「アラ還」からのセックス事情と“膣メンテナンス”
「アラ還」からのセックス事情と“膣メンテナンス”
そのたびに「誰が言ったって? 実際にセックスレスが改善した大勢の女性たちじゃ! ガハハハハ」と高笑いする筆者なのですが、なぜなら20代から80代まで、幅広い世代の妻たちの性の相談を受けると必ず事後報告があるのです。
妊娠希望の妻たちの場合は「セックスレスが改善して、赤ちゃんができました」という喜びの報告。ミドルエイジ妻たちは「化粧のノリがよくなりました」「複数の友人にキレイになったって言われたのでびっくり」などという、外見のポジティブな変化に関する報告です。
半年ほど前にもバツイチ独身女性のA子さん(48歳)に彼氏を紹介したところ、3カ月後、はちきれんばかりの笑顔で報告にきてくれました。「17年間していなかったけど、ローションを使ってなんとかできたんです。一度できてしまえば、身体は覚えていてくれて、忘れかけていた快感を思い出すことができました」と。そして、「職場の友人全員にキレイになった、若くなったって言われたんですよ」と自信たっぷりな表情です。
なぜキレイになったのかといえば、彼氏ができてメイクや服装に手をかけ、見せても恥ずかしくない裸を手に入れるためにダイエットをするなど美への意識が高まったことが挙げられます。
そしてセックスをすることで、ドーパミンやオキシトシンなどが脳内から噴出。オキシトシンよりセロトニンの分泌が促進され“3つの幸せホルモン”が分泌され、「ああ、あなたの腕のなかで安心する。し・あ・わ・せ」と感じるので、表情もやさしくなるのは間違いないでしょう。
以前執筆した記事内で触れた『性生活が肌に与える影響について』の意識調査でも、男性39.5%、女性64.5%が「セックス後、肌の調子が良くなった」と感じています。思ったもん勝ちですね。
なにより筆者は、A子さんの実体験から導きだされたフレーズ「身体が覚えていた」に痺れました。三つ子の魂百までも。100歳まで、身体と脳はセックスを覚えているのでしょう。
アラ還で「性生活」は終わり?
アラフィフだから自分の「性生活」は終わりだと勝手に限界を決めてはいませんか? やる気と腟のお手入れ次第で復活できます。さらにアラ還で閉経を迎えると、性生活と絶縁宣言をする女性が多数派です。しかし、アラ還になったら腟は閉じますか? 閉経したらパートナーとセクシャルな触れ合いをしてはいけないと主治医に注意されましたか?
女性ホルモンが減少することで、腟が乾燥したり腟壁が硬くなったりと機能的な衰えがあり、30、40代の頃のような一般的な挿入は難しくなるかもしれませんが、アラ還夫婦だからこその挿入に囚われない”新しい大人のセックス様式”を創造すればよし、というのが筆者の持論です。
なぜなら、仕事に子育てにフル回転の時代を終え、やっと夫婦二人でのんびり時間が取れるアラ還世代です。新しい様式を発案する時間もたっぷりあります。
……だというのに身体がいうことをきかなくなっていては無念です。閉経後も腟のメンテナンスを怠ってはいけません。アラ還になると、白髪染めやシワ対策の高級美容液ばかりに目がいき、劣化の一途をたどる腟が放置されているのが現状です。使わない器官は衰えます。骨盤底筋の衰え、つまり尿もれ・子宮下垂の要因にもなるのです。
お気づきでしょうか、尿漏れパットのCMが頻繁に流れていることを……。健康のため、日々の「腟メンテナンス」はお顔と同様に継続することをおすすめします。
【アラ還のための腟メンテナンス 5種】
○腟専用ソープでやさしく洗う……粘膜部位は敏感。できれば弱酸性のソープを使いましょう
○オイルマッサージをする……腟専用オイルで指の第2関節までは入れて揉みほぐしましょう。会陰部は念入りに!(会陰切開経験者は特に)
○マスターベーションは必須……快楽を得るためにというより性器官内を潤わせ、腟を動かす意味で
○骨盤底筋運動を行う……ケーゲル体操が王道ですが、筆者は腟を引き締めるダンスを開発中です
○週1回おしゃれな下着をつける……機能性重視のオバパンもありですが、「女性」と腟に意識を向ける意味で華やかな下着も大切
「膣の化石化」を自虐するアラ還が読みたい本
ベストセラー『ちつのトリセツ 劣化は止まる』(たつのゆりこ監修・指導、原田純著/径書房)の原田純さんも、アラ還世代。原田さんご自身も、お肌ツヤツヤ、ヘアふさふさ、声にも張りがあり、エネルギッシュな女性です。著書にもある腟ケアによる近況を伺うと「一言で言えないくらい変化があるので、続編を書いています」とのこと。「化石化した腟」と自虐するアラ還世代の皆さんは、ぜひ一度お読みください。一筋の光が見えるはずです。腟メンテナンスを続けると、一般的な挿入ありきのセックスも復活の可能性が出てきます。潤い、腟壁が柔らかくなる。フェムテックの最初の一歩は「腟メンテナンス」と目標設定してください。そして先にご紹介したA子さんの名言「身体は覚えている」を信じて、パートナーに「腟がよみがえったからトライしよう」と伝えてください。「いやいや俺、EDになってるから無理だよ」と返されたら……あらためてED改善方法をアドバイスいたしましょう。
夫婦で立ち向かってこそ未来永劫、健やかでサステナブルな夫婦関係をキープできるのですから。
監修:昭和大学横浜市北部病院精神科医師・徳増卓宏先生
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