人間関係

更年期の夫婦関係、言ってはいけない言葉・関係をよくする3つのポイント

【公認心理師が解説】40代後半から50代前半に迎える「更年期」。女性だけでなく男性にも更年期の不調はあります。同世代の夫婦の場合、同時期に身体的な不調や若さの喪失感などの悩みを抱えがちです。夫婦関係を悪化させる更年期に「お互いに言ってはいけない言葉」と、よりよい夫婦関係を築いていくための3つのポイントをお伝えします。

大美賀 直子

執筆者:大美賀 直子

公認心理師・産業カウンセラー /ストレス ガイド

更年期に悩む妻……不調、肌の劣化・体形崩れなど若さの喪失感

語りあう夫婦

アラフィフは男女ともに更年期に悩む時期。だからこそ、夫婦には互いを思いやるやさしさが必要

女性が40代後半以上の年齢になると、更年期に伴う心身のトラブルに悩まされることがあります。長年連れ添ってきた夫婦でも、男性には女性の体調がわかりにくいだけに、「妻にどう接すればよいのかわからない」と頭を抱えている男性も少なくないようです。

この年代の不調には、女性ホルモン(エストロゲン)の分泌の急激な減少が影響していることが少なくありません。それまで女性ホルモンの恩恵を受けて保たれていた健康が急激に失われることで、体調の悪化や若さの喪失感を感じたりします。
 
冷えやのぼせ、疲れやすさや体力の衰え、肌の劣化や体形くずれを感じることもあります。気分の浮き沈みも多くなり、不安な気分が増えていく方も少なくありません。こうした症状が高じると「更年期障害」と診断される場合もあります。
 

男性にもある更年期……男性機能と意欲の低下、元気のなさを感じるように

そして妻の心配だけではありません。男性も40代後半ごろから、若いころとは異なる体の変化を感じやすくなります。とくに性欲や勃起力の低下、体力の衰え、意欲の低下を感じる方が増え、どことなく不安を覚える人も増えてきます。エネルギー不足、バイタリティ不足を覚えることも多くなり、無理に頑張ると徒労感が募るような感じを覚える方も少なくないものです。
 
こうした変化には、男性ホルモン(テストステロン)の分泌の減少が関係していることがあり、生活に支障が表れるほどの不調がある場合、「男性更年期障害」と診断されることもあります。
 
テストステロンは男性機能と社会性に関わるホルモンといわれ、アグレッシブに物事をこなすために必要なホルモンなのですが、このホルモンが減少することによって、男性としての自分に自信を失ってしまう、気力がわかず仕事や趣味も楽しめない、という状態になることもあります。
 

努力では解決できない? 更年期の夫婦関係を悪化させないために

このように、男性も女性も50歳を前後する年代になると、更年期に伴う体調の変化を自覚しやすくなり、「以前のように無理はできない」「体のふんばりが効かなくなった」と感じることが増えていきます。若さと健康を失うことに急にあせりを感じるようになり、落ち着かない気持ちになる人も多くなるものです。
 
こうした不安に抗うために美容や趣味や運動に励み、なんとか若さを維持していこうとムキになる人もいます。しかし、その意識がかえって自分を追い詰めて疲弊させたり、パートナーとの関係に緊張感を生んだりして、家庭の空気を悪くしてしまうことがあります。
 
若いころのような美しさや雄々しさが失われ、体力や持続力の衰えを感じ始める年代にこそ、夫婦は互いを思いやり、まろやかなやさしさを持ち続けていくことが必要になります。そのためには、具体的にどんなことを心がけることが大切なのでしょう。お勧めしたい3つのポイントをお伝えします。
 

1. 人と比べない! 目の前にいるパートナーは唯一無二の存在

更年期にパートナーから言われて傷つく言葉の筆頭に挙げられるのが、「人と比べる言葉」です。比較しているつもりはなくても、「更年期でも明るく頑張っている人がいるんだよ」などと何気なく言われることで、自分の努力不足を批判されているような気になってしまうこともあります。

よその人との比較だけでなく、伴侶である自分との比較をしないことも、気をつけましょう。「自分はいくつも運動をやり、若さを保っている」「若い人たちと交流することで、気持ちの張りを保っている」など、自分が若さを保つ努力をしていることを自慢すると、思いがけずパートナーへのマウンティングになってしまうこともありますので、注意しましょう。
 

2. 「気の持ちよう」の一言でパートナーを傷つけない

更年期の不調の出方には個人差があります。自分自身が更年期の不調を感じていないからといって、不調に悩むパートナーに「気の持ちよう」などと安易なことを言わないことが大切です。
 
そもそも、自分の潜在意識に「老化に負けてはいけない」という思いがあると、目の前で老化に抗えずにいるパートナーの姿を見たときに、「自分に負けるな」と思いたくなってしまうのかもしれません。ですが、不調は激励で回復できるものではありません。苦しいときこそ、いたわりを求めているのです。
 

3. いたわりの言葉、「ラポールトーク」で気持ちを楽にする

「前みたいに食が進まなくて」「眠りたいのに眠れないんだよね」……更年期にはこんな言葉が増えていくものです。こうしたときにパートナーから「無理にでも食べなきゃダメだよ」「眠れないなら起きて仕事すれば」などという言葉をかけられると、二の句を継げなくなってしまうものです。
 
人が不調を訴えるときに第一声としてかけてほしいのは、「ラポールトーク」なのです。ラポールトークとは、受容や共感の言葉によって信頼関係を深める話し方です。「食べられないとつらいよね。無理しないで」「眠れないときには、一緒に横になろう」……こんなやさしい語りかけが、パートナーの気持ちを楽にしてくれるものです。
 
「ラポールトーク」についてさらに詳しく知りたい方は「「夫婦の会話」はなぜすれ違うの?その謎と対策」もあわせてご参照ください。
 
心身の不調を感じやすい更年期は、夫婦の絆が試される年代です。以上の3つの接し方を続けながら、更年期から始まる後半生を夫婦で仲良く過ごしていきませんか?
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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