そこでAll About編集部は「海洋ごみ」に関する意識調査を実施。今回は、その結果を発表するとともに、海洋環境のエバンジェリストであり、スキューバダイビングインストラクターでもある筆者が「今知っておくべき海洋ごみの実態」を解説します。
※アンケートは、下記条件で実施
・男女比:男性 150名/女性 342名/回答しない 8名
・年齢比:10代 4名/20代 100名/30代 164名/40代 128名/50代 76名/60代 26名/70代 2名
・アンケート実施期間:2021年10月15日~21日
海洋ごみの7~8割は陸からきている
現在、世界的な問題となっている「海洋ごみ」。その多くは陸上から来ていることをご存じでしょうか。海洋ごみの7~8割は陸から来ているといわれ、多くのごみが風や雨などで川に渡り、そこから海へと流されてきています。中でも特に懸念されているのが「海洋プラスチックごみ」。その量は2015年の時点ですでに1億5000万トンに達しているといわれており、ダボス会議で知られる世界経済フォーラム(World Economic Forum)が2016年に発表した報告書によると、そこへさらに毎年800万トンのプラスチックごみが新たに海へ流入していると推定されています。
800万トンはスカイツリー222基分、ジェット機に換算すると少なくとも5万機相当といいますから、膨大な量です。世界のプラスチックの生産量はそこからも年々上昇しているため、海へ流入するプラスチックごみの量もさらに増えていることが予想されます。
海洋プラスチックごみは、海の景観を損ねるだけでなく、絡まったりエサと間違えて食べてしまうことで海洋生物がダメージを受けたり、細かくなっても自然分解することなく残り続けるため、マイクロプラスチックとなって最終的に人体へ影響を与えることも懸念されています。
8割以上が知らない海洋ごみの実態
以下に示したのは「世界では毎年少なくとも800万トン(スカイツリー222基分)の海洋ごみが排出されていることを知っていましたか?」のアンケート結果を集計したものです。世界では毎年800万トンの海洋ごみが 排出されているのを知っていますか?
・かなり衝撃的。もうここまで環境がひどくなっていると思うと恐ろしい。これからの世代の人たちが幸せに生きていけるのか心配だし不安。(30代 女性)
・子どもたちに魚を食べされられなくなったりと、怖くなった。(30代 女性)
・この事実がワイドショーやニュースで取り上げられないのが問題。環境破壊については会社や政党、国の問題ではなく人類全体の問題。(50代 男性)
具体的な数字を知り、今まで以上に危機感を持ったという意見が多く寄せられる一方で、
・どんなに禁止してもやる人はやるし、やる企業はやる。国際会議で決めても頷かない国もある。日本だけの問題でもない。(50代 女性)
・自分たちだけで頑張っても仕方がない。なんなら日本はまだ環境に良いゴミの排出の仕方をしていると聞いたのでどうしたら良いか分からない。(30代 女性)
といった諦めの声も少なくありませんでした。
きれいな海は取り戻せる?
とはいえ、諦めてしまったら、海の環境は悪くなる一方。海洋プラスチックごみ問題については、国内外でさまざまな取り組みがスタートしており、日本政府も2019年に「海洋プラスチックごみ対策アクションプラン」を策定。海岸漂着物処理推進法に基づく対策推進事業の展開や、自治体による漂着物の回収処理の推進も含まれており、今後の成果が期待されます。また、官民による海洋ごみに対する多くの活動は、どちらかというと「これから出すごみをいかに少なくするか」というものなのですが、すでに海に存在するごみを減らす活動としては、オーストラリア発の海用ごみ回収装置「Seabin(シービン)」に注目。海面に漂うペットボトルやタバコの吸い殻、プラスチックカップ、ビニール袋といった目につくごみだけでなく、マイクロプラスチックやマイクロファイバー、油まで自動で回収できる優れものです。
また、一般の人でも参加できる活動としては、世界各地の海岸で実施されているビーチクリーンアップがありますし、海の底に沈んでしまったごみに関しては、ダイバーが行なう「1 Dive 1 Cleanupプロジェクト」などもあります。「海をきれいにしたい」という熱意のある人が増えれば、きれいな海を取り戻せると信じています。
海洋ごみを減らすために、今日からできること
残念ながら、一旦海に出てしまったごみ、特に海の中に沈んでしまったごみを回収するのは非常にやっかいです。ですから、私たちが今日からすぐにできることは、やはり日常から出るごみを減らすこと。日本のごみの回収システムは世界的に見ても優れているほうですが、100%回収できることはありません。投棄・ポイ捨てのほか、ごみの集積場所から風で飛ばされたり、雨で流されてしまうことも。ビーチクリーンアップなどでごみを回収しても、海へと流れてくるごみの原因となっている陸上のごみを減らさないと、“蛇口を締めていない水道”のように、次から次へと流れてきてしまいます。
海へ流れ着いたプラスチックが小さなマイクロプラスチックになると、それを取り込んだ海洋生物や食塩などからも私たちが摂取する可能性があり、健康や生殖機能などにどんな影響が出るかわかりません。ですから、毎日の生活の中で出しているごみを改めて見直し、ひとつでもごみを減らせるように心がけることが大切です。
特に「使い捨て」のものはごみになりやすいので、マイボトルやマイバッグ(エコバッグ)を使ったり、使い捨てのスプーンやフォークを使わずにマイカトラリーを使うなど、身近なところからプラスチックごみを減らす行動を始めてみてはいかがでしょうか。