人間関係

失恋してつらい…振られた時にしてはいけない3つのNG行為

【公認心理師が解説】失恋は心が深く傷つけられるつらい体験で、回復するためには心理学でいうところの「喪の作業」が必要です。焦らず、時間をかけて回復していきましょう。回復までの4つのステップを解説した上で、失恋後にしてはいけないこと、失恋後こそすべきことをそれぞれ3つご紹介します。

大美賀 直子

執筆者:大美賀 直子

公認心理師・産業カウンセラー /ストレス ガイド

複雑骨折のように傷つく「失恋」……デリケートな心は大切に扱って

泣いている女性

失恋した心を軽く扱ってはいけない。時間をかけて自分を労わることがとても大切です

失恋はとてもつらいものです。失恋した友人・知人には「失恋の一つや二つ、誰にでもある」「早く次の人を見つけなきゃ」などとアドバイスできても、いざ自分自身に起こると、なかなか気持ちが切り替えられないという人が多いのではないでしょうか。好きだった相手に振られてしまうのは、心をえぐり取られるように苦しいもの。

失恋後の心は決して無理をさせずデリケートに扱わないと、つらさや痛みが心の中に残り続けてしまいます。

失恋はいわば「心の複雑骨折」。身体的な「骨折」の場合は、ギプスで固定し、安静にし、外部の刺激から守ります。失恋の傷も同じです。心を包帯で包むようにして大切に守り、労わりながら過ごしていくことが必要なのです。
 

失恋のつらさが癒えるまで……4つの回復プロセスを順に踏む

失恋のように、大切にしていた人や立場を失うことを「喪失体験」と呼びます。喪失体験から心の安定を取り戻すまでに、心理学では「喪の作業」という4つのステップを順に経験することを重視しています。各ステップについてご紹介しましょう。
 
■ステップ1:ショックと混乱
大切なものを失ったことへのショックから心が動揺し、いてもたってもいられない気持ちになっている状態です。「なぜこんなことに?」と頭の中が混乱して、何から手をつけていいのかわからず、パニックになってしまう時期です。
 
■ステップ2:怒りと抗議
「こんなひどい仕打ちにあうなんて許せない!」と相手への憎悪が煮えたぎり、口をつく言葉は恨みや不満ばかりになります。一方で「まだ関係を取り戻せるはず」という期待の気持ちも不意に湧き、「恨み」と「期待」の裏腹な感情で矛盾した行動が現れます。
 
■ステップ3:絶望と抑うつ
どうあがいても失恋が決定的だとわかると、現実を受け止めざるを得ず、絶望的な気持ちに陥ります。何もする気が起こらず、情緒が消耗して抑うつ的になります。人に会う気も、出かける気力も起こらず、希望を失ってしまう時期です。
 
■ステップ4:受容と卒業
心の底まで絶望すると、やがて大切な人を失った悲しみから離脱し、執着の気持ちから次第に卒業することができます。新しい出会いや体験に向けて自然に心が開き、意欲を取り戻していくことができます。
 

失恋からの回復には時間が必要! 焦らず、自然な回復を待つのが大原則

以上でお伝えしたように、失恋をはじめとした喪失体験から心の傷を回復させるまでには時間がかかります。たとえば、家族と死別した場合には「一周忌」がおおよその心の回復の節目となりますが、その間は悲しみや無気力に何度も襲われながら、徐々に現実を受け入れていくものです。
 
失恋からの回復も同じこと。恋ができた経験がよい思い出に変わり、自然に新しいことに心が向かっていくには時間が必要です。相手との関係性にもよりますが、片思いなら3カ月、短い恋愛なら半年、長い恋愛なら1年くらいは「喪の期間」と考え、傷ついた自分の心を労わることが必要になるでしょう。
 

失恋のつらさ・傷を広げてしまう、やってはいけない3つのNG行為

上記のステップに加えて、失恋の「喪の期間」におすすめできない3つのことがあります。
 
1. 浮かれ騒ぐこと
失恋のつらさを紛らわせようとお酒の力で明るく振舞ったり、遊ぶ予定をいくつも入れて享楽的に過ごしたりする人もいるかもしれません。しかし1人になったときに、それまで紛らわせて抑えていた悲しみが何倍にもなって襲いかかってしまいます。
 
2. 自分や相手を責めること
自分であれ相手であれ、失恋後に責めてはいけません。失恋に執着してしまうばかりで心の傷の回復を妨げてしまいます。責める気持ちに気づいたら、自分や相手のことをそれ以上考えないように意識して、なるべく別の前向きなことをしてみましょう。
 
3. すぐに代わりの恋愛対象を探すこと
心が不安定な状態で次の恋愛を探しても、新しい恋愛に集中できません。仮に交際がスタートしたとしても、失恋した相手と比べてしまったり、昔のデートコースを思い出したりと、失った恋愛の記憶に振り回されてしまい、健全な心理状態になりにくいです。
 

失恋後のつらい心の傷をやわらげる3つの行動

逆に、失恋の「喪の期間」に行うとよいことには、3つのことがあります。
 
1. 仕事や勉強をすること
何か前向きなことに集中すれば、失恋した対象から自然と意識を切り離すことができます。がむしゃらに行うのは逆効果ですが、無理のない範囲で日々、何らかの仕事や勉強に取り組むことで、相手のことを想起する機会を減らすことできます。
 
2. 少しずつ身の回りの物を片付けること
相手との思い出に絡む不要な物を少しずつ手放しましょう。そうすることで、物に付随する相手への思いも消失します。ただし、急に何もかも捨てないことも大切。急に一切を捨てると、空疎な気分に襲われます。恋を通じて手に入れたものも、今の自分を形作る一部分。恋が終わっても、自分のアイデンティティの一部であるはずです。
 
3. 失恋で得たものに気づくこと
恋に対する後悔や憎しみばかりを考えると、逆に失恋への思いに執着してしまいます。「この恋で私はいろんなことを得た」という思いに気づくと、失恋の執着から卒業することができます。「そういえば、この恋でこんなことを知ったなぁ」といった思いがふと生じたときには、小さく「よかったね」と自分に伝えましょう。ただし、それ以上深くは考えずに、再びやるべきことに意識を向けていきましょう。
 
たとえ実らなくても、人を心から愛した経験は自分を必ず成長させてくれます。ぜひ、失恋の心の傷を軽く扱わず、時間をかけて回復させていきましょう。
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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