亀山早苗の恋愛コラム

義実家との「完全同居」でメンタル崩壊寸前!赤の他人を親と思って“仕える”なんて理不尽すぎる

義実家との完全同居は、妻のメンタルを壊しかねない。そんな声が続々と聞こえてくる。世代間ギャップだけではない、「赤の他人なのに親と思わなければいけない理不尽な強要」を聞いてみた。

亀山 早苗

執筆者:亀山 早苗

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義実家との完全同居は、妻のメンタルを壊しかねない。そんな声が続々と聞こえてくる。世代間ギャップだけではない、「赤の他人なのに親と思わなければいけない理不尽な強要」を聞いてみた。
義実家との「完全同居」はなぜ難しいのか

イラスト:カツヤマケイコ(@keicomix

結婚5年目で完全同居

「結婚するとき同居の話は出ていませんでした。私は今も夫と義両親にはめられたと思っています」

そう言うのはノリコさん(37歳)だ。30歳のとき、職場のサークル活動を通して仲良くなった2歳年上の先輩と結婚した。部署は違うが、そのまま共働きを続け、現在、6歳と4歳の女の子がいる。

「下の子がお腹にいるとき、夫が自分の両親との同居を提案してきたんです。『子どもたちを見てもらえるし、親も寂しがってるし。子どものことを心配せずに、ノリコも実家でゆっくりしてきていいし』と。そのころ実家の母が体調を崩していて、私は週末になると大きなお腹で2歳の子を連れて実家に行っていたんですよ。私は週末休み、夫はシフト制でした。同居は気が進まなかったけど、義両親は優しい人たちだというのもわかっていた。家事はおふくろが全面的にやってくれるからという夫の言葉に乗ってしまったのがいけなかったんです」

下の子を出産する直前に引っ越し、退院時には夫の実家へ帰るという段取りになった。ところがここで予期せぬ出来事が起こる。

「下の子が産まれたとき、義母が『また女の子なのね、あーあ』と廊下で言ったのが聞こえたんです。病室に入ったとたん、『おめでとう』と言ったけど、私も頭に来たので『すみませんね、女の子で』と嫌味を言ってしまい、場の空気がしらけました」

さらに次女に先天性の病気があることがわかり、義母は「遺伝よね、女の子ならではの」とまったく根拠のないことを言い出した。幸い、病気はたいしたことがなく、生後1年ほどで手術をすれば完治することがわかった。

「ただ、私がものすごく神経質になってしまって、どうしても娘を義母に預けることができなくなった。夫と相談して、私は退職することにしたんです」

こうなると同居の意味はほとんどなくなった。しかも台所もバスルームもひとつという完全同居。まだ60代の義母は元気なのに、「一家に主婦はふたりいらないわよね。ノリコさんに任せるわ」ということに。

「自分たちの食事くらい義母が作ればいいのに、それも私に任せるという。ふたりの幼い子がいるのに、私は義父母のために早起きして食事の支度。ごはんに味噌汁、焼き魚に煮豆、卵焼きなどを作らなければならない。それまではフルーツとパンとコーヒーで会社に行っていた夫も、『朝からご飯っていいね』と言い出して義父母と一緒に食べている。そこからは子どもの世話をしながら家事三昧です。義父母の布団干し、洗濯、掃除などなど。義母に『おふたりの部屋はご自分で掃除したほうがいいんじゃないですか』と言ったら、『私が何十年、家事をやってきたと思ってるの。もう引退していい年齢でしょ。次世代の人がやってくれないと』って。義母は姑に長年仕えたらしいので、今度は私に仕えてもらいたいんでしょう」

夫に助けを求めたこともあるが、夫は「適当に手を抜けばいいよ」「もめごとだけは勘弁して」と慰めにもならない言葉を繰り返すだけだった。
 

生活費くらい入れてほしい

同居して少したったころ、ノリコさんは義父母から生活費をもらってほしいと夫に言った。

「同居してすぐ私も仕事を辞めたので、義父母の食費までうちがもつのはおかしいと思って。そうしたら夫は『言っておくよ』と言いながら、どうやら何も言ってない。しかたがないので私が夕食の席で、『すみませんけど、おふたりの食費を少し払ってもらえませんか』と言ったんです。そうしたら義母が目をつりあげて、『家賃と相殺でしょ』と。え、家賃を払うくらいなら同居はしなかったけどと内心、思いました」

あとから夫が、「食費くらいどうってことないだろ」とノリコさんを責めた。自分がいかに家事と育児に忙殺されているか、義父母の洗濯や掃除くらいはやってほしいと訴えても、夫はとりあってくれなかった。

「それでも義母はときどき出かけるんですが、義父はほとんど家から出ない。せいぜい庭の手入れくらい。昼前になると『今日の昼飯は何かな』と言い出す。毎日3食作るのは本当にしんどいです」

買い物に行って帰ってくると、義母は「まあ、ずいぶん買うのねえ」と呆れたような声を出す。あんたたちが食べるからでしょと言いたいのをぐっとこらえた。

「しかも私が料理をしていると、義母は用もないのに台所にやってきてうろうろする。何ですかというと、別にって。手伝う気もないのにうろうろしないでほしいですよね」

次女が手術を受けて元気になった2年前から、ノリコさんはふたりを保育園に預けてパートで働き始めた。少しは気が楽になったが、その間、義母が家事をやってくれるわけでもないから、体はますますきつくなっている。

「義母はときどき、『保育園に預けるなんて、子どもにはよくないわね』と言うんです。だからといって面倒を見る気もない。夫はそんな義母に同調して『パートで働いたってたいした給料をもらえるわけじゃないんだから、やめれば』と言い出す。夫には『あなたのご両親の食事代を私が稼いでいるだけです』と言ってやりました」

しかしこのコロナ禍で、一昨年夏、ノリコさんは自宅待機からの雇い止めとなった。昨年、また別の会社で働くことができるようになったが、今は義両親のおかずはほとんどが作り置きだ。

「忙しいんですの一点張りにしています。娘たちにはちゃんと作っていますよ。娘たちと同じものでよければ作りますけどと言ったら、義母は近所に『嫁が何も食べさせてくれない』と言いふらしているみたい。年寄り向けのおかずがほしいと言っていますが、今どきの60代ってそんな年寄りじゃないでしょ。ふたりともすごく元気ですし」

もちろん、このままではいけないとわかっている。ノリコさんは夫に動いてほしいのだ。夫に主導権をもってなんとかしてほしいと思っているし、それを伝えてもいる。

「同居して初めてわかったけど、夫は両親に何も言えない人なんです。私がちょっとでも口答えしたり言いたいことを言うと、陰で必死に両親に謝っているんですよね。そんな夫にもうんざりしてきました」

同居して4年、彼女が実家に帰ったのは10回にも満たない。それほど遠い距離でもないのに。子どもたちを置いては行けないし、連れていくとなると「私たちのご飯はどうなるの」と義母からプレッシャーがかかる。

「たまには子どもを連れて泊まってらっしゃいとなぜ言えないのか。義父母は自分たちが快適に過ごすために私がいなければいけないんです。家政婦としてね」

今、ノリコさんは別居を考えている。夫が決められないなら自分が既成事実を作っていくしかない。春からはパートの時間を増やし、正社員を目指すという。

「一時期、子どもたちを連れて実家に戻ることも考えていたんですが、姉が離婚して子どもふたりと転がり込んでしまった。先を越されたので私が帰る場所はなくなりました」

夫を焚きつけて別居に踏み切るのか、離婚するのか。これから5年くらい準備をしながらじっくり考えたいとノリコさんは言った。
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