オーナーの想いと住友林業グループの技術で鉄道遺産を再生

 大分県、JR日豊本線の中津駅から、国道212号線を車で5分ほど南下していくと、のどかな田園風景の左手に、突然クラシックな鉄道車両が現れます。これが1971年に創業した「食堂&ホテル 汽車ポッポ」。鉄道車両は、かつてこの地域を走っていて、1975年に廃線となった耶馬渓(やばけい)鉄道で使用されていたものです。汽車ポッポの先代オーナー・伊藤吉英さんが購入し、野外保存をしながら、レストラン、宿泊施設として活用、営業してきました。車両内で食事や宿泊ができ、ビジネス宿泊、スポーツ合宿、各種宴会などに利用されている人気のスポットです。
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国道212号線沿い「食堂&ホテル 汽車ポッポ」の外観
しかし、二代目オーナー・伊藤太陽さんは車両の雨漏りや錆、窓枠の木の腐食などが目立ち始めた2010年あたりから、保存活用の方法に頭を悩ませていました。
「特に、耶馬渓鉄道の『キハ102かわせみ』『キハ104せきれい』と、かつて大分県の杵築市と国東市を結んだ国東鉄道でも活躍した『キハ602しおかぜ』の3両については、日本最古級の希少な鉄道遺産であり、どうするべきかと考えていらっしゃいました」(汽車ポッポ『別邸』支配人・木村春子さん。以下コメントはすべて同じ)
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元々は国東鉄道の車両であり、その後、耶馬渓鉄道でも運行した
二代目オーナーはこの3両をホテルとして継続させるために全面リフォームし、駅舎を模した建物も新築して、その屋内に車両を保存することを決意。複数の施工会社に打診した結果、住友林業に建物の建設を、住友林業ホームテックに車両リフォームを依頼しました。
 
「この2社にお願いした決め手は、日本遺産に指定されている地元・耶馬渓の景勝地をモチーフにした、車両の内装デザインをカタチにする技術力だったと聞いています。車両のリフォームはほとんどの会社が未経験で難易度は高かったのですが、そのなかで住友林業ホームテック、住友林業の提案が最もオーナーのコンセプトに近いものでした」
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汽車ポッポ『別邸』再生のモチーフになった耶馬渓。山国川が削りだした溶岩台地に奇岩が連なり、美しい景色が広がる
工事開始は2019年12月。ほぼ1年後の2020年12月10日、先述した3両は、汽車ポッポ『別邸』としてグランドオープンし、鉄道車両ホテルとして再出発を果たしました。
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車両インテリアは日本遺産の観光スポットをモチーフに

 では、気になる3両の内部を見ていきましょう。
 
●「青の杜(やしろ) KAWASEMI」
まずは「キハ102かわせみ」を活用した「青の杜(やしろ) KAWASEMI」。耶馬渓に数ある著名な観光スポットのひとつ「青の洞門」がモチーフです。これは、1735年、禅海和尚が、槌とノミだけで掘り進み、約30年かけて完成させた、全長342m(うちトンネル部分は144m)の洞門です。
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青の洞門の神秘的な雰囲気をイメージした青の社の寝室
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青の社のモチーフとなった青の洞門
「青の洞門の神秘さと物語性を体感していただくことがコンセプトで、壁には石材、床材にはウォルナットを使用。間接照明を多用して、神秘的な洞窟をイメージしています。定員は4名。82㎡の広さがあり、ベッドはシングル4台を設置。バスルーム 、洗面室、 ウォシュレット付トイレの水まわりや、冷蔵庫、エアコン、ドライヤー、Free Wi-Fiはほかの2両にも共通した仕様です。また、これも3両共通なのですが、非日常的な宿泊体験にしていただきたいという意図で、あえてテレビは置いていません」
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車両は駅舎をイメージした建物内部に格納されている。車両の前はプラットホーム

●「国東(くにさき)の社 SHIOKAZE」
次は「キハ602しおかぜ」を再生した「国東(くにさき)の社 SHIOKAZE」です。大分県国東半島には、人と鬼が、長年の友のようにつながるとされる稀有な文化が残っており、今でも各地に残る岩屋でその神秘的な文化に触れることができます。
 
「SHIOKAZEの奥には、岩屋をイメージし、竹を用いたインテリアで趣のある寝室があります。内装のテーマは国東半島の自然。和のテイストを加えたモダンな空間になっています。床はオークで、広さは3両中最大の111㎡。定員6名で、シングルベッド4台とソファーベッド2台を置いています」
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国東半島の岩屋をイメージした国東の社の寝室
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国東市の五辻不動尊。国東半島にはこのような奇勝が点在している
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国東の社のプラットホーム

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<関連リンク>
鉄道のホテル 汽車ポッポ『別邸』
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