亀山早苗の恋愛コラム

「パパ友に出身大学を聞かれてさ…」とヘコむ夫。巨大な「学歴コンプレックス」をこじらせて…

誰にでもコンプレックスはある。それをどうやって自分の中で処理するのか、あるいは身近な人に伝えるのか伝えないのか。コンプレックスとの向き合い方は、その人の生き方にもつながるのかもしれない。

亀山 早苗

執筆者:亀山 早苗

恋愛ガイド

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誰にでもコンプレックスはある。それをどうやって自分の中で処理するのか、あるいは身近な人に伝えるのか伝えないのか。コンプレックスとの向き合い方は、その人の生き方にもつながるのかもしれない。
 
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結婚前はコンプレックスなどなさそうに見えたのに

結婚して13年、10歳と7歳の一男一女がいるミサキさん(42歳)。夫は2歳年上の会社員で、ミサキさんも結婚前からの企業で仕事を続けている。

「友だちの結婚パーティーで出会ったんです。実は私、その直前、つきあっていた人に二股をかけられていたことが発覚して落ち込んでいました。私のほうが長くつきあっていたのに、結局、その彼はもうひとりのほうへ行ってしまった。あちらも二股をかけられているのがわかったのに彼を受け入れたそうです」

そんなときの結婚パーティーだったから、内心、行くのがつらかった。だが友だちの結婚は祝いたい。彼女は誰にも二股のことは言わずにパーティーに出席した。

「私に長くつきあっている人がいるのはみんな知っていたから、次に結婚するのはミサキじゃないのなんて盛り上がっていて……。泣きたい気分だったけど笑っていました。おめでたい席だから。でも我慢できなくなって、お手洗いに行くふりをして会場を抜け出し、外で一息ついていたんです。そこへやってきたのが夫となった彼。ふと目が合って会釈して。新郎の友人だと言っていました。『何かあったんですか』と聞かれて、どういうことと聞き返したら、『あなたが笑っているのに、ちょっと寂しそうに見えたから。いや、すみません。初対面なのに、なぜか気になって』と。思わず涙目になってしまいました」

帰りに彼に誘われてふたりきりで飲みに行き、ミサキさんはそこで二股をかけられていたことを話した。なぜか彼には話しやすかったのだという。初対面で話すことではなかったけれど、彼はじっくり耳を傾けてくれた。

「批評めいたことは何も言わなかった。聞き終わって『今日はつらかったでしょう』とねぎらってくれました。ベタに慰めるわけでもなく、やたら励ますでもなく、ただ静かに大変だったねと言ってもらったことで、なんだかモヤモヤが解消されたんです」

それをきっかけに彼とときどき会うようになり、気づいたら「つきあっている」状態になっていた。

「半年ほどたったころ、彼が『僕は高卒なんだ』と言ったんです。私は彼が勤めている会社も知っていたし、仕事を始めてから専門学校に行ったことも共通の友人にリサーチ済みでした。私は四大卒ですが、彼が高卒であることはまったく気にしていなかった。思わず『だから何?』と言ってしまいました。『あなたが今、ここにいることがいちばん大事だよ』と。彼はにっこり笑ってありがとうと言いました。そのとき、私から結婚しようと言ったんです」
 

コンプレックスがねじれてきて

 
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結婚するにあたって、ミサキさんの両親は「彼が大卒でないことをコンプレックスに思っていないか」と気にしていた。それはないとミサキさんは断言したのだが、結婚してから、親の心配は現実のものになった。

「結婚してすぐ、私は部署で立ち上げたプロジェクトのサブリーダーになったんです。新婚だけどいいかと上司に聞かれましたが、仕事をやる気は満々でしたからもちろん即答で受けました。仕事の話は家ではしなかったので夫は知らなかった。だけど夫と知り合うきっかけとなった結婚パーティーの新婦だった友人に話したら、彼女からその夫へ、そしてうちの夫へと話が回って……。『出世したの知らなかった。僕に話さないのは僕が大学を出てなくて出世できないから?』と言い出して。わけがわからない。私はオンとオフをはっきりさせたいので、家で仕事の話はしたくなかっただけと言いました。彼は専門職なので、大卒であるかどうかは関係ないんですよね。それなのにどうしてそういうことを言うのか」

子どもができてからは地域のつきあいなども増えたが、夫はある日「保育園で知り合ったパパ友に、出身大学を聞かれた」とヘコんでいた。自分は専門職だと言えばいいと反論したが、夫は「子どものためにも大学を出ていればよかった」と言うばかり。

「そのうち実家の悪口を言うようになって。義両親は優しくていい人たちなのに、『カネがないからこうなった』って。あなたはそんな人じゃないはずだと私が一生懸命言っても、受け入れてもらえない。結婚や子どもが彼の眠っていたコンプレックスを起こして、さらにねじ曲げてしまったようにしか見えなかった」

愚痴をこぼして気が楽になるならいいが、彼の場合、一度吐いた愚痴が止まらなくなるどころかエスカレートしていき、それがまた彼自身を苦しめているようだったとミサキさんは言う。

「半年ほど前、子どもを連れて実家に戻りました。今は別居中です。夫のマイナス思考が子どもたちに悪影響を与えそうで……。夫はまじめに仕事をしている。それだけでいいと思うんです。そう言っても、夫は『僕のことをかわいそうだと思ってる?』なんていう言い方をしてくる。いいかげん疲れました」

夫とは連絡を取り合っているが、子どもたちに会いたいという言葉はない。自分だけの殻に閉じこもっているのだ。夫に何があったのか、実は封印していたコンプレックスは巨大だったのではないかとミサキさんは考えている。

「結婚前にはわからないこと、気づかないことがあるものだなと思います。だからといって結婚しなければよかったとも思っていませんが。今は夫の気持ちがどう変わっていくかを見守るしかないのかもしれません」

身近にいても他人の本当の気持ちはわからないものかもしれない。共感はできないけれど、彼を信じて待つとミサキさんはきっぱり言った。
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