夫は「指示待ち」体質
「つきあっているときから、ふたりですることに関して夫は私を全面的に頼っていました。たとえば『何を食べる?』と聞くと、何でもいい。彼の場合、本当に何でもいいんです。だから私が決める。そういうタイプなんだろうと思っていました」ハルナさん(37歳)が、2歳年下の夫と結婚したのは30歳のとき。「私たちどうする? 結婚する?」と聞いたら、夫が深くうなずいたのだそう。
「よく言えば相手を尊重する、悪く言うと自分の意志が強くない。そういうことなんですよね。私はものすごくせっかちで決断が早いタイプ。だから夫は『ハルナちゃんに任せておくと安心』と言っています」
結婚後は家事を「仕込んだ」そう。親元にいた夫は、洗濯機の回し方も知らなかったのだ。とはいえ、夫も会社員。仕事はなぜかうまくいっていて、先輩からもかわいがられ、後輩からは慕われているから、飲み会のつきあいもあれば残業もある。
「それでも結婚当初は、週末を使って夫に家事を教え込みました。ひとりで暮らせないと何かあったときに困る。子どもが生まれたら私ひとりじゃ立ちいかないからねと脅しながら(笑)。夫は素直な性格なので、どんどんできるようになりましたよ。家事って意外とおもしろいと言っています」
それでも指示されたほうがラクだと感じるのが夫。だから6歳と4歳の2児がいる現在、ハルナさんは日々、夫に連絡を入れる。基本的に朝は夫が保育園に送り、夕方はハルナさんが迎えに行くのだが、仕事の都合で行けないこともある。どちらも都合がつかなければ、近所のママ友に頼まなければいけないので、お互いの仕事の状況を連絡しあうのだ。
「だけど夫から率先して連絡が来ることはないんですよね。私が『今日は無理だから迎えに行って』とメッセージを送ると、『今日は早く帰れるから、そうしようと思ってた』と。だったら先に連絡寄越してよと怒ると『ごめんなさい』って。いい人なんですけどね、せっかちな私はイライラすることがありますね」
そんなふたりだから、たまに夫の両親と会うとハルナさんは異常に気を遣うことになる。
義母からクレームが
子どもが生まれたばかりのころ、義母が自宅に来たことがある。あれとって、これとってと夫に頼む様子を見ていた義母が、「いいかげんにしたらどう?」と言い始めた。「あなた、人使いが荒すぎる。うちの息子はあなたのお手伝いさんじゃないのよって。いやいや、お義母さん、あなたの息子さんは言わないとやってくれないんです。言えばやってくれるけど。だから言わないとダメなんですと言ったら、激怒されまして。それ以来、義母の前ではなるべく言わないようにしているんですが、それでも日常が出ちゃうんですよね」
つい先日も、義母が孫の顔を見に来たとき、夫が「かあさんにおいしいものを食べさせてあげる」と得意のハンバーグを作り始めた。和風のハンバーグでタレが非常においしいのだという。
「私は子どもたちと遊んでいたんです。すると義母は『もう、見ていられないわ』とキッチンに手伝いに行ったんですが、夫に断られていました。『妻というものは夫に尽くすもの。あなたが料理すればいいじゃないの』と今度は私に矛先が向いた。
『料理するのと、子どもたちと遊ぶのと、どちらも重要です。うちはバランスを見ながらやっているので』と言ったら義母は、『あなたと結婚したのがあの子の不幸の始まりね』って。たぶん幸せだと思いますよと返しました。義母はどうしても、息子が不幸だと思いたいみたい。夫は義母には表だって逆らわない。それは彼の優しさだと思います。私も夫が自分の母親に逆らうところを見たくはないので、私が悪者になっていればいいのかなと」
彼の見えないところ、聞こえないところで、義母と嫁は言い争っているのだ。だが、おそらく夫は気づいているはずだとハルナさんは言う。
「気づいているけど、どちらにも言えないんでしょう。でも夫と私はうまくいっているし、これでいいんだと思っています。私だって夫に命令しているわけでもないし、私が強気で夫が弱気というだけのこと。生活しやすい場をふたりで作っている実感があります。夫婦はどちらがリーダーシップをとっても、うまくいっていれば問題ないと思うんですけどね」
いつか義母がわかってくれる日が来るかどうか、今のところはわからない。ただ、彼女が言うように、どちらがリーダーシップをとってもいい。すでに妻が夫に「従う」必要はなくなっている時代になっている。