っている。

いったいどういうことなのか。新しいものを開けようとしないのは彼女の怠慢なのか、あるいは自分に遠慮しているのか。考えても埒が明かないので、シゲルさんはミチコさんに尋ねてみた。すると驚くような答えが返ってきたという。

「新しいものは何でも夫が開けるものだと思っていた、と言うんです。バスルームでもうシャンプーがない、新しいのはそこに置いてある。そんなときでも彼女は古いボトルに水を入れて使っていた、と。そういえば新しい石けんもいつも僕が最初に使っていた。『最初に妻が使うのは分不相応』という言葉を聞いて、本気で腰を抜かしそうになりました。『だって生活費だってあなたのほうが多く出しているでしょう』って。今どき、こんな女性がいるのかと驚きましたが、一方で、こういうの嫌だなと思ったんです」

ともに暮らす以上、どんなときも対等だよとシゲルさんは言ったはずだった。
 

夫婦として外に出ても

「そういえば最初におかしいなと思ったのは、ふたりで歩いているのに彼女が心なしか半歩下がっている気がしたときでした。どうして真横に来ないのと聞いた記憶があります。そのときはあまり気にしなかったんだけど、彼女は常にそうやって半歩下がり、何でも僕を優先させていたわけです」

夫婦で友人夫婦と食事をしたときも、ミチコさんは控えめだった。友人夫婦の妻は「ものすごくおしゃべり」で楽しい人。夫も妻に負けず劣らずで混ぜ返したりツッコんだり。まるで夫婦漫才状態で、シゲルさんもふたりのおしゃべりにチャチャを入れながら楽しんでいた。ところがミチコさんは控えめに微笑んでいるだけ。

「気づいた友人が『ミチコさん、最近、何かおもしろいことあった?』と話を振ってくれたのですが、首を横に振るだけで『聞いているだけで楽しい』と。感じが悪いわけではないのですが、ノリが悪いんですよね。それもたぶん、自分が出しゃばってはいけないと思っているからなんだと思います。つきあっているころはもう少し、自分の身近に起こったことなどを話していたような気がするんですが、結婚したとたん、『控えめないい妻』であるべきだと自分を律しているのかもしれません」

言いたいことは言ってほしい、もっと楽しい会話がしたい。自分より先に食事をしてもいいし、先に寝てもいい。好きなように暮らせばいい。改めてそう言うと、ミチコさんは「わかった」とは言ったものの、あまり改善されていない。

「正直言って、待たれているのがプレッシャーなんですよ。先日も、長年使っていて新居に持ってきた僕の洗濯機がとうとう壊れたので新しいのを買ったんですが、彼女は僕が帰宅するまで洗濯機を使おうとしなかった。洗いたいものがたまっていたはずなのに。つい『こういうの嫌なんだよね。買ったのはわかっているんだから使いたかったら使えばいいのに』と言ったら、『だって……』とうつむいている。夫を立てなければいけないと母親に言われたのかとも思ったんですが、彼女の母親はパキパキした江戸っ子で、夫のことも顎で使うタイプ(笑)。彼女はそういう両親を見て、古いタイプの夫婦に憧れたんでしょうかね。僕は彼女の両親のありようのほうがずっと気楽でいいんですが」

対等でありたい夫と、夫を立てたい妻。わかりあうにはもう少し時間がかかりそうだ。
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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