預金・貯金

家計の金融資産2000兆円超えは持ち越しに?

2000兆円超えを期待された家計の金融資産額ですが、2021年12月20日に日本銀行が公表した資金循環統計では未達に終わりました。4半期ごとに公表されている資金循環統計が、今回ほどニュースによる報道が多かったのは記憶にありません。賃金が上がらない中で家計の金融資産が増えていることがその背景にあると考えますが、統計の内訳を見ていくことにしましょう。

深野 康彦

執筆者:深野 康彦

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2021年9月末時点の家計が保有する金融資産額は1999兆8000億円

日本銀行が四半期ごとに公表している資金循環統計によれば、2021年9月末時点の家計が保有する金融資産額は1999兆8000億円となりました。2000兆円乗せが期待されたのですが、残念ながら2000兆円には2000億円届きませんでした。過去最高額を5期連続更新しているうえ、1年前の2020年9月末と比較すると5.7%もの増加となっています。コロナ禍にもかかわらず増加額が100兆円を超えるのは3四半期連続となっています。
 
家計の金融資産が初めて1000兆円を超えたのは1990年ですから、約30年間で家計の金融資産は倍増したことになります。賃金がなかなか上がらない中、将来の不安から家計は節約に努めせっせと貯蓄を行ってきた結果が2000兆円近くの金融資産額になったわけです。
 
次回の資金循環統計は2021年12月末の数字が2022年3月に公表されますが、12月がボーナス時期ということを考えれば、家計の金融資産が2000兆円に乗せるのも時間の問題のような気がしてなりません。
 
余談ですが、米国の個人金融資産は約1京2900兆円(約114兆ドル)で、日本が30年かけて倍にした金融資産額を米国は6.7倍に増やしています。その原動力は、米国の個人金融資産の半分強が株式等と投資信託で、株高が金融資産の大幅増に寄与したようです。
 

株式等と投資信託の増加率が顕著

それでは2021年9月末の家計が保有する金融資産額の内訳を見ていくことにしましょう。
 
家計の金融資産の中心となる現金・預金は、1年前の2020年9月と比較すると3.7%増加して1072兆円になりました。全資産の53.6%を占めていますが、過去30年では現預金が全資産に占める割合はおおむね48~55%です。上限に近くなっているうえ、超低金利が続いていることを考えると、現預金から株式等や投資信託への資金移動が起こるかもしれません。現預金は超低金利にもかかわらず11年以上も残高を増やし続けていますが、増加率の3.7%は新型コロナ禍での増加率としては最も低くなっています。

増加率はやや鈍化していますが、それでも20%超の増加となったのは株式等と投資信託です。株式等の増加率は28.6%、投資信託の増加率は24%と共に3四半期連続して20%超の増加となっています。1年前の2020年9月と比較すれば日本の株式も上昇していますが、それ以上に上昇しているのが欧米株式です。

株式等の残高は218兆円、投資信託の残高は90兆円となりましたが、それぞれ全資産に占める割合は10.9%と4.5%に過ぎません。合算しても金額で308兆円、割合で15.4%ですから、政府が掲げているスローガン「貯蓄から投資へ(資産形成へ)」は道半ばにも達していないようです。それでも株式等と投資信託を合わせた資産が300兆円を超えたのは初めてのことです。
 
債務証券(債券)の残高は2020年9月末と比較して2.7%増加したものの、その残高は2021年6月末と変わらない27兆円でした。超低金利の長期化で金利に魅力がないことから、個人向け国債を始めとする債券の残高が目に見えて増えることは当面考えにくいでしょう。
 
保険・年金・定型保証の残高は2020年9月末と比較して1.1%増加の539兆円になっています。うち保険は同0.7%増の378兆円と債券と同じく2021年6月末と変わっていません。保険の残高は増加しているものの、その増加率は緩慢になっています。超低金利の長期化により貯蓄型保険の魅力が低迷しており、その販売が苦戦していることが影響していると考えられます。
 
家計の金融資産が2000兆円超なるかは次回(2021年12月末時点、公表は2022年3月)の資金循環統計の公表までお預けとなりましたが、中・長期で資産を形成していくには株式等や投資信託を組み入れる必要があることを裏付けられた気がしてなりません。

まとまった資金がなくても長期・積立・分散という方法で、つみたてNISAやiDeCo(個人型確定拠出年金)などを活用して1日でも早く投資に踏み出すべきでしょう。すぐに差はつきませんが、時間をかけるほど投資を行った人と行わない人の差が出る気がしてなりません。

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