亀山早苗の恋愛コラム

「収入」の違いが「立場」の違いなのか?「私のほうが稼いでるし?」と上から目線で主張する妻

「今、離婚を考えています」と苦悩する男性から話を聞いた。モラハラというと夫から妻へのものが取り沙汰されるが、もちろん妻から夫へというケースもある。最近では、妻からの夫への暴言が増えていると語るカウンセラーもいる。

亀山 早苗

執筆者:亀山 早苗

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モラハラというと夫から妻へのものが取り沙汰されるが、もちろん妻から夫へというケースもある。最近では、妻からの夫への暴言が増えているというカウンセラーもいる。
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「収入の違い」が「立場の違い」か?

「今、離婚を考えています」

苦悩の表情を浮かべながらそう言うのは、オサムさん(39歳)だ。4歳年下の妻カナさんと結婚して3年がたつ。

「友人の結婚パーティで知り合ったカナは、パーティーでもひときわ輝いて見えたほど、きれいでした。一目惚れです。彼女は新婦側の友人だったので、新郎だった僕の友人を通して紹介してもらいました。なんとか会うことができたんですが、仕事が楽しいと生き生き語る彼女にすっかり魅せられて」

また誘ってもいいですかと聞くと、連絡を取り合いましょうと言われた。オサムさんは彼女の「邪魔にならないよう」、ときおりメッセージを送り、食事に誘った。

「半年ほど、そんな状態が続いたんですが、あるとき、初めて彼女から誘ってきた。待ち合わせの店で会うと、『仕事が忙しくて、なおかつ後輩がミスをした。へこんでいるときに誰に会いたいかなと考えたらあなただった』といわれて舞い上がりました。僕は彼女から見ると、おっとりとしたいい人だったようです」

そこから距離が一気に縮まり、つきあって1年半を経て結婚した。ひとり暮らしが長いオサムさんは家事も苦にならないため、家事のほとんどは彼が担った。

「カナは僕の手料理が大好きだと言ってくれて。彼女は料理が苦手なんです。新婚当初は無理しても作っていました。ただ、僕だって仕事が忙しい時期もあるし、残業が続くときもある。それでも『オサムの手料理が食べたい』と彼女は家からLINEしてくるんですよ。もう今日はデリバリーにしたらと言っても『大丈夫、待ってる』と。最初はかわいいなと思っていたけど、だんだん疲れてきましたね」

深夜に帰って食事を作り、さらに洗濯をして乾いたものにはアイロンをかけ、気づくと未明になっていたということもある。カナさんが手伝ってくれることはない。

「自分ひとりなら残業帰りにサクッと食事をして帰り、明日の仕事の準備をして風呂入って寝るということもできるけど、カナからは翌日のお弁当も作って、とか、夕飯の下準備だけでもしておいて、作り置きお願い……と、さまざまな要求がくる。もういいかげんにしてほしいと話し合ったこともあります。だけど彼女、『私はオサムのことが好きなの』と甘えてくる。それでもオレ、倒れるよと言ったら、『でもさあ、私のほうが収入多いよね』と言い出したんです」

収入の多寡で力関係が決まるのか、とオサムさんはびっくりした。
 

妻の口から飛び出した言葉に愕然

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収入は確かに、カナさんのほうが若干多い。だがそれは会社のシステムの問題で、オサムさんの能力の問題ではない。

「収入増やしたかったら新たなスキルをつけて転職するとか、考えればいいじゃんとカナは言う。でも僕は今の仕事が好きだし、同僚や先輩たちともうまくやっている。収入だけが仕事選びの基準じゃないでしょと言ったら、『ふうん。私は収入はその人への評価だと思うけど』って。価値観が合わないねと言ったら、『残業が私より多いのに収入が私より少ないってやっぱり変だよ』と」

話すだけ無駄かもしれないとオサムさんは考えるようになった。それでもカナさんの言うように、できる限り仕事と同時に家事もがんばってきたのだ。

「昨年暮れ、さすがに疲れて、水回りの大掃除を外注したんです。カナにも言ってあったのに、いざ掃除の人たちが来たらカナは『どうして自分でやらないのよ』と怒鳴りました。カナには自室に入ってもらって、掃除はしてもらったんですが、彼女はしつこく怒っていましたね。僕のボーナスから支払ったんだからいいだろう、もうこれ以上、僕は家事はできないと言ったら、『微々たるボーナスなのに掃除を外注するなんて信じられない』と怒るだけ。いいかげんにしろと僕は自室にこもりました」

食事も作らず部屋にこもった夫に、カナさんは翌日朝、「お腹がすいたよ」と泣き声を出した。それでもオサムさんは部屋から出なかった。

「夕方、カナは壊れるかと思うくらい僕の部屋を叩きました。出ていくと、『ご飯も作ってくれないなんてどういうつもり?』『私と結婚できて幸せじゃなかったの?』と言い始めた。もういい、離婚しようと僕は静かに言ったんです。すると彼女は、『は?何言ってんの。あなたから離婚しようという権利なんてないわよ』と。ここまで下に見られていたのかと愕然としました」

今年になってからのオミクロン株による感染者拡大の影響もあり、ふたりは今も同居しているが、オサムさんは平日、食事を作らなくなった。洗濯をしても、彼女のものにアイロンをかけるのはやめた。

「今はほとんど会話もありません。彼女は下着以外はほぼすべてクリーニングに出しているようです。食事は外食かデリバリーみたい。かわいそうだと思うこともありますが、彼女がどう出てくるのか、今は様子を見ているところです。僕自身は家事から少し解放されたので以前ほど疲労感はなくなりました」

それでも夫婦仲が険悪なことでのストレスはマックスになりつつある。この感染拡大が落ち着いたら、彼は新居を見つけて出ていくつもりだという。
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