線路、プラットホームも独占!忘れられない鉄旅を満喫
●「耶馬渓の社 SEKIREI」最後は、「キハ104せきれい」をリフォームした「耶馬渓の社 SEKIREI」。汽車ポッポのフロント、事務所などがある建物を、耶馬渓鉄道の始発駅だった中津駅に、汽車ポッポ『別邸』の敷地の中で最も奥の離れた場所に建っているSEKIREIを、終点だった守実温泉駅に見立てています。
重厚な雰囲気が特徴の耶馬渓の社
耶馬渓の社の寝室
3両に一貫しているのが「駅舎の中に停まっている車両の中に泊まる」というコンセプト。ここまで説明してきたとおり内装のテーマは異なるため、同じ鉄道車両ホテルといっても、それぞれでまったく違うひとときを過ごすことができます。既に3両すべてをコンプリートしたコアなファンもいるとか。
また、床の一部に強化ガラスが仕込まれており、その下の線路や枕木、砕石や砂利などのバラストが見えるのも3両に共通した仕様です。滅多に見られない場所を堪能しようと、ベッドではなく強化ガラスのそばで寝る鉄道ファンもいたそうです。
耶馬渓の社の床に仕込まれた強化ガラス越しに見る線路。これも汽車ポッポ『別邸』ならではの楽しみ。砂利は、住友林業グループ各社の社員が団結してバケツリレーで敷き詰めた
車両内部は1組貸し切りで、80㎡台~110㎡台と広いので『ここ本当にすべてウチが使っていいんですか?』と尋ねられることも。興奮して、車両内やプラットホームを走り回るお子さんも多いのですが、一般的なホテルのように上下や左右に部屋がないので、どれだけ騒いでも他のお客様の迷惑にならないことは親御さんにとってありがたいようです」
耶馬渓の社のプラットホーム
「汽車ポッポに面した国道が見える車両の車窓や運転席から、道路を走っている車を見ると、まるで自分たちが乗っている車両のほうが動いている錯覚に陥り、鉄道旅を楽しんでいる感覚を体験できます。また、車両の各コンセプトに応じた観光地に行っていただくのもおすすめです。例えば「青の洞門」をモチーフにしたKAWASEMIに泊まる方は、汽車ポッポにいらっしゃる前に実際の青の洞門に足を運んでいただく、国東半島の自然をテーマにしたSHIOKAZEに泊まるなら国東半島をめぐっていただくと、車両内で過ごす時間が、より味わい深いものになるはずです。
ちなみに耶馬渓鉄道の線路が敷かれていた場所は、現在、メイプル耶馬サイクリングロードとして整備されています。そこを自転車で走ってからここに泊まると『昔、この車両が、昼間のサイクリングロードの上を走っていたんだ……』といった感慨に浸っていただくこともできると思います。
かつて耶馬渓鉄道の線路が走っていた場所に整備されたメイプル耶馬サイクリングロード。サイクリングが楽しめる
住友林業のBF構法で開放感あふれる駅舎を実現
最後に、全国的にも希少な宿泊施設、汽車ポッポ『別邸』を実現した技術について見ていきましょう。駅舎をイメージし、車両が格納されている建物には、住友林業オリジナルのBF(ビッグフレーム)構法を採用。これは、日本初の木質梁勝ちラーメン構造で、特許も取得しています。耐力壁のかわりにビッグコラム(大断面集成柱)を採用し、接合部はオリジナルのBFジョイント金物で金物相互を直接接合(メタルタッチ)することで、強靭な構造躯体を実現。プラットホームと基礎を一体化し、26t超の車両を基礎上に設置、建築基準法の1.25倍以上の耐震性を確保しました。
また、BF構法は通し柱が不要な梁勝ち構造のため、上下階の柱位置が異なるプランや、ラーメン構造ならではの壁一面の大開口や広々とした大空間を設計しやすいのが特徴です。そのため、大きな車両を配置していながらも建物内を開放的な空間にすることができました。
建物の天井は、梁などの小屋組を「現(あらわ)し」(※)として、車両を包み込むしつらえに。BF構法の特徴である、開放的な大空間と木に囲まれた、柔らかく居心地の良い空間となっています。
※木造建築で柱や梁などの構造材が見える状態で仕上げる手法
一方、車両内は大分県特産の国東の畳や日田の小鹿田焼(おんたやき)でしつらえた洗面台など、地域の伝統を活かすと同時に、住友林業ホームテックの得意とする、木の特徴を活かした木質感あふれる内装となりました。
汽車ポッポ『別邸』を俯瞰。ライトアップされる夜の風情も魅力
希少な日本の鉄道遺産と、住友林業グループの技術、ノウハウが見事にコラボした、汽車ポッポ『別邸』。機会があれば、ぜひ訪れてみてください。
<関連リンク>
鉄道のホテル 汽車ポッポ『別邸』
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