昔の夫は家族の現実と向き合おうとせず、妻に立ててもらって「一家の大黒柱」「頼りになるお父さん」を演出してきた。今はもっと男女が向き合って、ともに家庭を築いていく時代。それなのにやはり男性のなかには「家族、家庭から逃げたい欲求」が少なからずあるようだ。
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すぐに「プチ家出」する夫

もちろん、家族とのコミュニケーションをきちんととり、妻と二人三脚でがんばっている夫たちもいる。だが、よく耳にするのは「夫はすぐ逃げる」という妻たちの声だ。

「うちの夫はプチ家出にはまっているようです」

苦笑しながらそう言うのはエリカさん(38歳)だ。長年友だちだったのだが、あるときふと関係をもち、結果、妊娠。いわゆる「デキ婚」で一緒になったのが9年前だった。現在、9歳と7歳、3歳の3人の子がいる。

「私も独身時代からずっと仕事をしています。3人、しかも全員男の子なので、もう家の中はいつでもとんでもない状態。細かいことは気にしていられません(笑)」

だが、夫は「家が片付いてない」「休まらない」とすぐにプチ家出をする。最初は困惑して「戻ってきて」とメッセージを送っていたエリカさんだが、今は放っているという。

「子ども3人食べさせて、上の2人は明日の学校の準備をさせて寝かせて。朝はご飯を作って送り出して、いちばん下を保育園に連れていって仕事へ行く。もう、それだけでヘトヘト。夫のことなど眼中にないのが現実です」

プチ家出した夫は、以前は1時間ほど離れた実家に戻っていた。義母はエリカさんが「妻としての役目」を果たしていないのではないかと疑っていたようだ。ある朝、エリカさんがてんてこまいしているところに義母が訪ねてきたことがある。

「朝は特に地獄ですからね、うちは。私がひとりで子どもたちの世話を焼きながらバタバタしているところにやってきた義母は、それを見て『悪いのはうちの息子ね』と言うなり手伝ってくれました(笑)」

それ以来、夫は実家に戻れなくなり、プチ家出の際は駅前のネットカフェで夜を明かすらしい。一度、家に戻ってきてから着替えて仕事に行くようだが、そのときにはすでに家族はいない。
 

私もしてみた「プチ家出」

月に2回はプチ家出をする夫に、エリカさんはどうしても納得できずにいた。

「夫は指示待ちなんですよね。何年、この家族で日常生活を送っているのか。やるべきことはわかっているはずなのに、毎日指示待ち。それにうんざりして、2カ月ほど前、土曜日の夕方から私もプチ家出したんです。もちろん、冷蔵庫の中には食べるものをちゃんと詰めておきましたけど、『もう、あなたとはやっていけない』と宣言して外出しました。夕飯の時間になっても帰らないから、夫は焦ったみたいで『ご飯は?』って。勝手にやってちょうだいと返事しておきました。そのまま夫の問いかけには無視を続け、ひとりでゆっくり映画を観て軽く食事をして、夜更けに帰宅したんです」

リビングは真っ暗。夫もすでに寝てしまったようだった。そこへ長男が起きてきて、「おとうさん、何もできないんだよね」とつぶやいた。

「食事の支度をしたのは結局、長男と次男だったみたい。夫は『オレがオムライスを作ってやる』と張りきったものの、失敗。『最初から冷蔵庫にあるものを食べればよかったのに』と長男は冷たく言い放ったらしいんです。『おとうさん、やばいよね』と言った長男が頼もしく見えました。ごめんねと言ったら、たまにはおかあさんも息抜きしたいんでしょと泣ける言葉が返ってきて……。いつの間にか長男が大人になっているのを感じました」

誰よりも幼かったのは夫だったのかもしれない。片方の親が責任を放棄したら子どもたちは路頭に迷う可能性だってある。エリカさんはそれを夫にわかってほしかったのだが、夫は「妻がわがままなことをしている」としか受けとっていなかった。

「あなたはしょっちゅうプチ家出しているでしょ。そのときの私の気持ち、わかったでしょと言ったら、オレはいいんだ、おまえは母親なんだからそういうことをしてはいけないって。どうして? 父親も母親も責任は同じでしょと言ったら、返す言葉がなかったんでしょうね、ぷいとまた家を出ていきました(笑)。少しでも頼ろうとした私が間違っていたんだと思います。金輪際、頼らない。そして子どもたちが大きくなったら絶対に離婚します」

エリカさんはきりっとした口調で断言した。
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