「多くが軽症」なら大丈夫? 新型コロナの重症度
高熱とひどい咳で限界……でも肺炎がなければ“軽症”?(画像はイメージ)
新型コロナの重症度……「軽症」「中等症」「重症」の目安
「軽症・中等症・重症」は、感染者の体感でのきつさではなく、医学的な一定の基準で分類されています。重症度分類をはっきりさせることで、それぞれに応じた適切な治療を行う必要があるからです。ごく簡潔な目安として解説しますと、新型コロナウイルス感染症の場合は以下のように分類されています。
- 軽症……発熱していても呼吸器症状はない。あるいは咳症状があっても肺炎はない
- 中等症I……呼吸困難・肺炎が見られる
- 中等症II……呼吸困難・酸素投与が必要な肺炎がある
- 重症……集中治療室で人工呼吸器やECMOによる治療が必要
もちろん鼻風邪程度の軽症で済むケースもありますが、上記分類でみていただくとわかる通り、仮に40度近い高熱が続き、食事は全くのどを通らず、水分をとるのもやっとという状態が数日続いても軽症です。また、咳症状がつらくて寝付けないような日が続き、体力を消耗していてトイレに立つのもつらいような状態だとしても、肺炎が認められなければ、やはり軽症です。「肺炎はないから軽症」と言われても、ご本人にとってはかなりつらい状況であり、軽症とはとても感じられないかもしれません。
また、水分が取れずに点滴などの処置が必要で入院するケースもありますが、入院=重症ではなく、その場合も軽症と考えます。同じく、中等症は医学的な基準としては「酸素を必要とする肺炎」です。一般的な感覚ではすでに「重症」のイメージに近いかもしれません。風邪やインフルエンザの経験は多くの人にあると思いますが、治療で酸素が必要なほどの状態になった経験がある人はあまりいないのではないでしょうか。
医師と患者さんとで言葉の意味するものやそのイメージが一致していないことがあるかもしれませんので、この点は双方が注意しなくてはいけません。「軽症で済むなら」「死亡率が低いなら」と年代の傾向によって安心するのは危険です。
また、重症度は日々変わる可能性があるため、発症時に軽症と言われたとしても安心はできません。変化する重症度を正しく判断し、それに応じた治療を受ける必要がありますし、また、医師はこの重症度だけでなく、総合的に患者さんの状況を判断した上で、ベストの治療をしていく必要があります。
「軽症・中等症・重症」の基準が設けられているその他の病気
重症度は、新型コロナウイルス感染症に限らず、どの疾患にも分類があります。どの病気でも、症状の程度によって治療方法は異なるからです。感染症だけでなく、慢性疾患でも熱中症でも、重症度に応じて対処法・治療法が異なります。病気によっては刻一刻と変わってくることもあり、重症度を判定して、速やかに治療していくことになります。治療が遅れないために、重症度を判断することは大切です。後手後手にならないように医療従事者は診察、観察などをしているわけです。ただし、重症度の判断・基準は疾患によってそれぞれ異なりますので、病気に応じて判断する必要があります。
「軽症ならインフルエンザ程度」と考えている方に
新型コロナウイルス感染症においては、無症状・軽症が80%で自然治癒することがあります。ただ、新型コロナウイルス感染症に対する免疫を持っている人が多くない状況では、自分は軽症であっても人に感染させて重症化させる可能性、自分が重症化する可能性もあります。また、軽症でも後遺症として、味覚障害・嗅覚障害が出たり、倦怠感が残ってしまうことがあります。ウイルスの変異によって重症化する可能性もありますので、まだ、集団免疫になっていない状況では、風邪・インフルエンザ程度と考えるのは早いかもしれません。新型コロナウイルス対策は、これまでのことを検証し、評価し、次に活かすことが大切です。新型コロナウイルス感染症の治療についてはそれができているので、従来の治療薬を使ったり、新薬の開発を進めたりと、診療は進歩しています。
一方、この国の対策は、Plan(計画)、Do(実行)、Check(評価)、Action(改善)のPDCAサイクルをうまく回せているでしょうか?